「らんまん」神木隆之介と志尊淳の登場に心震える<第10回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第10回を紐解いていく。
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小学校、中退?
池田蘭光(寺脇康文)に連れられて一泊二日の自然学習を体験した万太郎(小林優仁)と広瀬佑一郎(岩田琉生)。夜、川で釣った魚を焼いて食べながら語らいます。
身分制度が崩壊したため、苦労がありそうな武家の出の佑一郎のことを、万太郎はまったく知りませんでした。「3年一緒にいて知らないのはおまんだけ」と佑一郎に皮肉られます。
万太郎は、興味のないことにはいっさい興味がありません。峰屋のことも番頭たちに任せておけばいいと、当主の自覚がなく、佑一郎にそのこともたしなめられます。
こうして名教館のあった建物は小学校となり、蘭光はいなくなり、身分関係なく男女も関係なく勉強ができるようになりました。
佑一郎は学校に行かず東京の叔父の家で書生をするそうです。
綾(高橋真彩)ははりきって学校に行きます。
竹雄(南出凌嘉)は仕事があるので学校に行きません。
自由平等の道は遠い。よくなったこともあるけれど、やっぱり不公平はなくならないのです。
小学校の勉強の内容は万太郎にとって魅力的ではなく、気が散った万太郎は、教室に貼ってあった植物の図に夢中になります。
その図を参考に庭で植物研究をして、大きな独り言を言い、先生に叱られます。
ドラマで独り言が多いと、不自然に感じることがありますが、こういう独り言だと、万太郎の特異なところの現れなのでおかしくないですね。
先生にとがめられると英語で反論。先生は英語を解せず、プライドを損なわれ激昂します。
「わからないものを見下して楽しいのか」と怒る先生ですが、彼もまた、万太郎は「神童」と噂されていたけれどかいかぶりだったとバカにしていたのです。合わせて、池田蘭光のことも知りもしないで軽んじていました。他人をバカにする者、自分に返ってくるのです。
この状況で思うのは、蘭光が、これからは”己”を追求していくことという話です。それを蘭光は、今週のサブタイトル(キンセイラン)の金色からとって、「金色の道」と言います。
心震えるものに一途にという考え方。
佑一郎はさっそく東京に出て書生の道を選びました。万太郎も小学校を中退しても構わないと開き直ります。勉学はどこでも続けられる、と。
どこの大学を出たからすごいという考え方ではなく、それぞれの得意な部分をいかに伸ばしたかが大事。こういうのはいいなと感じます。新たな時代の自由平等とそこに潜む問題点も無視してないところに信頼があります。なんでも一長一短で、すべてがうまくいくことなんてこの世界はなくてそれをいかに理解しながらよりよくしようと考えることが生きることなんですね。
万太郎は、春が何度も回ってきて、神木隆之介さんになりました。
寝転がって押し花を見ている万太郎が大人に……。押し花の紙がすこし劣化しています。
子役の小林さんはハキハキとマシーンのような正確さでしたが、神木さんの表情はいつもすごく微妙に動いていて、感情がうごめいているのを感じるのです。そこが神木さんの天才性であります。槙野万太郎がビビッドに物事に心を震わせて生きているんだと感じました。勉強!ではなくて、豊かに感情が動いているものに衝き動かされているのだと思えて、引きつけられます。
竹雄は志尊淳さんに交代。主人(万太郎)に忠実な感じは少年時代と変わっていません。
万太郎、竹雄コンビの活躍が楽しみです。
※参照:朝ドラ辞典「交代」
(文:木俣冬)
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