「ちむどんどん」第107回:清恵が水商売に戻ってしまう展開はいかがなものか
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第107回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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ちむどんどん 早くも休業?
ちむどんどんは閑古鳥で打つ手がなくなった暢子(黒島結菜)は休業を決意します。えええー
必死で何か手を打っていたようには思えませんでしたが……。
あと4週、最終週の大逆転を前に、ズドーンと落としているのはわかります。あと4週の間に一気に浮上するでしょう。とはいえ、この展開はいかがなものでしょうか。
そもそも暢子は無計画過ぎます。
急に和彦(宮沢氷魚)に恋モードになって結婚して、独立を決意して、妊娠もして、大きな店舗借りて、
従業員(矢作)も雇って、客足が途絶えてもどこかぼんやりして流されるまま。
豚肉に火をかけたまま、2階に上がって和彦と今後の相談していて、焦げ付かせてしまいます。とても迷走しています。これ、へたしたら火事になったかもしれないですよね。怖すぎます。
そもそも、豚肉を沖縄から取り寄せるなど素材にこだわっているのに、味を東京の人に合わせたものに変えるなど、矛盾していませんか。
まったくお客がいないけど、あまゆや田良島(山中崇)はオープン時しか来ないのか。田良島なんて知り合いをじゃんじゃん連れてきそうではないですか。和彦も、雑誌の編集部の人を連れて来ないのか。
重子(鈴木保奈美)が唐突に、これは暢子の冒険なのだと言い出しましたが、彼女の冒険=無謀、流されるままという印象です。
「遠い南の島からたったひとりでやって来て……」
重子が唐突にやたらといいことを言ってましたが、詩が好きな重子だから、こういう日常会話的ではない言葉を言えるのでしょう。
鈴木保奈美さんは代表作「東京ラブストーリー」でかっこいい自立した自由なヒロインを演じていたから、こういう力強いセリフが似合います。その分、世間知らずの箱入り娘の重子とはすこし違う方向にキャラが育ってしまっています。でも、保奈美さんの魅力でそれが素敵に見えるからいいですね。
波子(円城寺あや)も出番がさほどないのに、すごく印象的に見えるのは、円成寺さんの力だと思います。田舎料理を作ってきて、沖縄料理以外のものを…とすすめます。これは、地元料理の良さに気づかせたいという思いでしょうか。暢子、なんで食べない? 波子がお皿によそっているのに、食べる画をなぜ入れない? 明日以降、食べて、何かピンと気付くシーンが出てきますよねきっと?
ありがとうございます と目を落とした先には、波子の料理があるはず。これを一口食べて、場面を切り替えたらいいのに、第106回同様、暢子の表情に余韻なく、ぱっと場面が切り替わってしまいます。
そして最大の問題、賢秀(竜星涼)と清恵(佐津川愛美)のシーンへーー。
涌井(田邊和也)のせいで、いい感じになっていた二人の仲もにわかに雲行きがあやしくなります。
賢秀「出ていけ おまえの顔とか 見たくない」
清恵「悪いけど ここ私んち」
賢秀、ほんと、ばかですね。こうして、清恵は出て行ってしまいます。
清恵の女ごころ。都会に憧れて出ていったものの騙されて水商売をするようになって、その過去を賢秀に話す勇気はないから、友達の話とぼかして伝えて。
清恵のことだったと知った賢秀は騙されたと怒り出し、水商売ややばい男との結婚していた過去はやっぱり消えないのだという悲嘆と、賢秀が出て行ったら大変だろうという思いやりで、出て行ってしまう清恵。
そしてまた水商売に。
この時代、なにも持たずに都会に出たら、水商売しかない ということも確かにあったかと思いますが、
あれだけ水商売の過去を消したかった清恵がまた水商売をやっているのは、物語的にとても安易だと感じて胸が痛いです。
運良く助けられてきた暢子との対比を描きたいのでしょうか。でも、過去の朝ドラで水商売をやっていた人物たちにはもっと痛みがあり、女性が一緒にその痛みを共有し、あってはならないと感じて見たものです。「おしん」や「カーネーション」はそうせざるを得なかった女性の視点に立っていました。
その歴史を経て、いまの時代に、なぜこんな描き方をするのでしょうか。わざわざ水商売のセットを急作りで作って、清恵に金髪をかぶせて……。
第106回で、二ツ橋(高嶋政伸 たかはハシゴダカ)が、水商売について語っていました。飲食店も水商売ということを言っていました。つまり、「ちむどんどん」では、清恵のような水商売も、暢子の飲食店も、同じ水商売なのだという観点で描いているのかもしれません。そういったら芸能だって水商売です。
みんな泥水すすって生きてるのだということです。わかりやすい水商売だけが特別視される職業というわけではないのです。みんな悲しいし、暢子たちのように愚かで無様でたくましく生きているだけなのです。それは悲しいのではなく尊い。そう思うと生きる勇気が沸いてくるような気がします。
言いたいことはなんとなくわかるのですけれど、それを朝の貴重な時間に放送しているのだから上質なドラマに仕立てて見せてほしいというだけなのです。長く続いた朝ドラのブランドを大事にしてほしい。
(文:木俣冬)
木俣冬著「ネットと朝ドラ」は2022年9月12日発売!(※現在予約受付中)
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