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2023年12月13日

「大奥」第21話(最終話):この上ない喜びも、出口の見えぬ悲しみも。大奥はこの世界の写し鏡だった

「大奥」第21話(最終話):この上ない喜びも、出口の見えぬ悲しみも。大奥はこの世界の写し鏡だった


NHKドラマ10「大奥」のシーズン2が2023年10月3日に放送開始となった。よしながふみの同名漫画を原作に、3代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、若い男子のみが感染する奇病により男女の立場が逆転した江戸パラレルワールドを描く本作。シーズン2の後半「幕末編」では、古川雄大、愛希れいか、瀧内公美、岸井ゆきの、志田彩良、福士蒼汰らが出演する。

本記事では、第21話(最終話)をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「大奥」第21話(最終話)レビュー

NHKドラマ10『大奥』がついに幕を閉じた。途轍もない喪失感が胸に押し寄せてくるが、まずは第21話を振り返っていきたい。

内憂外患を抱える日本の行く末を憂いながら、生涯を閉じた家茂(志田彩良)。彼女の願いは聞き入れられず、養子の亀之助ではなく慶喜(大東駿介)が将軍職を引き継いだ。政権は朝廷に返上した徳川だったが、処遇の悪さに業を煮やした慶喜は新政府軍との戦いに身を投じる。しかし、朝敵とみなされたくない慶喜はあろうことか尻尾を巻いて江戸で逃げ帰ってくるのだった。

家定(愛希れいか)が生前、胤篤(福士蒼汰)に語っていたように、慶喜はやはり将軍の器ではなかったのだろう。彼が守りたいのは所詮、己の地位や名誉だけで、国の民や家臣を思う心はない。そもそも薩摩が倒幕派に傾いたのも、慶喜の島津久光に対する罵倒がきっかけだった。

もはや争いを止めるためには慶喜の首を差し出す他ない状況の中、陸軍総裁に任ぜられた勝海舟(味方良介)は西郷隆盛(原田泰造)との和平交渉に臨む。そこで名乗りを挙げるのが、胤篤と和宮(岸井ゆきの)だ。二人は家定と家茂が愛した江戸の町を守るために話し合いの場に自ら赴く。それでもなお、「日本を女が統治する恥ずべき国にした徳川の当主」として慶喜の首を打ち取ろうとする西郷の覚悟は揺るがない。そんな西郷に和宮はこう強く訴える。

「この江戸は、列強にも劣らへんというこの町は、あんたが恥ずかしい言うた女将軍のお膝元で、その町の女らが育ててきたんやで。日々の営みの中で。別に歴史なんてどうでもええ。あんたらのええように歪めたらええ。けど江戸の町には傷一つ、つけんといて!」

西郷の、“女が統治する恥ずべき国”という認識は変わらなかった。しかし、外国に男子の数が減っていることを悟られぬよう、家光(堀田真由)の時代から歴代の将軍たちが男名を用いてきたことが悲しいかな、功を奏す。つまり、そのまま男が国を統治してきたと歴史を書き換えればいいと。大奥の“まこと”の姿を闇に葬り去る代わりに、和宮たちは江戸の町が火の海になるのを回避したのだ。

大奥はもともと、春日局(斉藤由貴)が徳川の権威を保つため、将軍の子を産み育てる場所として創設した。戦乱の世を生きてきた春日局は平和な世を守り繋げるにはそうするしか方法はないと考えていたのである。だが、慶喜に代わり、国の民や家臣を守ったのは今や幕府と対立する薩摩と朝廷からやってきた胤篤と和宮。徳川の血筋を引かない2人を突き動かしたのは、生前の家定や家茂の姿だ。

家定も家茂も生涯、子を持つことはなかった。つまり、彼女たちが生きていたという証拠は目に見える形では残されていない。けれど、彼女たちを愛していた者たちがいる。彼女たちが国の民や家臣のために心血を注いできた日々を知っている者たちがいる。

大奥最後の夜、瀧山は『没日録』に「今日より、大奥はここで過ごしたる各人の心を住処とす」と記した。その『没日録』も新政府軍に燃やされてしまったが、胤篤はサンフランシスコへと向かう船の中で日本初の女子留学生の一人・津田梅子に大奥の“まこと”の姿を語る。のちに女子教育の発展に寄与した彼女もまた、もうこの世にいない。しかし、その思いは現代まで受け継がれ、いまや男性と同じように教育を受けられる私たちが存在する。それを希望と言わずして何と言おう。

本作で描かれた大奥は、私たちが生きる世界の写し鏡だった。瀧山が言ったように“出口の見えぬ悲しみ”も、“この上ない喜び”もここにはある。だが、彼らのように暗闇の中でも希望を手繰り寄せたい。翼を羽ばたかせ、大空を飛び回る姿に誰かが心を救われることもきっとあるはずだから。

(文:苫とり子)

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