続・朝ドライフ

SPECIAL

2023年12月19日

「ブギウギ」愛助にとってスズ子はお母ちゃん代わりなんじゃ疑惑が湧いてくる<第57回>

「ブギウギ」愛助にとってスズ子はお母ちゃん代わりなんじゃ疑惑が湧いてくる<第57回>


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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第57回を紐解いていく。

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楽団に祝福されて

果物でも人間でも上等なものほど傷みやすいのです。母があんたを上等な人間に育てたんです。
ここ泣いて笑うとこでっせ。
(トミ)

愛助(水上恒司)に、トミ(小雪)から手紙が届きます。そこに書いてあったのがコレ↑。

トミ、なかなか、ユニークな人のようです。

「あんたはそのままでええのです」という手紙の内容から、自由にすればいいというニュアンスを読み取った愛助は、スズ子(趣里)とつきあう決意を固めます。

でもそれを聞いた坂口(黒田)は社長に殺される、と縮み上がります。

トミは、愛助が学徒出陣に出られない劣等感や後ろめたさに関して励ましただけで、交際のことはこれっぽっちも考えてないのでしょう。

この大いなる勘違いの場面。笑うとこでっせ。

勇気をもらった愛助は、スズ子が巡業に出発しようとしているとき、事務所に訊ねて来て、楽団のみんなが見ているなかで告白します。そして、スズ子も、交際の申し込みを「どうぞよろしうお願いします」と受け入れます。

スズ子は、羽鳥(草彅剛)の家を訪ね、彼と麻里(市川実和子)にも背中を押されていたのです。羽鳥はいつでもスズ子を縛る鎖を外して自由にしてくれる人であります。

奇しくも、愛助には母が、スズ子には羽鳥が、自分の思うまま自由であれ、と応援されていたのです。

交際をすることにしたスズ子と愛助の前で、ガレージの扉が開いて、楽団がファンファーレで囃し立てます。が、これでめでたしめでたしとはなりそうにありません。続きを見守りたいと思いますが、ここで気になったのは、愛助はマザコンで、結局、スズ子はトミの代わりなのではないか疑惑です。

トミが愛助を溺愛しているのは十分わかります。愛助は彼女のお膳立てで東京で暢気に暮らしていますし、母の手紙に勇気づけられてもいます。そのことについては、この年になって母親の手紙に励まされているのは恥ずかしい、「親に頼ったへなちょこ」と気にはしているようではありますが……。

そしてスズ子。彼女が愛助の告白に答えるとき、「部屋はきれいにしてはるやろか ちゃんとごはんは食べてるやろか」と心配していたと言うのです。なんだかおかんみたいです。そもそも9つも上だし(趣里さんだとそう見えないんですが)。

愛助は、病弱で劣等感をいだきながら生きてきて、励ましてくれるのが母だったけれど、スズ子の歌や踊りにも励まされてファンになって。東京で母がいない分、スズ子に依存してしまったのではないかなあと。

この女性に甘える感じ、ツヤ(水川あさみ)に甘える梅吉(柳葉敏郎)と近いものがあります。
足立紳さんの持つ、男女の関係描写のカードが少なすぎる。でも、そのしょうもないパターンの面白さというジャンルなんだと思いますし、朝ドラで、男性の甘えたい願望視点がこうも前面に出ているのは、極めて画期的といえるでしょう。

小夜(富田望生)にたびたびの激しいツッコみをさせて、彼女に視点が行くようになって、この物語に隠された女性に対する視点の偏りがうまいことボカされているという、実に巧妙なところは要注意であります。でもこれも個性なので、筆者は嫌いじゃありません。

(文:木俣冬)

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