“戦う男たちの眩しさ”を楽しめる、池井戸潤原作映画&ドラマ「4選」
人生とは戦いなのか。時にそう感じる瞬間がある。
あってはならないことが起きたり、理不尽が横行したり。この社会は時にひどく不条理だ。納得できぬものを目にしたとき、私たちは人としてどうあるべきか。どう進めばよいのだろうか。
その大いなるヒントを示してくれるのが、作家・池井戸潤の小説を原作とする戦う男を描いた映画・ドラマの数々だ。
今回は池井戸作品の中からぜひ見てほしい4作を紹介。信念を貫く男たちの眩しい生き様に注目してみたい。
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『空飛ぶタイヤ』
2018年公開の劇場作。トラックのタイヤが突如はずれる事故が起き、1人の女性が死亡した。事故の責任を問われた赤松運送の社長・赤松(長瀬智也)はトラックの構造上の欠陥を疑い、自社の名誉を守るべく真実を追い求めて大手自動車メーカーのリコール隠し疑惑に迫っていく。
この戦う男に注目!:赤松徳郎(長瀬智也)
(C)2018「空飛ぶタイヤ」製作委員会
本作の主人公・赤松(長瀬智也)。事故の原因は整備不良だという結論に納得いかない彼は、独自の調査を開始した。トラックの製造元である「ホープ自動車」に立ち向かうことになる。
赤松の戦いは並大抵のことではない。そもそもは彼の会社の社員が事故の加害者。はたから見れば赤松のしていることは往生際悪く自己保身に走っているととられても仕方ないといえるだろう。
被害者の遺族は当然のこと、警察からも取引先からも厳しい目を向けられる赤松。周りの仲間や家族も消耗して、相当に追い込まれもする。しかし、それでも赤松は諦めない。自身や会社の尊厳を損なう敵を許さず進もうとする彼の姿は非常にすがすがしいものがあった。
赤松を演じたのは長瀬智也。精悍な佇まいと強い目力が役に非常にはまっている。若い頃はちょっとやんちゃしていたかもしれないけど、大人になってからは至極真っ当に仕事している…という雰囲気で、気骨と人情を感じさせる社長姿がよく似合う。
『七つの会議』
2019年に公開された劇場作。中堅メーカー・東京建電でぐうたら社員・八角(野村萬斎)が課長のパワハラを訴え、その後次々不可解な人事異動が起きる。新課長となった原島(及川光博)は八角の動向に疑問を覚えるが、やがて会社の奥に潜む驚愕の真実が明らかになっていく。
この戦う男に注目!:八角民夫(野村萬斎)
(C)2019映画「七つの会議」製作委員会
本作の主人公・八角(野村萬斎)。就業中に平気で居眠りするなどまったくやる気の見えないぐうたら社員だが、彼こそが会社の闇の部分を深く知るキーマンだ。
『空飛ぶタイヤ』の赤松が社長として会社を背負う親分肌であるのに対し、八角はどちらかというと一匹狼。自身が立ち向かっている領域に周囲の人間が中途半端に立ち入るのを許さない節がある。劇中で「知らないうちが花だ」言いきる彼のセリフが端的にそれを物語っているといえるだろう。
物語の中でやがて明かされていくのは、会社、そして八角にも関わる衝撃の闇。一見マイペースに奔放に生きている八角が実は非常に重たいものを背負っていたことがわかる。彼が抱えていたものを知ったとき、どれだけつらかったか……と筆者は心を寄せずにいられなかった。苦しみを味わったからこそ孤軍奮闘の道を選んだと思われる八角。ストーリーが進むにつれて過ちを繰り返してはならぬという彼の並々ならぬ覚悟が伝わってくる。
八角役をつとめたのは野村萬斎。何を考えているかわからない飄々としたあやしさや過ちを許さぬ凄味など、さまざまな表情で魅せながらしなやかに戦う男を演じている。
「半沢直樹」
2013年、2020年に放映された大ヒットドラマ。東京中央銀行につとめるバンカー・半沢直樹(堺雅人)が銀行の内外にうごめく不正に立ち向かう物語である。「倍返しだ!」の決め台詞で相手をやりこめる半沢直樹と個性豊かな敵役たちが織りなすまさに全編戦いといっていい、痛快エンターテイメント活劇だ。
この戦う男に注目!:黒崎駿一(片岡愛之助)
本ドラマでは、あえて主役の半沢直樹ではなく、第1シーズン・第2シーズンを通して重要な脇役であった黒崎駿一(片岡愛之助)に注目したい。
大阪国税局、金融庁などで手腕を発揮するエリートで銀行を目の敵にしている黒崎。ドラマの第1シーズン前半で半沢に出し抜かれたあと、何かと半沢と対立するいわば目の上のたんこぶ的な存在となる。
ドスのきいたオネエ言葉と強引なやり方が持ち味で、ときにおのれの部下たちをも怯えさせる黒崎。とはいえ、ドラマを続けて見ていくほどに視聴者は彼が決して悪人ではないことがわかるはずだ。強硬な姿勢や厳しさは仕事を全うしようとするからこそのこと。彼には彼の確固たる正義感があり、それに基づいて戦っているにすぎないのだ。
自身の正義を貫くため、黒崎は第2シーズンで「だいっっきらい!」な半沢とそれまでと違う関わり方をしていく。物語の終盤、“最強の助っ人”として現れる彼の姿は本当に頼もしくて、拍手喝采ものだ。
この黒崎役で注目を浴びて一躍人気者となった歌舞伎役者の片岡愛之助。しなやかな立ち姿と伸びやかな美しい発声、振りきった演技で、黒崎を凄味がありつつまろ味も感じるキャラクターに仕上げた。本作に絶妙なコミカルさを加えた立役者だといえるだろう。
「ノーサイド・ゲーム」
2019年放映のドラマ。大手自動車メーカーの本社から工場に左遷されてラグビー部のGMを任された君嶋隼人(大泉洋)が、成績不振で会社のお荷物と化していたチームを建て直そうと一念発起。選手たちとともにリーグ優勝を目指す戦いを繰り広げていく。
この戦う男に注目!:浜畑譲(廣瀬俊朗)
ラグビー経験者のキャストが集結したことでも話題を集めた本作。劇中のラグビー部「アストロズ」選手で特に目を引くのが、チームの花形にして司令塔でもある浜畑(廣瀬俊朗)だ。一見、強面で無愛想な浜畑。しかし、物語が進むにつれて非常に純粋で心根がまっすぐな男であるのがわかってくる。試合になると華麗なプレイで皆をリードする一方で、工場では仲間の残業を手伝うなど、彼が要所で見せる無骨な優しさがとてもいい。
他の選手たち同様に君嶋と出会って奮起していく浜畑。チームが再生していく中、既にベテランであった彼は選手としての岐路にも立たされるが、浜畑はそれを受け入れてなおも戦う。覚悟を決めて試合に挑んでいく彼の姿は本当に熱く、思わずエールを送らずにはいられない。
浜畑を演じたのは元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗。これが俳優デビューだというのに驚かされる見事な演技ぶりだった。彼のラガーマンらしい雄々しさ、哀愁と人間味あふれるまなざしのおかげで、浜畑という男がたまらなく魅力的なキャラクターとなっている。
2022年後半以降も手に汗握る池井戸作品に期待
2022年後半以降、実は池井戸潤原作の映像作が目白押しとなっている。
貧しい幼少時代を過ごした青年と大企業の御曹司の2人の運命を描いた『アキラとあきら』が2022年8月26日(金)より劇場公開された。さらに、銀行の現金紛失事件をめぐる物語『シャイロックの子供たち』のドラマが10月にWOWOWにて放送、劇場版が2023年に公開予定だ。
『アキラとあきら』は竹内涼真と横浜流星のW主演、『シャイロックの子供たち』の主人公・西木をドラマ版では井ノ原快彦、劇場版では阿部サダヲが演じる。池井戸潤が描く男たちの熱き戦いがこの先もまだまだ私たちの心を高ぶらせ、手に汗握らせてくれそうだ。
(文:田下愛)
■『空飛ぶタイヤ』配信サービス一覧
| 2018年 | 日本 | 120分 | (C)2018「空飛ぶタイヤ」製作委員会 | 監督:本木克英 | 長瀬智也/ディーン・フジオカ/高橋一生/深田恭子/寺脇康文/小池栄子/阿部顕嵐(ジャニーズJr.)/ムロツヨシ/中村蒼/柄本明/佐々木蔵之介/六角精児/大倉孝二/津田寛治/升毅/笹野高史/岸部一徳 |
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