「ブギウギ」スズ子が歌っていた唄は<第22回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第22回を紐解いていく。
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心がズキズキする展開
実の母・キヌ(中越典子)と話をしたスズ子(趣里)。実の父の形見の時計をもらってツヤ(水川あさみ)の実家へととぼとぼと戻ります。キヌの話を頭のなかで反芻し、河原で、キヌとツヤと3人で遊んでいるときのことを思い出したのか、妄想したのか。「おかあちゃんも来てー」と呼ぶスズ子はキヌとツヤ、どちらを「おかあちゃん」と認識していたのでしょうか。
実際、河原にたどりつくと、子どもたちが水遊びをしていて、スズ子は一緒に川に入って(なぜか足袋は脱がないのは足を守るためでしょうか)、ばしゃばしゃとしているとひっくり返って、横たわり、仰向けになります。
「胸が、おなかが、体中が、熱うて、張り裂けそうやった」
熱い体とこころを川に浸し、鎮めるスズ子を俯瞰的に撮った印象的なカットです。
ただ泣くよりもスズ子のやりきれなさが伝わってきした。
ツヤの家につくと、六郎(黒崎煌代)が心配して出迎え、びしょ濡れのスズ子を甲斐甲斐しく拭きます。このときの六郎は、いつもの頼りない感じではなく、頼りがいありそうでした。
「大丈夫や、バラバラになんかせえへん」と抱きしめます。
バラバラにならないようにぎゅっと抱え込むという行為はエモい。
ただ、思わず「お母ちゃん」と呼ぶスズ子に「六郎や」と言ってしまうところは、いつのもすこしとぼけた六郎でした。六郎が、状況をわかってるようなわかってないような感じだから、救われるのかも。
そののち、スズ子は、六郎に、今回、判明した出生の秘密をふたりだけの秘密にしておこうと言い、ふたりだけの秘密ができたことを六郎は喜びますが、これまでのことを思うと、秘密を守っておけるのか、ちょっとあやしい。
帰ってきたスズ子と六郎を見てもらい泣きしているトシ(三林京子)が、手ぬぐいで顔を隠すのがかわいらしかった。ベテランのかたにかわいらしいというのも失礼な気もしますが、なんかかわいくて。
第21回では「食べながら待つしかない」と名言を語ったトシ、帰って来たスズ子と食事を共にしながら、ツヤはスズ子をみんな自分のものにしたかったのだと説明します。
それと、本当の子供のほうが大切と正直に言うところも。でも、それは逆説的で、だからこそ、ツヤにとっては
スズ子が本当の子供に思えているのだという意味であることも。含蓄あります。
ツヤはいつしかスズ子をほんとうの子どもと思って愛情が深くなっていたのかと思うと、つらい話であります。キヌがスズ子を引き取るといつ言い出すか気が気ではなかったでしょう。だんだん実家に寄り付かなくなって、このまま何もなかったことになれば……と思ったのか。育てられないキヌの代わりに預かったとはいえ、ある種、子供を奪ったことにもなるので、その罪悪感はかなりのものでしょう。ずっとすっきりしないまま抱えてきたツヤの気持ちを思うと、ほんとうに胸がズキズキします。
スズ子も絶対的にほんとうの母と信じていたツヤが他人だったと知って、かなりショック。大阪に戻ってきたときの、ツヤとスズ子が微妙にギクシャクしていて、でも、すぐに何もなかったように振る舞う。心にズキズキきます。
思いがけない体験をした休暇が終わり、スズ子は稽古場で「アラビアの唄」を歌いながらお掃除。この歌は「わろてんか」(17年度後期)でリリコ(広瀬アリス)も歌っていました。1927年(昭和2年)に発表されたジャズ風歌謡曲。この曲のカップリング曲が「私の青空」だったそうです。
曲名と同じタイトルの朝ドラがありました。「私の青空」(00年度前期)は現代が舞台のシングルマザーの物語でした。スズ子のモデルである笠置シヅ子さんもシングルマザー。「アラビアの唄」のほうを選曲したことは意味深であります。また、「私の青空」は家族の歌なので、いまのスズ子にはちょっとつらく、「アラビアの唄」のほうがさみしい気持ちに寄り添う曲だったのかもしれません。
(文:木俣冬)
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