2月10日に公開となる映画『＃マンホール』。結婚式前夜に幸せの絶頂からマンホールへと転落した川村俊介。SNSを駆使して、どうにか助かろうとするが……。日本では類を見ないシチュエーションスリラーとなっている。

今回は、マンホールに落ちたハイスペ男・川村を演じる中島裕翔（Hey! Say! JUMP）、そして本作の監督を務めた熊切和嘉に話を聞いた。

※Hey! Say! JUMPはセンチュリーゴシックが正

「新たな顔を引き出してもらえた」（中島）

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――まず、熊切監督にお聞きしたいのですが、今作の制作スタートのきっかけはどういったものになるのでしょうか。

熊切和嘉（以下、熊切）：脚本の岡田（道尚）さんと、プロデューサー陣が1年ぐらいかけて作ったプロットを映画化しないかと打診いただきました。これは今まで自分が撮ってきたタイプの映画とは全く違ったんですが、すごくおもしろいな、と思いまして。ワンシチュエーションスリラーなんですけど、その中でSNSの風刺がすごく効いていて、今の日本を表しているところもあります。これは単なる脱出劇じゃないおもしろさが出そうだな、と思って引き受けました。

――今回、中島さん演じられる川村俊介に関しては当て書きだったとお聞きしました。脚本を読まれての率直な感想をお聞かせください。

中島裕翔（以下、中島）：本当に僕のいろんな顔を見せようとしてくれているんだな、と思いましたね。ページをめくるたびにいろんなことが起きて。読んでいておもしろいし、どんどん物語が進んでいくけど、実際にやったときのことがなかなか想像できませんでした。現場に行って、「なるほど、こういうことか」という驚きと衝撃をその場で感じて、飲み込んでやっていくような形でしたね。

――体を張るシーンも多くあります。

中島：結構ヒヤヒヤするようなシーンもありましたね。でも、うまくいったり、その中でもより怖く見える画になったりすると、すごく充足感があるというか。そういうときは監督も「OK、OK、すごくよかった！」って笑顔で言ってくださるので励みになりました。
当て書きをしていただくなんて恐縮ですけど、初号を観たときに、僕自身も見たことがないような、「このシーンでこんな顔をしていたんだ」と、びっくりするぐらいの表情が出ていた瞬間はあったので、よかったな、と思います。

 

特殊な環境の中での演出、演技

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――中島さん演じる川村はかなり見どころのある人物だという印象です。川村の魅力はどういったところだと思いますか？

中島：生命力じゃないですか？

熊切：最終的にはそうですね。

中島：結婚式を翌日に控えているということで、タイムリミットも決まっている中、とにかくなんとしてでもここから出てやるんだという気持ちが強い。普通は諦めて餓死すると思うんですよ。僕だったら、怪我をしている時点でたぶん気が滅入っちゃう。でも川村は諦めず、最後のほうは、だんだん追い詰められていくんですけど、ちょっと応援したくなるぐらいのがむしゃらさがあります。

――熊切監督は、撮っている中で中島さんの新たな魅力を見つけたり？

熊切：本当にたくさんありましたね。「こんな表情をしていたんだ」ってさっきおっしゃってましたけど、僕も撮っていて思いました。特に編集していると、最初と最後では顔が全然違うんですよね。本当に別人のような顔になっていたので、その多面性が非常に面白かったです。

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――マンホールに落ちてからはそんな川村の独壇場になります。

中島：一人で画をもたせられるか、というところは正直心配でした。特に意識してやろうと思ったことはないんですけど、動きがすごくシャープだね、と言われることがあって。それが少しでも画をもたせられる要因に繋がっていればな、と思いますけど。

熊切：本当に彼の身体能力の高さや、動きのキレがあったから、僕はカットを割れた、というところがありました。すごく的確に動いてくれたので、それによってその画が見えてくると言いますか。

――川村が追い込まれていく姿は、本当に鬼気迫るものがありました。どのような演出をつけられたんでしょうか。

熊切：セッティングをする前に、動きを話して実際にやってもらって、その中で例えば、付き合っていたころにDVをやっていたんじゃないか、という雰囲気が出ないか、という提案をしたり。僕はあまり説明がうまくないんですけど、それを分かってくれるんですよ。

中島：言いたいことや必要なこと、この感情の増幅が必要なんだな、ということはすごく伝わってきたので、自分の中でできる限り、あまり良くない面を出せればな、と思って。監督から言葉をいただいて、さらに考えて演じました。

――逆に普段出せない面を思いっきりやれるという面では気持ちよさもありましたか？

中島：最後のほうは、もうみんな楽しくなっちゃってましたね。監督もそうですけど、いい意味でクレイジーなかっこよさがある人たちがたくさんいらっしゃったので、セットも見方を変えるとすごくかっこよくも見えますし。

撮影はまるでセッションのようだった

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――中島さんと熊切監督の間でたくさんのお話をされて作られていったことが感じられるんですが、ディスカッションの中で印象的だったことはありますか？

中島：マンホールに入って最初のほうは僕も掴みきれていなかったので、そこはすごく熊切監督がすごく根気強く話してくださいましたね。それで少しずつ片鱗が見えていったと思います。
でも、掴みすぎないほうが最初は良かったので、あまり慣れるということはしたくなかったです。本当につらいな、と思ったり、普段はそんなこと思わないのに、あえて「撮影長いな」と思ってみたり。
あと、足に怪我をしているんですけど、そこがすごく難しかったですね。あまり痛がりすぎてもリアリティがないし。特殊メイクをしているので、実際に傷を見ていると、幻覚痛じゃないですけど、本当に痛い気がしたときもありました（笑）。

熊切：痛みの段階はかなり細かく話していたように思います。あと、ここまで撮るよ、って言っていたのに、芝居が良すぎてついついカットがかけられなくなるときが何度もあって。

中島：ありましたね！

熊切：段取り上はここまででよかったんだけど、最後まで撮り切っちゃうとか。カットがかからないから、そこからセッションのように撮影が続いていく。あれはよかったんじゃないかな、という気がします。

中島：最後のほうはそういうことが増えていって、カットがかからないな、となったときは監督の想いをまず感じて、そこにいるカメラマンの月永（雄太）さんとのセッションを感じ、このままいきますよ、と。
一度、カメラがマンホールのヘリにぶつかってしまったときがあって、カメラマンさんが本当に悔しそうな顔をしていましたね。それは印象的です。

――今回、中島さんの新たな一面も多く引き出されたかと思うんですが、今後、おふたりで作品を作るとしたら？

中島：ぜひやりたいです！

熊切：今回、結構極端な目に遭う役だったんですけど、例えば僕が今まで撮ってきたような北海道を舞台にした、そこで暮らしてる1人の男であったりとか、そういうのもできる気がしますね。

――中島さんはいかがですか？

中島：今回の作品も、ここまでやったら、振り切っていて楽しかったです。もちろん、つらいこともあったんですけど、思い出って美化されていくので（笑）。すごく楽しかったです。
だから、またこういうクレイジーなこともやりたいですし、静かな映画もやってみたいですね。それはそれで僕にとって新しいと思うので。静かな怖さという作品もありますし、そういうのをぜひやりたいです。

（取材・文＝ふくだりょうこ）

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