続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年01月18日

「ブギウギ」スズ子が大阪弁でタナケンの心を動かした<第75回>

「ブギウギ」スズ子が大阪弁でタナケンの心を動かした<第75回>


「木俣冬の続・朝ドライフ」連載一覧はこちら

2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。

「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第75回を紐解いていく。

[※本記事は広告リンクを含みます。]

▶︎「ブギウギ」画像を全て見る

「ブギウギ」をU-NEXTで視聴する

素直で正直が一番

小夜(富田望生)サム(ジャック・ケネディ)スズ子(趣里)を訪ねて来ます。

サムは「お邪魔します」を「おジマします」と間違えています。そこは誰もツッコまず、スルーされています。

スズ子が小夜のどこが好きかと問い詰めたときの答えはこれ。

「小夜は素直です。正直です。チョコレート食べたい。焼きとん美味しい。私も元気なります。小夜は私の太陽です」

これが日本人同士の会話だったらふざけてるのかと思いそうですが、サムが外国人で「おジマします」とか言ってしまう人だから、ボキャブラリーが少なく、たどたどしいのだということで済む気がします。

小夜は、自分らしく生きるためにサムと新天地に向かうことを決めました。
親に捨てられ、奉公先で苦労し、天涯孤独の身でした。そんな彼女に希望を与えたのがスズ子の歌で、この人のそばにいたら、救われるとすがったところ、スズ子が優しかったのでそばに置いてもらえました。

付き人としてスズ子の世話をしながら、背中を見て、芸や振る舞いを学べば、もしかして歌手になれたかもしれません。スズ子は梅丸少女歌劇団で先輩たちのお世話もしていました。レッスンもありましたが、裏の仕事を手伝うことがスズ子の学びになったのです。

小夜は学ぶという発想はなく、ただそのままスズ子と友達のようになってしまった。スズ子が上下関係にこだわらないからでしょう。でもこのままだと、自分というものがないままになってしまうことに気づけたのが、サムとの出会いでした。

サムと一緒だと小夜らしくいられるのでしょう。チョコレートも焼きとんも食べたいものを食べて愉快に生きていける。英語の勉強もきっと、歌より楽しかったのでしょう。

どこで何をしていても、自分らしく、素直に、正直に。
スズ子のほうも、芝居の稽古で、開き直って、自分らしさ――大阪弁で芝居をはじめます。原節子のようなお上品さはスズ子らしくない。いつもの大阪弁でがなったら、ついにタナケン(生瀬勝久)が反応しました。

「僕を誰だと思っているんだい。喜劇王タナケンだよ。幕が上がりゃあ舞台は役者のものだ。玄人も素人も関係ない。好きにやればいい。何をやっても僕が全部受けてあげるよ」(タナケン)

タナケンは、おもしろいことが起これば、それをいくらでも受けて、舞台を盛り上げることができるのです。

そこからスズ子は楽しくなっていきます。やっぱり、羽鳥(草彅剛)と同じパターンです。素直に正直にスズ子らしく振る舞えば、天才クリエーターたちは刺激を受けて、力を発揮するのです。

スズ子の才能を見出し、伸ばしたということでもありますが、羽鳥やタナケンは自分の作品をおもしろくするためにスズ子みたいな規格外の存在を欲しているわけです。ウィンウィンってことですね。

相手の芝居を受けていくらでもおもしろくできるというタナケン。演じている生瀬さんもそういう俳優のような気がします。例えば、「トリック」。生瀬さんは、主演の仲間由紀恵さんの個性をもり立てて、よりおもしろくしていました。そして御本人の役が主役になったスピンオフが生まれるまでに人気が高まったのです。生瀬勝久の実力です。

(文:木俣冬)

“朝ドラあるある”満載!「朝ドラ辞典」を見る


木俣冬著「ネットと朝ドラ」、現在好評発売中

「ブギウギ」をU-NEXTで視聴する

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

(C)NHK

RANKING

SPONSORD

PICK UP!