映画コラム

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2023年05月31日

『劇場版 Collar×Malice -deep cover-』原作の映画化を大成功に導いた「3つ」の鍵

『劇場版 Collar×Malice -deep cover-』原作の映画化を大成功に導いた「3つ」の鍵

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通称「カラマリ」として愛されている、オトメイトの大ヒットゲーム「Collar×Malice」を原作とした映画『劇場版 Collar×Malice -deep cover- 前編』が5月26日(金)に公開された。

原作で描かれた「X-Day事件」の裏側で起きた壮大な“if”ストーリーを前後編で描いた本作。お馴染みの豪華声優陣が演じるキャラクターと原作の世界観はそのままに、劇場版ならではの新キャラクターも追加され、アニメ映画としてのバージョンアップも楽しめるだろう。

本作を観るにあたり、筆者自身も原作発売当初からのカラマリファンのひとりとして劇場に足を運んだ。(新宿でA◯TAの大型パネルを見ては、都度アドニスを思い出してしまう)



私自身が鑑賞前に不安に思っていた点は、本作のような乙女ゲームのアニメ化は、脚本の恋愛要素のバランスやゲームの世界観とのチューニングも含めて、作品によっては事故にもなりやすい一面があるところだった。

しかし結論から言って、今回の劇場アニメ化は大成功だったように思う。今回は、その理由を3つの視点から語っていきたい。

※本記事は決定的なネタバレは避けていますが、一部ストーリーに触れているため未鑑賞の方はご注意ください。

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劇場版「カラマリ」は原作予習なしでも楽しめる?



『劇場版 Collar×Malice -deep cover- 前編』は、原作予習なしでも十分に楽しめるのか。答えは「イエス」だ。約50分という短い尺の中でも、初心者を置いていかない工夫ときっちりと後半に向けた導線が施されている本作は、初めてカラマリの世界へ足を踏み入れる人にも十分に優しい。

しかし、本作を観るにあたって一つ注意しておきたい点として、これから原作をプレイする予定がある方は、先に原作をプレイすることをおすすめする。

というのも、本作は「X-Day事件」の裏で起こったエピソードをアニメオリジナルの物語で描きながらも、ゲーム内の本筋である「X-Day事件」の首謀者の存在についても描かれているからだ。原作ゲーム版の「カラマリ」では「X-Day事件」の首謀者を追っていくミステリー要素を軸にストーリーが展開していくため、先に映画を見てしまうと犯人のネタバレを食らった状態でゲームを進めていくことになる。

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もちろん「それでも構わない」という方には全く問題ないのだが、順番を迷っている方がいれば先に原作をプレイした方が良いだろう。詳しくは後述するが、先に原作をプレイすることによって楽しめるポイントも増えてくる。

ちなみにすでに映画を観た原作ファンは、劇中に“あの人”が顔出しで登場する意外性にびっくりしたファンも多いのではないか。

『劇場版 Collar×Malice -deep cover-』に隠された3つの成功の鍵

1:『Collar×Malice』らしい『正義の在り方』に焦点を置いたシナリオ

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俺が今信じたいと思っているのは、お前の正義だから

『Collar×Malice』の魅力といえば、豪華声優陣が演じる最高のイケメンたちとの恋愛……はもちろんだが、各々の正義の在り方を問うシリアスで切ないシナリオがまず挙げられるだろう。

今回の『劇場版 Collar×Malice -deep cover- 前編』においても、その魅力は損なわれていない。主人公・星野市香の強い正義感と優しさ、そして愛らしさもそのままに、ご都合主義では解決できない人間のグレーな感情と裁きを描いていく。そんなラブコメ主体ではない、カラマリの“重さ”を感じさせるストーリー展開を動くアニメとしてギュッと凝縮したのが今回の劇場版であるように感じられた。

乙女ゲーム原作でありながら、正義と悪の定義が揺らいでしまいそうになるような不穏な空気感もしっかりアニメに引き継がれていたところは、カラマリの映画化成功の大きな理由だ。

2:映画ならではの新キャラクター

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『劇場版 Collar×Malice -deep cover- 前編』では、小西克幸演じる拾和ミツルが初登場。拾和は警視庁警官部の監察官で、柳愛時の警察官時代を知る人物でもある。拾和は、柳曰く「白黒はっきりした二局化思考」を持つ人物であり、父親が警視庁長官官房というキャリア組だ。先程の正義に絡む部分ではあるが、拾和にとっての正義の描かれ方もまた、本作の面白いところでもある。

また新キャラクターでありながら映画の鍵を握る人物として、原作ファンにも読めない展開を作り出しているのが、この拾和でもある。

さらには、拾和との掛け合わせによって光る、市香の物怖じしない芯の通った性格にも注目したい。警視庁警官部のいわゆる「偉い人」である拾和にも、市香は自分の想いをしっかりと伝え、事件の真相を追求しようとする。今回の劇場版で、市香の探偵事務所での振る舞いだけでなく、署での活躍も観られるところはファンにとっても嬉しいポイントだろう。

3:ゲーム内の演出の引き継ぎ

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劇場版のアニメ映画として、オリジナルの物語で展開されていく『劇場版 Collar×Malice -deep cover- 前編』は、原作ゲーム内の演出の引き継ぎもかなり多い。背景一つとっても、印象的な住宅街の三差路や新宿アイランドタワー前のLOVEオブジェがある道など、原作の聖地巡礼で親しまれている背景がアニメでもふんだんに使われていた。

また各キャラクターの印象的なスチルを思わせる描写や、お馴染みの小ネタ(柳が料理をしていたり、無類の猫好きの白石が猫雑誌を読んでいるなど)も丁寧に挟まれており、原作の世界観を壊すことなくアニメとして完成度の高い仕上がりになっていた。

さらにキズによる主題歌「人間×失格」も、原作のオープニングムービーや舞台「Collar×Malice」の主題歌として使用された、Plastic Treeの「サイレントノイズ」とどこかリンクするような雰囲気を併せ持っている。アニメとして独立しつつも原作の面影を残した演出に、毎秒ワクワクさせられるのが『劇場版 Collar×Malice -deep cover- 前編』なのだ。

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『劇場版 Collar×Malice -deep cover-』は、6月23日に後編の公開が控えている。カラマリワールドの魅力をふんだんに盛り込んだ前編を観て、後編での市香や推しの活躍を心待ちにしているファンも多いだろう。

“隠蔽”の意味を持つ“deep cover”という単語がタイトルに使用されている本作だが、いよいよ劇場版に隠された真実が後編で明らかになるのが今から楽しみだ。

(文:すなくじら)

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©IF・DF/劇場版 Collar×Malice 製作委員会

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