「ブギウギ」中越典子の思わせぶりな暗さが気になる<第2回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第2回を紐解いていく。
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義理と人情
愉快でにぎやかな主題歌ではじまる「ブキウギ」。いきなりわあっと登場人物がたくさん出てきますが、じょじょに整理されていく親切設計になっています。まず、「アホのおっちゃん」と呼ばれる謎の人物(岡部たかし)。いつも、お金があったのに失くしてしまったと明らかな嘘をついてただ風呂にありついています。
疑問に思う鈴子(澤井梨丘)に、ツヤ(水川あさみ)は彼に対して”義理と人情”があるのだと説明します。
そこで、花田家が大阪で銭湯を営んでいる歴史が紐解かれます。以前は香川にいて、大阪にやってきて、梅吉(柳葉敏郎)の発案で銭湯をはじめた。初日にお客さんが来るか心配だったところ、アホのおっちゃんが最初のお客さんになってくれた。
現代の感覚だと、お金のない薄汚れた感じの人物が一番風呂っていうのは、逆効果な感じもしますが、明治、大正の頃はおおらかだったのでしょう。おっちゃんもただ風呂なだけでなく看板を作ってお返しをしています。
貧乏神が福の神に転じるみたいな寓話は昔からよくあります。「ブキウギ」の世界は、古き良き感覚の残った世界観なのだと思います。
だから、水川あさみさんが大阪出身で大阪弁がナチュラルで心地よいと思ったら、香川出身設定かい!と思っても、15年の間にすっかり大阪弁が馴染んだんだなとおおらかな心で受け入れたい。
”義理と人情”を学んだ鈴子は、さっそく級友のタイ子(清水胡桃)に義理と人情を返そうとします。鈴子が転校してきたときにタイ子のおかげで楽になったことを義理と考え、タイ子がひそかに好きな男子・松岡との仲を取り持とうとするのです。
そこで、タイ子の家庭の事情が明かされます。お母さんは妾で、お父さんがいつも家にいるわけではなく、たまに来る。こういう家庭環境もこの時代には珍しくありませんでした。
鈴子はぐいぐいとおせっかいしますが、タイ子は自分の出生のこともあって引き気味。
【朝ドラ辞典2.0:妾(めかけ)】明治、大正時代を舞台にした朝ドラに登場する属性。「澪つくし」のヒロイン(沢口靖子)は妾の子設定で、父や本妻との独特の関わりが描かれた。が、最近は妾を持つことにネガティブな印象があるため描写を避け、「あさが来た」では、ヒロイン(波瑠)の夫(玉木宏)のモデルには妾がいたが、ドラマでは強い意思で持たないことを選択する流れになった。「らんまん」の寿恵子(浜辺美波)の母(牧瀬里穂)も彦根藩の家臣の妾設定で、寿恵子にもお金持ちの家の妾になる話が持ち込まれるエピソードがあった。
アホのおっちゃんにも何か事情があると梅吉は慮り、タイ子の家庭にも事情があります。そして、ツヤにも何かありそうなのが、香川での出来事。
気に病むことのあるタイ子と比べて、やなことがなにもない鈴子。それはお母ちゃんのおかげであると無邪気に言う鈴子に、ツヤはすこし複雑な顔をします。
鈴子が赤ちゃんのときのことをツヤが思い出していると、その背後に西野キヌ(中越典子)がいて、ものすごーく暗い顔をしていました。このキヌという人物は何者なのかーーこの謎もまたゆくゆく明かされることでしょう。
(文:木俣冬)
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