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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』最後に”老い”を描いた意義



「老い」をごまかすことなく「最後の物語」へと昇華させた

そのようにインディというキャラクターの本質は変わらないことを示しながらも、「老い」そのものを無視したりはしない、ということも本作の大きな特徴。オープニングの直後に老いた身体を映しているし、岩壁を登る場面などでは「老体に鞭打つ」苦しさを吐露しているし、前述した「時代に取り残されて孤独でいる」心情は全体的な物語にも大いに寄与しているからだ。


そのインディを演じるハリソン・フォードは、自らスタントもこなしている。普段から食生活に気を使う他、今回の役のために自転車で65キロ近く走ったり、毎日のウォーキングをこなしたりするなど、健康的な身体ではいるようだ。しかし、それでもやはり見た目では老いているし、かつての機敏な動きはできないように見える場面もあるのも事実だ。

しかし、その俳優およびキャラクターが老いた事実をごまかしたりはせず、むしろ老いた事実を「インディの最後の物語」として昇華させていることにこそ、本作の最大の感動がある

終盤の、ある意味では『クリスタル・スカルの王国』をも超えたトンデモな展開および、とある「選択」を迫られる場面に賛否両論はあるかもしれない。だが、個人的にはこのようなインディの「弱さ」は過去のシリーズでも少なからずあったと思えた。そして、彼が老いて孤独だからこそ、その弱さを今までよりもはっきりと見せてしまったのだと、切なくも納得はできたのだ。

その先に待ち受けていた結末はそれ自体が感動的であるし、長年シリーズを追ってきたファンであれば、もう涙が滝のように溢れてくるのではないだろうか。冒険活劇という範疇に収まらない、生きていれば誰も直面する「老いたことによる心の弱さ」と戦う、普遍的な物語が綴られているとも言えるだろう。

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なお、本作の監督を務めたジェームズ・マンゴールドは、2017年の『LOGAN/ローガン』でも、同じく年老いたかつてのヒーローの姿を哀愁たっぷりに描いていた。いぶし銀なカッコ良さと、哀愁たっぷりの姿、その両面を併せ持つ男の生き様を描くのに、これ以上の適任者はいないだろう。

「スーツに丸メガネ」の萌えを開拓したマッツ・ミケルセン

さらなる本作の魅力は、2006年の『007/カジノ・ロワイヤル』や2016年の『ドクター・ストレンジ』などでも悪役を演じてきたマッツ・ミケルセンだろう。


ただでさえ俳優部門における「イケオジ」の頂点に達している彼が、今回は「スーツ姿に丸メガネ」というさらなる萌えの開拓に成功しており、「あっ好き」とまんまと惚れた。丸メガネのキャラの総選挙企画があれば、きっと『すずめの戸締まり』の芹澤朋也と人気を二分するだろう。

しかも、本作のオープニングでは、VFXを駆使したことにより、ハリソン・フォードもマッツ・ミケルセンも、それぞれが少し若返った姿になっている。それがまた前述してきた「老い」の切なさを際立たせているわけだが、敵対する2人の「時を隔ての因縁」をも強固にしているとも言えるだろう。

その後の実年齢通りのマッツ・ミケルセンの姿はやっぱりイケオジで、やっていることが悪どいはずなのに超カッコ良く思えてくるのが良い意味で憎らしい。対するインディは、ヒーローと呼ぶにはあまりに欠点が多い、人間くさい「弱さ」を持つ人物というのが、また良い対比になっていた。その2人が、それぞれどのような結末を迎えるのかにも、ぜひ注目してほしい。

(文:ヒナタカ)

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