「純愛ディソナンス」第10話:“不倫=悪?”から“不倫=悪!”の展開に。全ての悲劇は5年前に始まっていた
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中島裕翔(Hey! Say! JUMP)が主演を務めるドラマ「純愛ディソナンス」(フジテレビ)が2022年7月14日スタート。
新任音楽教師と生徒の“純愛”を軸とする本作。高校を舞台にした第1部と大人の人間模様を描く第2部で構成され、タブーと隣合わせにある恋が次第に周囲を巻き込み“ディソナンス”(=不協和音)となっていく様を描く。
本記事では、第10話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
「純愛ディソナンス」第10話レビュー
服役中の加賀美(眞島秀和)から、正樹(中島裕翔)のもとに一通の手紙が届いた。「すぐそばに禍が迫っている。過去からは、逃れられない」
ついに最終章に突入したドラマ「純愛ディソナンス」。第10話にテーマをつけるとすれば、「過去の清算」だ。ようやく心から結ばれ、未来に向けて歩みを進めようとする冴(吉川愛)と正樹の足を過去が引きずり戻そうとする。
同時期に切っても切り離せないものと向き合うことになった二人。切り離せないものとは、“家族”だ。
賢治(光石研)の支配から逃れるため、正樹は最後の仕事へと向かう。それは自身の父・秀雄(神保悟志)が理事長を務めていた学校法人『立秀学園』の土地の権利書を受け取るだけの仕事。
幼い頃から優秀な兄と比べられ、苦しい思いをしてきたのだから本来なら気を使う必要はない。しかし、そこで正樹は秀雄が認知症になっていることを知る。昔のように“父親”らしい顔で「あいつは頑固だからなあ」と自分のことを思い出す秀雄の姿に複雑な思いを抱く正樹。
一方、冴も静(富田靖子)が3年前に胃がんの手術をしており、昨年再発したことを知る。しかも、静が冴に渡したお金は治療費に当てる予定だったのだ。最後くらい冴と楽しく過ごしたい。冴に看取られたい。そんな静の思いに心動かされる冴。
「どんな親でも、親は親」という言葉もあるが、そんな理不尽なことはない。大事にしてくれない親を、どうして子どもが大事にできようか。それなのに、散々傷つけられてきたはずの冴と正樹が親を捨てた自分自身を責めてしまうのが切ない。
そんな二人に追い打ちをかけるのが、賢治だ。愛菜美(比嘉愛未)以上に、正樹に執着する賢治は冴に500万円の手切れ金を渡す。「家族の絆には勝てない」。賢治の言葉が冴の無意識化に根をはる。
冴は結局、その手切れ金を受け取ってしまった。既婚者である正樹のことを諦められず、愛菜美を傷つけてしまったという罪悪感もあったのだろう。正樹と別れ、冴は再び静のもとに戻っていく。
それにして静を演じる富田靖子の演技がすごい。なぜか同情して、一瞬ほだされそうになってしまうのだから。でも、結局は自分のことしか考えていない。この物語に出てくるのはみんな子供を所有物としか思っていない親ばかりだ。愛菜美と北都(和田正人)の親である賢治も。
だが、そんな毒親たちを暴走させた黒幕がいた。もうすでに多くの人に予想されていたが、やはり晴翔(藤原大祐)だ。慎太郎(高橋優斗)と正樹がまるで探偵のように真実を暴く。
晴翔は加賀美の息子。加賀美が捕まった後、母親が自殺したことを理由に5年前の事件を暴いた正樹に復讐しようとしていたのだ。だがしかし。そのあとに納得がいかない新事実が明らかになる。
なんと、小坂(筧美和子)を殺したのは晴翔だというじゃないか。加賀美が愛人である小坂にフラれた恨みで彼女を殺したわけじゃない。晴翔が母親から父親の心を奪った小坂を殺し、加賀美が彼をかばって捕まった。
それで正樹を恨むのはお門違いじゃん!!!と一瞬叫びそうになってしまったが、晴翔は不倫の被害者。今の正樹と冴が、不倫で母親と自分を深く傷つけた加賀美と小坂と重なり、恨みも倍増なのだ。
不倫による最悪の結果を描いた作品は多くあるが、冴と正樹を通して不倫=悪という図式に違和感を持つ展開だったのに。ここにきて、やっぱり不倫=悪!に視聴者の心を引き戻す脚本の凄さ。
果たしてどこに着地するのか。息つく間もなく、次週はついに最終回だ。
(文:苫とり子)
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