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【シルバーウィークに観たい】秋映画のおすすめ“5選”


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残暑がまだまだ厳しい一方で、少しずつ秋の気配を感じられる今。秋を「先取り」してみてみるのはいかがだろうか。

ここでは、秋という季節ならではのもの哀しさを含む風情、だからこその豊かな人間の感情の機微などを感じ取れる、シルバーウィークにおすすめの、配信で観られる映画を5作品紹介しよう。

1:『かがみの孤城』

©2022「かがみの孤城」製作委員会

辻村深月による同名小説をアニメ映画化した、7人の少年少女が交流する青春ファンタジー。主人公は不登校が続きフリースクールにも通えないままでいる中学1年生の女の子で、ほぼ1年間にわたっての孤城の中で「願いが叶う鍵」を探すミステリーと並行して、その心の内が変化していく繊細なドラマが綴られている。

劇中では秋の季節になってから、主人公がとある提案に乗り、そこで思いもよらぬ出来事に傷つくものの、その後に大切なことを知っていく。その場面のみならず、作品のメッセージは学校に通えなくなった現実の中高生に向けられているので、新学期が始まって間もない今、多かれ少なかれ憂鬱な気持ちを抱えた彼ら彼女に届いてほしいと心から願う。

事実、原恵一監督は2023年6月のアヌシー国際アニメーション映画祭にて、昨年に514人の子どもが自ら命を絶ったことを告げ、「私たち日本人全員が、その責任を負っています。もちろん、私もです。私には彼らを止める術が分かりません」と語りつつ、「私は映画の力を信じています。映画には人の人生を変える力があります。この映画はフィクションで、ファンタジーですが、多くの事実も含まれています」などと力強い言葉を掲げている。

その映画の力、その中にある事実が何であるかは、ラスト近くの言葉を聞けば、はっきりとわかるはずだ。

【インタビュー】『かがみの孤城』原恵一監督インタビュー「居場所がないのは当たり前」と教えてあげたい

▶︎『かがみの孤城』を観る

2:『ある男』

©2022「ある男」製作委員会

平野啓一郎による同名小説を映画化した、事故で亡くなった夫が「別人」だった理由を探るミステリードラマ。そこから浮かび上がってくるのは、「自分以外の誰かになりたい」という、ある意味では普遍的な願望。別人になりすました夫だけでなく、在日韓国人三世である弁護士が人種差別的な言動に敏感なっている様からも、その願望の切実さを思い知らされる。

その夫が亡くなったのは、木々から紅葉さえも落ちている寒々しい季節であり、だからこその彼に「もう会えない」寂しさがより際立つ。出会った時から優しく、不器用さも含めて愛おしい夫との生活が、かけがえのないものだと思えるからこそ、後半で明かされる「秘密」が胸に迫るようにもなっている。

妻夫木聡と安藤サクラが素晴らしいのはもちろん、窪田正孝に「彼はどれほどの領域に行くのか」と思うほどに圧倒された映画でもあった。「幸せになって!」と心から思える親しみやすさと優しさがあると同時に、底知れない絶望をも感じさせる表現から、もはや窪田正孝の「集大成」かつ「別次元」ですらあると思えた。『蜜蜂と遠雷』や『愚行録』の石川慶監督の堅実な演出による、「人生の深淵」を堪能してほしい。

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▶︎『ある男』を観る

3:『リトル・フォレスト 夏・秋』

(C) 「リトル・フォレスト」製作委員会

五十嵐大介の同名漫画を映画化した、続く「冬・春」編と合わせて4部作で構成された、田畑を耕し自給自足に近い生活をしている女性を主人公とした作品。ストーリー性はごく最小限で、食事を中心とした「面倒だが生きるために必要な作業を次々とこなしていく日常」が心地良く思える。美しい田舎の風景と壮麗な音楽の組み合わせはヒーリング効果も抜群なので、「浸る」ように観るのがいいだろう。

夏編では湿度が高く“蒸し風呂”とまで言われる盆地での苦労を描きつつも美味しそうなパンやジャム作りの過程を見せるので心から食べたくなるし、続く秋編ではアケビやクルミ、冬が近づいて来ると青菜とほうれん草など、それぞれの季節の食材も登場する。まさに、四季折々の生活そのものを擬似体験できる内容なのだ。

主人公の「自分でやってみないと気が済まない」性格も気持ちがいい。自給自足に近い田舎暮らし、またはロハスな生活に憧れている人にとって、それが決して楽なものではないことも思い知らされるだろうが、同時に目指すべき姿としても映るだろう。

同じく田舎の生活を苦労を綴った『おおかみこどもの雨と雪』が好きな人も気にいるかも知れない。なお、森淳一監督は『見えない目撃者』という本作とは正反対のサイコサスペンスも見事に取り上げる作家であるので、ぜひその名前を覚えていただきたい。

▶︎『リトル・フォレスト 夏・秋』を観る

4:『秋刀魚の味』

©1962/2013 松竹株式会社

『晩春』や『東京物語』などの小津安二郎監督の遺作であり、妻に先立たれた父親と、婚期を迎えた娘との関係性を主軸に綴ったドラマだ。友人が娘の縁談話を持ってきた時には乗り気でなかったとしても、元恩師が婚期を逃した娘と2人でわびしく暮らしていることを聞くとつい焦り出したりする、そんな父親の言動がどこか可笑しくも切ない。

飲み屋で会話をするシーンが多く、それぞれの服装も含めやはり秋の物語だと思わされるし、その季節だからこその寂しさが、「いつかは結婚をして離れ離れになったほうがいい、だけどそれだけではない」複雑な気持ちを抱いている、父と娘それぞれの気持ちにもシンクロしているように思えるのだ。

「女性は結婚することが幸せ」という当時の一般的な世相を描いた作品であると同時に、やはり「それ以外の価値観」も当然としてあることが、父と娘だけでなく、それ以外の家族の姿からもうかがい知ることができる。

「結局人生は一人だ」「今のままでいいの」といった、やはり寂しく思えるセリフが耳に残るが、その表向きの言葉と裏腹の登場人物の「本当の気持ち」を想像しながら観てみるのがいいだろう。

▶︎『秋刀魚の味』を観る

5:『遠い空の向こうに』



元NASAの技術者ホーマー・H・ヒッカム・Jr.による自伝小説の映画化作品で、つまりは「実話」。男は誰もが炭坑夫になる未来を決められたような場所で、宇宙の夢に魅せられた4人の高校生が、ロケットの製作に夢中になる物語が綴られている。不朽の名作と呼ばれることも多く、老舗サイト「みんなのシネマレビュー」では全ての映画の中で28位という高順位だ。

原題の「October Sky」は、劇中で高校生が結成するチーム「Rocket Boys」のアナグラムでもあり、もちろん劇中の季節は10月。主人公の高校生が心を奪われたのは、実際に1957年10月4日に打ち上げられ、夜空に美しい弧を描いたソ連の人工衛星スプートニクだった。

父親との対立を筆頭に辛い出来事も起こるものの、変わり者の悪友たちと2度とはない青春を過ごしつつ、ひたすらに夢を追い求める、楽しくて爽やかな青春を体験できる内容として万人におすすめできる。高校生役のジェイク・ギレンホールの若々しい姿と、その繊細な演技も大きな見所だ。

▶︎『遠い空の向こうに』を観る

ちなみに、『遠い空の向こうに』と、9月15日(金)から劇場で上映中の『グランツーリスモ』とは、将来を勝手に決めつけるような父親と反発する青年が夢を見つけて追い求める様、王道の青春物語でありつつも、「それだけでない」ドラマも展開すること、そして「それまでの常識を打ち破る実話」であることも一致している。



2023年は映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』と『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』とゲームを原作とした映画が非常に高く評価された年でもあるが、この『グランツーリスモ』はそのゲームのプレイヤーを主人公にした映画としても革新的だ。

これまでハードなSF映画を手がけてきたニール・ブロムカンプ監督らしい、ケレン味のある演出も実に「効いて」いる。ぜひ、『遠い空の向こうに』と合わせて観てみてほしい。

(文:ヒナタカ)

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