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2022年07月31日

「鎌倉殿」好きにおすすめしたい、魅惑の「仲間割れ映画」3選

「鎌倉殿」好きにおすすめしたい、魅惑の「仲間割れ映画」3選


(C)NHK

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」

誅殺・謀殺・暗殺の嵐である。人気キャラの、“ちょっといい話”や“ほんわかエピソード”が出て来たら、それは即ち死亡フラグだ。

上総広常(佐藤浩市)、源義経(菅田将暉)ら、名優が演じる人気キャラが殺されるたびに、視聴者のメンタルはごっそり削られた。その元凶とも言える源頼朝(大泉洋)も死に、やっと鎌倉にも平和が訪れ……ない。

これからの展開は、残された御家人たちの壮絶な仲間割れである。「鎌倉殿の13人」なんて言ってるけど、ちゃんと13人が揃っている時など一瞬しかない。すぐに潰し合い、殺し合う。みんなの好きな、このキャラもあのキャラも、みんな殺される。

それなのに「毎週辛いから、もう観るの辞めるわ……」とはならない。毎週楽しみに観てしまう。なんのことはない。みんな仲間割れが好きなのである。

そんな仲間割れ大好きなあなたに、おすすめしたい名作を3本紹介する。

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1:『燃えよ剣』


(C)2021「燃えよ剣」製作委員会

日本史上屈指の“仲間割れ集団”新選組。ご存知の通り、三谷幸喜も2004年に大河ドラマで描いている題材である。三谷幸喜、よっぽど仲間割れが好きと見える。

大河の際は局長・近藤勇が主人公だったが、本作の主人公は“鬼の副長”土方歳三である。監督は原田眞人。土方役は岡田准一師範。
本作の新選組は、土方自身が言うように「烏合の衆」である。そればかりか、各々のイデオロギーもバラバラなのである。主義主張ごとに派閥が生まれ、みんな見ている方向が違う。そりゃケンカする。

土方は、別派閥の有力者を次々と誅殺・謀殺・暗殺する。新見錦、芹沢鴨(伊藤英明)、伊東甲子太郎(吉原光夫)……。集団で、虫でも殺すように徹底的に殺す。表情ひとつ変えずに“仲間”を殺す様は、まさに“鬼”である。

だが、今作で筆者が注目したい点は「本当は殺したくない人間を殺さねばならない局面での岡田師範の逡巡」だ。近藤・土方派の中心人物は、新選組結成以前、田舎道場・試衛館時代からの仲間たちだ。だが、かつての仲間たちも、土方の苛烈なやり方について行けなくなる。

特に印象的だった2人を紹介したい。

■山南敬助


例えば、山南敬助(安井順平)
彼は昔から土方とだけウマが合わず、方向性の相違から脱走。局中法度により、脱走は切腹。土方は、追手として沖田総司(山田涼介)を指名するが、沖田は「逃がすかもしれませんよ」と答える。

映画では描かれていなかったのだが、原作での山南と沖田は兄弟のように仲がいいのだ。だからこそ、土方は沖田を指名した。「沖田になら、山南も黙って捕まるだろう」という意図もある。だが「もし沖田が逃がしたのなら、それはそれで良し」という考えもあったのではないか。
しかし山南は、沖田に“わざと”捕まる。そして潔く切腹。介錯は沖田。

沖田が山南を捕まえ、翌朝屯所に連れ帰る前夜。この前夜のふたりのやりとりが、原作でも一二を争う名場面である。筆者は読むたびにここで泣く。だが映画では惜しくも描かれていないのだ。

『燃えよ剣』、6時間ぐらいあっても良かったと思う。

■藤堂平助


例えば、藤堂平助(金田哲)
彼は腕も立ち、性格もいい若手剣士だったが、イデオロギーの違いから伊東甲子太郎派に合流。御陵衛士の一員となり、新選組とは敵対関係に。

新選組VS御陵衛士の集団戦において、土方と藤堂は対峙する。数合斬り結んだ後、土方は藤堂に立ち関節を極め、ヒジを折る。そのまま背を向け、なおも斬りかかって来た藤堂を振り向きざまに斬って捨てる。

なぜ土方は、藤堂にとどめを刺さずに一旦背を向けたのか。
藤堂に、逃げてほしかったのではないだろうか。
もし藤堂が逃げたら、見逃すつもりだったのではないだろうか。

山南が死ぬ時も、藤堂を殺す時も、土方の表情に感情の“揺れ”は見えない。鬼の副長としての厳しい表情のままだ。だが、その行動の端々に垣間見える鬼になり切れない“脆さ”のようなものが、岡田・土方の魅力でもある。

2:『レザボア・ドッグス』



クエンティン・タランティーノの出世作。

”宝石店襲撃のために集められた、互いに素性を知らない6人。いざ計画が実行に移されると、すでに警官隊が待ち構えていた。2人死亡、1人重症で辛くも逃げ帰った4人。さぁ、裏切り者は誰なのか”

ただただかっこいい。その中でも特に“かっこいい”シーンが3ヶ所ある。

■オープニング


ザ・ジョージ・ベイカー・セレクションの「Little Green Bag」に乗せて、6人の黒スーツの男が歩いている。ただそれだけなのに、かっこ良すぎてワクワクが止まらない。冒頭で一気に掴まれて、勢いで最後まで観てしまう。
このシーンを日本のコワモテ系の役者がやると、どうしてもヤクザ感が丸出しになってしまう。海外の役者は、どうしてこんなにかっこいいのか。ティム・ロス以外は、みんなただのおっさんなのに。

■喫茶店でメンバーがダベってるシーン


マドンナの「Like a Virgin」についての解釈を、各人で議論する。字幕なしで聞いても、やたら「ファック」「ファッキン」と聞こえて来るので、相当下品な会話なのだろう。事実相当ゲスい会話を繰り広げているのだが、これもまたかっこいい。セリフ回しのテンポの良さの賜物である(特にタランティーノ)。同じようにテンポが良くても、日本の関西弁ではこうは行かない。

■腹部を撃たれたティム・ロスが逃げ帰るシーン


もっと正確に記すなら「腹部を撃たれたティム・ロスが、ハーヴェイ・カイテルの運転で逃げ帰るシーン」である。

死への恐怖に怯えて泣き叫び甘えるティム・ロスが、なぜか可愛いのである。怯え様が乙女なのである。見事におっさんしか出て来ない映画なので、ティム・ロスを暫定的にヒロインとして観るのも一興だ。なかなか死なず、以後血まみれで横たわったまま、ちょこちょこ画面の端に見切れる姿もキュートだ。

この作品でブレイクしたティム・ロスの、’90年代の出演作は神懸かっている。『パルプ・フィクション』『フォー・ルームス』『海の上のピアニスト』……。当時の筆者は、生まれ変わったらティム・ロスになりたいと思っていた。


結局裏切り者は誰だったのか。言いたくてたまらないが、筆者は浜村淳ではないので我慢する。
未見の方は、今すぐ観た方がいい。上映時間も100分とお手頃だ。

3:『清須会議』


(C)2013 フジテレビ 東宝

最後の作品は、やはり「仲間割れと言えばこの人」の三谷幸喜、原作・脚本・監督作。

“本能寺の変により、織田信長が命を落とす。織田家の後継者問題をめぐり、重臣・柴田勝家と羽柴秀吉が、様々な権謀術数を用いて対立する……”

「鎌倉殿」にハマっている方は、『清須会議』も観なければいけない。

■大河フリークなら見逃せないキャスティング


主人公・羽柴(豊臣)秀吉を演じるのは、源頼朝役の大泉洋。
会議参加メンバーのひとり、池田恒興を演じるのは、上総広常役の佐藤浩市。
謀反を起こした明智光秀を演じるのは、伊東祐親役の浅野和之。
信長の妹・お市の方を演じるのは、丹後局役の鈴木京香。

そして、秀吉の弟・羽柴秀長を演じるのは、“あの”善児役の梶原善である。秀吉に都合の悪い人間をサクっと殺すのではないかと冷や冷やしていたが、そんなことはなかった。最後まで気のいい弟だった。当たり前だ。それが本来の梶原善だ。

「鎌倉殿」に限らず、大河フリークの方にとって興味深い配役もある。「麒麟がくる」で織田信長を演じ、それまでの信長感をひっくり返してしまった染谷将太。その彼が、信長の小姓として有名な森蘭丸を演じているのである。実に感慨深い。

■柴田勝家と羽柴秀吉の対比、人間模様の面白さ


『清須会議』は、柴田勝家(役所広司)と羽柴秀吉の対比が、実に面白い。

昔気質の、いかにも戦国武将という雰囲気の勝家。荒々しい。暑苦しい。汗臭そう。脂性(実際、裸足で歩くとべったりと足跡がつく)。
対するは、新人類という雰囲気な秀吉。明るい。人懐っこい。人たらしで人気者。
このふたりが、それぞれ信長の次男と三男を擁立する。もちろん、お互いに自らの傀儡にする腹づもりだ。

重臣たちによる会議で決めることとなり、秀吉と勝家は、味方増やしに奔走する。
勝家の盟友・丹羽長秀(小日向文世)、優柔不断な池田恒興、勝家の家臣でありながら秀吉の親友でもある前田利家(浅野忠信)、信長の妹で秀吉と勝家双方から想われているお市の方、信長の義理の娘・松姫(剛力彩芽)、その息子・三法師。

あらゆる登場人物が、あっちにふらふら、こっちにふらふら、土壇場で裏切ったり、暗殺を企てたり、人間模様がとにかく楽しい。

そして、筆者が勝手に“時代劇のヒロインがもっとも似合う女優”だと思っている中谷美紀が、今作でも「秀吉の妻・寧役」として大変いい仕事をしている。
寧がいたからこそ、秀吉は天下人になれたということがよくわかる。秀吉と勝家の勝敗を分けた最大の要因は、“女運”だ。


「鎌倉殿」で気持ちがすり減ってペラペラになった方は、『清須会議』を観るといい。同じ三谷幸喜の“仲間割れもの”だが、こちらは誰も死なないから(冒頭の信長たち以外)。

そして再び「鎌倉殿の13人」


(C)NHK

『清須会議』を観て大いに笑い、三谷幸喜は本来こういった喜劇の人なんだということを思い出した。

「鎌倉殿」でもたまには箸休め的に、誰も死なない笑い多めの回を挟むのではないか。でないと視聴者のメンタルがもたない。

一縷の望みを抱いて観た、第28話。頼む、お笑い回!

梶原景時殿(中村獅童)が、死んだ。
みんなから除け者にされ流罪となったが、坂東武者として、彼は戦って死ぬことを選んだ。
ただ頼朝のためを思い、進んで汚れ役や嫌われ役を買って出ていた梶原殿。だが頼朝が死んだ今、御家人たちに残ったものは、梶原殿への憎しみの感情だけだった。

厳し過ぎて誤解されていたが、梶原殿は鎌倉幕府の“良心”だった。
その“良心”が排斥され、残るは私利私欲にまみれた魑魅魍魎たち。これからますます激化する、誅殺・謀殺・暗殺の嵐。

非常に楽しみだ!

(文:ハシマトシヒロ)

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