「ちむどんどん」第123回:和彦の「このなんとも言えない香り。くせになりそう」がCMのセリフみたいだった
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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第123回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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やっぱり黒島結菜は走る姿が魅力的
バスに乗って帰っていく房子(原田美枝子)を追いかけて全力疾走する暢子(黒島結菜)。
走るのが得意だった暢子が久しぶりに走ります。東京で走っていたことはまったくなかったですが、健脚は健在。
このバスの場面。子供のとき、暢子が房子のもとへ引き取られて行くためにバスに乗ったものの、家族と離れたくなくて引き返した道。あのとき、房子に引き取られていても、結局同じような人生を歩んだかもしれないけれど、回り回って、房子とは奇妙な出会いをしていまがあります。
今度はその房子が乗るバスを暢子が「また来てください」と追いかける。不思議な気持ちになりますね。
引き取られていくとき不幸の絶頂だったように見えた暢子が自力で生き抜き幸せを掴み取っていまもなおどんどん幸せを増やしています。房子のことも救い、それが回り回って優子(仲間由紀恵)の心残りも解決しました。
暢子は、沖縄そばのアレンジを考えます。カラキを練り込んだ麺を、名護の製麺業者の運天進(大野泰広)と共同で作ります。
先日まではおばぁたちが集まって試食していましたが、今回は男性たちです。女性受けするおしゃれ沖縄料理だけでなく、労働者たちが好むものも作る必要がありますからね。
食べた和彦(宮沢氷魚)が「このなんとも言えない香り。くせになりそう」とCMのセリフのようなことを言います。そのあとも「カラキの風味も出汁に合ってる」とまったく個性のないセリフを言っているのがなんだか不憫に思えます。これがグルメ漫画だったら気にならないのですが、生身の人間が言うと気の利いたことを言えない人に見えてしまうんですよね。私たちは劇的なものに侵食されていて、贅沢を言いがちですが、日常ではそうそう気の利いたことを言えないというリアル描写と考えればいいのです。
夏が過ぎ、11月、暢子は実家を増築し「やんばるちむどんどん」を開店にこぎつけます。
この実家の外側のやけに開いた感、ゆくゆくお店のスペースを作るために美術スタッフさんが設計していたのだなあといまならナットクです。飲食スペースができたほうがしっくり収まって見えます。
この地元につくった店感が「まれ」。麺づくりは「まんぷく」。SDGsは「おかえりモネ」、五郎役で草刈正雄さん登場は「なつぞら」と過去の朝ドラ要素が満載です。
さあ開店!と思ったらーー
ピンチ!
突然出てきて印象づけた運天製麺さんはなんだったのか……。
どう考えても無理そうなピンチを、暢子は「大丈夫」の一心で乗り切ります。
このときの比嘉ファミリーの強い結束力。三姉妹の夫が三人いて、これは「渡る世間は鬼ばかり」的なムード。といえば「おしん」の後半のおしんファミリーのよう。そうか、「ちむどんどん」は橋田壽賀子リスペクトの大家族ドラマをやりたかったのかも!
それはそうと、博夫(山田裕貴)の姿勢に筆者は注目しました。若干猫背でずんぐり見えるのは意識的なものだろうと。博夫の性格や生活から身体をデザインしているのでしょう。すごいよ山田裕貴さん。
(文:木俣冬)
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