「ばらかもん」7話:半田(杉野遥亮)の“呪い”が上書きされる……つまらない字じゃない、素直な字だ
本記事では、第7話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。
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「ばらかもん」7話レビュー
人から言われた言葉は、良くも悪くも心に残る。とくに幼少期や、自身の至らなさを痛感しているタイミングなどに入ってきた言葉は、意思に反していつまでも巣食うもの。半田(杉野遥亮)にとってのそれは、八神館長(田中泯)から言われた「つまらない字だ」だった。ルールに則った、規則正しい、つまらない字。半田の書に対するその評価が、ずっとずっと、心を縛り付けていた。本編では描かれずとも、筆を持つたびに半田を悩ませ続けていたに違いない。
半田の父・清明(遠藤憲一)と母・えみ(長野里美)が五島にやってきた。休暇をとって息子の顔を見たい気持ちが大半だっただろうが、清明自身も島から力をもらい、書に反映してきた過去がある。懐かしい島の風を感じたくなったのかもしれない。
半田にとっても、なぜ父親が自分を島に寄越したのか、その理由を探っていた。親子揃ってなる(宮崎莉里沙)たちに書道の特別教室を開くことになった流れで、なんと半田親子が書道対決をすることに。図らずもその場で、半田にかけられた“呪い”が解かれることになる。
「親父は感情が顔に出ないぶん、書道で表現してると思うんです。だから、人の心を揺さぶる字が書けて。俺は一生追いつけないんだろうなって」……父・清明に対するジレンマを打ち明けていた半田。遠すぎる父の背中、越えようとするなんて10年早い、まだまだ期待には応えられない。「つまらない」と烙印を押された己の字ごと、半田はコンプレックスから逃れられないでいる。
そんな息子に対し、清明は言った。
「お前の字は本当に美しくて、規則正しい。そして、素直な字だ」
つまらない字なんかじゃない。教えを真摯に反映させた素直な字であり、努力と意地で人の心を打つ字だと、“呪い”を塗り替えてくれたのだ。
島にきたおかげで、半田は確実に変化している。東京では感じられない空気の心地よさと空の広さ、島民たちとの交流。それらを通して気持ちよく伸びやかに、柔らかく広がった半田の心が、書に反映される。
半田はずっと、なぜ父が自分をこの島に寄越したのかを気にしていた。きっと清明も、書道における暗黙の“こうあるべき”にがんじがらめになった心を、この島でたおやかに伸ばした。そんな過去を、息子にも追体験させたかったのではないだろうか。
「私は息子にとっての、生涯のライバルでいたい」……この言葉はきっと、息子の半田にとってはこれ以上ない“贈り物”だ。新しく塗り替えられた心で半田は、さらにもっと良い書を書くに違いない。
(文:北村有)
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