松本穂香『恋のいばら』インタビュー 玉城ティナと作り上げた互いの役柄
恋人の健太朗にフラレたばかりの桃。あるとき、健太朗(演:渡邊圭祐)のインスタで新しい恋人・莉子の姿を見つける。桃はインスタから莉子を特定し、会いに行く。桃が莉子に会いに行った理由とは?
今回は桃を演じる松本穂香さんに作品の見どころについて、そして莉子を演じる玉城ティナさんとの関係についてお聞きした。
この作品でティナちゃんと出会えてよかった
――今回、桃をどのような気持ちで演じられましたか?
松本穂香(以下、松本):元カレと今カノと私の三角関係が大きくはあるのですが、最後まで脚本を読んでみると、そこじゃないんだな、ということを感じ、理解した上で演じました。なので、莉子への嫉妬心やうらやましいという気持ちもきっと桃の中にはありつつ、一番は憧れのようなものを意識していました。
あとは、桃が普通の価値観とは少しズレているのかなという行動が脚本に描かれていたので、特にこうしようああしよう、みたいなことはあまり意識していなかったです。
――W主演の玉城さんと一緒に役を作り上げて行った、と公式サイトでコメントされていましたが、現場ではどのようなお話をされたんでしょうか。
松本:役についてだとか、ここのお芝居はこうしよう、という話し合いはほぼなかったです。
莉子ってこういう人なのかな、とか、ティナちゃんはこういうふうにこのセリフを言うのかな、というのは想像していたんですけど、実際にやるのはティナちゃんなので、思っていたテンションと違うこともあるんです。そこを、現場で会話をして、ティナちゃんがこういうテンションで言ったから、私も桃としてこう言おう、と調整しました。本当は別のテンションで言うはずだったけど、例えばもう少ししっとりとしたテンションになったりだとか。どの役でもそうなんですけど、今回はティナちゃんと2人のシーンがたくさんあったので、ティナちゃん演じる莉子によって桃ができた、という気持ちが強いですね。
――玉城さんとは仲良くなられましたか?
松本:はい! 撮影前は勝手なイメージで私とは真逆の方なのかな、と思っていたんですけど、話してみると根本がちょっと近い部分があるというか。波長がすごく合うな、と私としては感じているので、この作品で出会えてよかったな、と思います。
健太朗は「ちょうどいいクズ(笑)」
――松本さんから見て、玉城さん演じる莉子、渡邊圭佑さん演じる健太朗はどんな人物だと思われますか?
松本:健太朗は人を見抜く力がすごいですね。生まれながらにして持っている力で、桃と出会ったときも桃がどういう人なのか見抜いていると思います。最初から最後まで、どこかで桃のことを舐めてたんじゃないかな。うまい具合に自分の弱さも出せるし、世渡り上手なほうなんだろうな、と健太朗を見て思っていました。ちょうどいいクズ、みたいな(笑)。
莉子は強いように見えて、そうじゃないんだろうな、と思いました。私が勝手に思っていることなんですけど、ティナちゃんもそういうふうに勘違いされることが多いのかな、って。目立つタイプで、勘違いされがちだけど、繊細な部分がたくさんあって、でも、他人から見られている自分を大切にしなきゃいけないと思っているところもあって。わからないですけど、きっとティナちゃんも見られている自分、みたいなものを意識しているだろうな、というのは思います。
――今回、定城秀夫監督とは初めてタッグを組まれましたが、いかがでしたか?
松本:監督は、本当に委ねてくださるというか。動きに関してはおっしゃるんですけど、お芝居に関してはほぼゼロぐらい何もなかったので、今まで経験したことがない現場でした。
――監督が描きたいものを想像しながら演じるような形だったんでしょうか。
松本:想像してもやっぱりわからない部分なので、自分たちが思う自分の役で演じていました。
桃と莉子がなんてことのない会話をしている、というシーンが多くあったんですけど、私とティナちゃんが現場を通してぎゅっと仲良くなったので、そこがなかったら成立していなかったかもしれないな、と思います。
――現場で印象的なことはありましたか?
松本:物語の後半になってくると、一発で成功させなきゃいけないシーンもあったので、そこはお互いの熱量をちゃんと確認し合って、決めようね、と、口に出すわけじゃないですけど、緊張感がある時間でしたね。
桃に共感したところは?
――作品の中で、友情もひとつのテーマだと思います。松本さんが考える友情とは?
松本:幅広いな、と思います。恋愛でも友情でも、名前がそうついているだけで、友情の中でもいろんなものがあると思うし、桃と莉子はそこにとらわれていないというか。お互いがお互いを尊敬しているし、大好きだし、2人だけが持つ世界なので。
――では、松本さんにとって友情はどういった存在ですか?
松本:恋愛も大事ですけど、一番大事なものだな、と思います。
――元カレの今カノが知りたい、というインパクトのあるコピーですが、松本さんご自身はいかがですか?
松本:うーん、気にはなるかもしれないですけど、知りたいとは思わないですね。
――恋愛において、固執したり、相手に執着したり、という気持ちについてはいかがでしょうか。
松本:理解はできます。桃は自分に自信がないとか、きっとのめり込めるものが他にあまりないから、ちょっと優しくしてくれる人を好きになっちゃったり、執着したりとか、気持ちは分かります。でも、それが別に悪いことだとは思わないので、その人たちが幸せならそれでいいですよね。
――松本さんご自身は桃と莉子だったらどちらが似ていると思いますか?
松本:桃が「爪かわいいな」と言ったら、莉子は「やればいいじゃん」って言えるんですけど、桃が「自信ない、勇気ない」って返すんです。そこは私も桃にすごく共感できました。ただ爪を塗ればいいだけのことなのにって莉子は思うけど、でも塗ったことによって周りからどう思われるのか考えると、勇気がないって思う人はきっとたくさんいるんじゃないかな、と思います。
――いろんなメッセージが込められた作品だと思います。今回、どんな人にこの作品が届いてほしいと思いますか?
松本:いろんな関係性で悩んでいる人がいると思います。例えば、同性の友達が気になっちゃうとか、その関係性も全部、名前がつけられているじゃないですか。そのくくりに捕われていると感じる方にはぜひ見てもらいたいと思います。
映画は自由に見てもらいたいと私は思っているので、泣いても笑ってもいいし、怒ってもいいし。いろんなことが全部自由なんだよ、と感じてもらえたら嬉しいですね。
(撮影=渡会春加/取材・文=ふくだりょうこ)
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