「ゲーム・オブ・スローンズ」プロデューサー、Huluオリジナル「THE SWARM/ザ・スウォーム」について大いに語る
プロデューサーは「ゲーム・オブ・スローンズ」の主要プロデューサーの一人で、数々のエミー賞受賞歴を誇るフランク・ドルジャー。「THE SWARM/ザ・スウォーム」はフランク・ドルジャーにとって「ゲーム・オブ・スローンズ」以来の最新作となります。
日本からも木村拓哉が日本の慈善家で海洋問題に取り組む“ミフネ財団”の創始者アイト・ミフネ役で参加することが明らかになっています。
この話題性たっぷりの大型国際ドラマ「THE SWARM/ザ・スウォーム」の配信を前に、フランク・ドルジャー本人に構想スタートからコロナ禍での撮影秘話、見どころ、木村拓哉のエピソードまで広く話を聞くことができました。
原作について、その選択理由、現代へのアップデート、映像化について
――なぜこの原作を映像化しようと思ったのですか?
もともとは2004年にドイツで「深海のYrr(原題:Der Schwarm)」というタイトルで発表された小説でした。当時から非常に重要な意味をテーマが込められていることもあってよく知られている作品でした。
5年ほど前にビジネスパートナーからこれを原作とした形で映像化の話を持ち込まれたことがきっかけで改めて小説を読み直すと、20年前に書かれたと思えないぐらい、まるで今の世界で起きていることを予期していたかのような内容で本当に驚かされました。
現在は温暖化など、自然環境・気候変動に関する様々な事実をベースにしたドキュメンタリーや作品が作られています。
そこで、私は、キャラクターが牽引するエモーショナルなドラマによって環境問題や温暖化、自然環境問題、気候変動を掘り下げられないか考えました。敢えてフィクション、エンターテインメントとして描くことで、ドキュメンタリーなどを飽きるほど見て、環境問題については十分理解したつもりになっている人の心にも響く作品になるのではないかと思いました。
――原作小説は約20年近く前に発表された作品ですが、2023年の作品にとするために工夫したこと、意識したことはありますか?
まず、科学面に関してはアップデートが必要でしたが、これについては素晴らしいコンサルタントが入ってくれていたのでとても楽でした。
また、原作が出版された当時はヨーロッパや北米では特に科学者は男性が多かったのですが、現在では女性の活躍も増えています。同時に、様々なバックグラウンドを持つ人々が科学のフィールドに入ってきているので、その多様性を表現するために、キャラクターの設定を原作から大きく変更しました。それに加えて、年齢を若くしているキャラクターもいます。
そのほか、コンサルタントと話した時に2023年から新しいエネルギー資源を見つけるために深海を掘ることができるライセンスの付与が始まると知りました。もちろん、私たちの生活には欠かせないバッテリーやチップを作るために必要な資源採掘なのですが、正しいやり方を選ばなければ環境や深海への大きなダメージに繋がってしまいます。
原作では登場人物の一人であるヨハンソン博士は、油田の掘削をしている企業から欺かれていたという設定なのですが、そういった部分は現在の状況を踏まえて、設定を変更しています。
――原作小説はかなりボリュームがありますが、それを全8話のドラマに落とし込むにあたって、どのような基準で取捨選択をされたのでしょうか?
これまで手掛けてきた「ゲーム・オブ・スローンズ」や「ジョン・アダムズ」、「ROME[ローマ]」の制作の経験から学んだ事が一つあります。
それは何があってもキャラクターに焦点を当てるということです。ストーリーは常にキャラクターからの視点で描かれなければならないと考えています。
原作は科学的な説明が非常に多いのですが、それらをすべて映像化するのは難しいものです。今作では登場人物たちがそれぞれの場所で異変の原因を調べていきます。その過程でキャラクターの強みや弱みが反映されているエピソードを重ねていき、キャラクターの成長に繋がっていないエピソードは原作からカットするというアプローチをしました。
さらに、全体的にストーリーをシンプルにしています。本作をディザスターもの(自然災害を描くパニックもの)としては描きたくなかったのですが、原作の後半3分の1はそういった方向に向かっていきます。映像化にあたっては物語にとって必須になる部分だけを抽出し、科学者たちがいかにこの未知なる存在と向き合っていくのか、人間と自然界や海との関わり合いをドラマとしてしっかり描くことを意識しました。
Huluオリジナル「THE SWARM/ザ・スウォーム」の見どころについて
――映像で特にこだわったところを教えてください。主に2つの点にこだわりました。
まず1つ目は“海”をキャラクターとして扱うこと。「THE SWARM/ザ・スウォーム」では登場人物たちが海で起きたことに対してリアクションをすることで物語が進行していきます。そういった背景もあり、海を1つのキャラクターとして描くことが重要でした。そのため、屋外のシーンはなるべく海に近いところを撮影場所として選び、視覚からも音からも海という存在を感じられるように工夫しています。
2つ目は、海のシーンは場所によってビジュアルやサウンドを全く異なるものに変えているという点です。海というものが美しくも危険な場所であり、人間よりもはるかに力強い存在であるということを表現しようとも思いました。
※「THE SWARM/ザ・スウォーム」ではヨーロッパ最大級の水中スタジオ(LITES WATER STAGE & FILM STUDIOS)で撮影が敢行され、世界トップレベルの大迫力映像、精巧かつ大掛かりなVFXが次々と畳み掛ける映像を体験することができます
――「THE SWARM/ザ・スウォーム」の一番の見どころは何でしょうか?
先ほど申し上げたように、私はこの作品をディザスターものにするつもりはなく、モンスターもの(怪物を扱った作品)としてアプローチすると決めていました。
ドラマをご覧になった方は、モンスターは海の中に潜んでいません。そのモンスターとは一体何なのかは観てのお楽しみですが、きっとその展開に驚かれるのではないでしょうか。エンターテイメント作品として楽しみながらも、最終的にはそういった気付きを得て、感動してもらえるような作品になっていればと思います。
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