映画『#マンホール』極限状態で本性がむき出しになる中島裕翔のパワーを見よ!
映画『#マンホール』が2023年2月10日より公開中だ。本作の目玉は「Hey! Say! JUMP」の中島裕翔が6年ぶりに映画主演を務めたこと。そして、シンプルなシチュエーションでありながら、さまざまなアイデアで楽しませてくれるサスペンスになっている。
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そして、本作は非常にネタバレを踏みやすい内容とも言えるので、ぜひ早めに劇場でご覧になってほしい。ここでも、もちろんネタバレを伏せつつ、作品の魅力について記していこう。
脱出のために活用するのはSNS!
本作の内容は「結婚式前夜にマンホールの中に転落してしまった男のサバイバル劇」と一行で説明できる。ハシゴは壊れ、脚には傷を追い、地上に這い上がることができない。外部に助けを求められる道具は「スマホのみ」なのだ。「じゃあスマホで知り合いか誰かに連絡して助けに来てもらえば万事解決じゃん」と思うところだが、まったくそうならない。もちろん、劇中で主人公は元カノや警察に電話をかけるのだが、とある理由により「どこに落ちたのか」判然としない上に、さらなる衝撃的な事実も判明するため、それだけでは助からない。観客が「当然こうするだろう」と思う行動を主人公が早めに片付けてこその、「もうこの手段に頼るしかない」心理がしっかり描かれているのは、本作の大きな美点だ。
そして、「もうこの手段に頼るしかない」のがTwitterに似たSNS。立ち上げたアカウントで「マンホールの穴に落ちた不運な“女性”」を名乗り、ネットの住人たちは“彼女”を救おうと躍起になる。ネットの住人の中には不遜なことや犯罪めいたこともつぶやく連中はいるものの、もちろん善意で“彼女”のために行動する者もいる。
そのSNSでのつぶやきや拡散のされ方は“悪意”が多めに抽出されデフォルメされている印象もあるものの、やはり現実に通ずるものとしてリアルにも映る。そして、ネットの住民の幅広い知識や、時には危うさ込みの行動力があってこそ、真実に迫っていく。そんなミステリーとして大いに楽しめるだろう。本作のタイトルからSNSで使う「#(ハッシュタグ)」が仕込まれているのは、そのような寓意があったのだ。
そのSNSでの“捜査”の盛り上がりと同時並行で、「2分に1度訪れるピンチの連続」というキャッチコピー通りに、マンホールの中にいる主人公にはさまざまな危機が訪れる。現代らしくSNSを活用したミステリー×身動きが取れない穴の中のサバイバルという二段構えのエンタメ性で、ワンシチュエーションにも関わらず、99分の上映時間中ずっと楽しませてくれることもまた、本作の大きな美点だ。
ハイスペ男にハマる中島裕翔のパワー
本作のさらなる特徴は、主人公が完全無欠なハイスペック男であり、良い意味でかわいげがないということだろう。彼は大手不動産会社に勤めるエリートサラリーマンで、営業成績は毎月トップクラスで、上司からも一目置かれ、甘いマスクのため社内の女性人気も高くて、後輩からも慕われて、務める会社の社長の娘との婚約を発表している。順風満帆すぎていけすかないが、だからこそ文字通りに穴に落ちて人生も転落間近という状況のギャップが際立つようになっている、というわけだ。
そして、彼はハイスペというだけでなく、人間としても徐々に「イヤなところ」を見せていく。友人との電話でもそのことを匂わせるし、そもそもSNSで女性になりすますことにも打算的な嫌らしさを覚える方は多いだろう(もちろん、明日の結婚式どころか命に危険が及ぶ状況であるので、なりふり構っていられない心理は理解できるのだが……)。そして、この極限状態でこそ、彼の性格の悪さ、いや「本性」がむき出しになっていくことにも、良い意味で趣味の悪い面白さがあった。
そんなハイスペかつ実は性格が悪い、いやそれだけに止まらない複雑な内面を持つ主人公に、中島裕翔をキャスティングしたことが素晴らしい。その端正な顔立ちの時点で「周りから羨まれる完全無欠な男」への説得力は存分であるし、初めは誠実そうに思えた表情は、極限状態に陥いることで次第に「ギラついて」いき、どことなく恐ろしさを感じさせる。そして、前述したような本性をむき出していく様も中島裕翔は完璧に表現している。何より、ほぼ全編が彼の1人芝居で展開する内容だからこそ、その俳優としてのパワーが最大限に発揮された作品とも言えるだろう。
製作陣は「類稀なるアイドル性」と「自分からかけ離れた人間になり切れる演技力」の2つを併せ持っている中島裕翔へと考え、オファーに至ったという。しかも、プロット作成の早い段階で中島裕翔を想定していたため、実質的に当て書き(配役を決めてから脚本を書くこと)だったそうだ。
また、熊切和嘉監督は中島裕翔の身体能力の高さも絶賛していたという。マンホール内の過酷なシーンを緊迫感をもって身体で表現してくれたことでこの作品は説得力を得た、はたまた動き・キレの良さや慌てる様子の身体表現を明確に表現してくれたことで、映像のカット割りを見出すことができたのそうだ。『#マンホール』は中島裕翔がいたからこそ成し得た映画、と言っていいだろう。
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