「らんまん」幸運のシンボル四つ葉はなぜできるのか<第40回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第40回を紐解いていく。
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「らんまん」第40回レビュー
「見つけた」何を?
一生かける仕事を。
万太郎(神木隆之介)が見つけたものは、「出来立てかるやき」ではなく、目標でした。
それは、一生、全部かけて、日本中の草花の図鑑を作ること。
「わしの植物学! 大学も教授も関係ない」と興奮する万太郎。大学も教授も関係ないとは、権威や出世は関係なく、ただただ純粋に自分のやりたいことをやるということでしょう。さらに、誰もやったことのないことを開拓していくことです。
あっけにとられて見送った寿恵子(浜辺美波)でしたが、一生かけて何かを成し遂げようとする万太郎の姿は、「馬琴先生だ〜」とときめきます。
万太郎は、藤丸(前原瑞樹)と波多野(前原滉)と堀井丈之助(山脇辰哉)と4人で牛鍋をつつきながら、語り合います。
友達ができてよかったね万太郎、と思いますが、まさか万太郎がおごっているのではないかと言う気もして……。お金にものを言わせてはいけないという問題はここではさておきます。
「俺たちこそが最初のひとりなんだよね」と丈之助。才能ある若者は皆、前人未到の仕事を目指すのです。
丈之助は日本文学の改革を目指しています。西洋文学を意識し、日本の勧善懲悪ではない、もっと生身の人間を描こうと考えているのです。
「候 候 御座候」では「心の動きは書けるか!」と熱い。
早稲田大学演劇博物館のサイトには、”日本最初のシェイクスピア劇作品の翻訳は、1874年(明治7年)”とあります。その後、1909年(明治42年)、東大出身の坪内逍遙が『ハムレット』の翻訳を出版、1911年(明治44年)に帝国劇場で上演します。ちなみにそれを批判したのが夏目漱石でした。
坪内逍遥先生は、生涯かけてシェイクスピアを全訳し研究に勤しみました。彼も、一生、全部かけて、自分にしかできないことを成し遂げたのです。堀井丈之助には坪内逍遥先生のエッセンスが入っているかもしれません。
藤丸はきのこ、波多野は新種の仕組み、それぞれ研究したいことがあって、それを雑誌にしようと盛り上がります。青春群像です。
でも出版活動は、田邊教授(要潤)に許可を得ないと難しそう。独自の美学を持っている教授はどう思うか……。
田邊は自分がいいと思うものに確たる信念があり、それ以外は排除しようとしています。目下、音楽を日本の古いものから西洋の新しいものに替えようとしているようで。
植物標本も不完全なものはいらないと厳しいですが、万太郎は不完全なものでも「美しい」と主張。一瞬、空気がぴりっとなりますが、万太郎の書いた植物の一生を書いた図が気に入って「神が私に幸運を遣わしてくださった」と悦に入ります。
幸運のシンボルである四つ葉のクローバーなのに、ゴロゴロと不穏な雷の音が重なります。
新キャラ・高藤雅修(伊礼彼方)の存在も気になります。
四つ葉のクローバーは、人に踏まれそうなところでみつかりやすいと、以前、「チコちゃんに叱られる」で放送していました。
踏まれることで突然変異を起こして四つ葉が生まれるとか……。これって、万太郎が、植物は踏まれることで強くなる、踏まれることで種を広げることができると言っていたことにも通じます。踏まれてもただでは起きない。生命力の強さを物語っています。
ところで、田邊教授のもとに、お菓子を届けた寿恵子。そのお菓子は万太郎の描いた葉っぱの図からできているとは田邊は思ってもいないのでしょう。牡丹の葉っぱのみならず、丸いドクダミの葉っぱみたいなバージョンもありました。田邊がお菓子を見て、「美しい」と反応しても良かったのでは。
(文:木俣冬)
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