「ブギウギ」結婚の条件は歌手を辞めること どうするスズ子<第77回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第77回を紐解いていく。
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我慢するのはいつも女?
愛助(水上恒司)の母・トミ(小雪)がいよいよスズ子(趣里)と愛助の結婚を認めてくれることに……と思ったがぬか喜び。それには条件がありました。結婚を機に歌手を引退することで……。
矢崎(三浦誠己)に急にそんなことを伝えられても、はいそうします、とは即答できず。
スズ子は戸惑い、スズ子のファンの愛助はそんなこと許容できずムキになります。
ムキになるといえば、スズ子に相談された羽鳥(草彅剛)の剣幕の激しさ。歌手を辞めるなんて絶対認められないと、ふだん使っていない大阪弁で大騒ぎ。が、それは彼女のためというより自分のためであると、妻・麻里(市川実和子)が手厳しく批判します。
羽鳥は草彅剛さんのお力で”笑う鬼”というキャラを、鬼の部分をあまり気にならないようにソフトにくるんでいるので、あんまり気にならないですが、麻里が言うように、存外自分本位です。自分というか音楽本位。
すばらしい音楽のために生きている羽鳥は、価値観が一般人とはちょっと違うものの、麻里の視点によって、調子に乗らないように済んでいます。そこがいい。ともすれば、天才芸術家は一般人の気持ちがわからず、勝手に振る舞いがち。
天才芸術家に限ったことでなく、朝ドラのヒロインにも無双感によって時々、嫌われてしまうことがあります。気づきを与える人がそばにいることで、バランスが取れるのです。
スズ子も、楽団を作っても、表面的には彼らのために自分が働くようなところは見せず、愛助に夢中で楽団ほったらかしみたいなことや、香川に戻った父やお世話になった下宿夫妻のことを思い出さず、視聴者に批判されそうなところもあります。でも、趣里さんがあまりグイグイ演じず、どちらかといえば健気さが滲むので、行き過ぎずに済んでいます。
さて、麻里は、トミの条件を聞いて「どうして残酷な選択を強いられないといけないの?」と、トミだって同じ女性なのに……と疑問をいだきます。
「我慢するのはいっつも女でしょう おかしいわよそんなの」とも。
トミは朝ドラ「わろてんか」(2017年度後期)の主人公てん(葵わかな)と同じ人物をモデルにしたキャラなので、彼女の人生をおさらいしますと、吉本興業をモデルにした大阪の興行会社の御曹司(松坂桃李)と結婚し、彼が早逝したため、女手ひとつで会社を切り盛りし、大きくします。彼女の場合、はなっから夫の夢についていく感じでした。
どんなときでも笑うんやという信条で、苦しいときもニコニコして、会社の人たちのお母さんになっていたてんのことを思うと、仕事を辞める選択を強いられてもそれを受け入れるだろうと想像できます。ただ、てんとトミ、雰囲気がぜんぜん違いますが。
坂口(黒田有)が、村山興業が家族的な会社で、トミは厳しいけれど、受けなくてしょげてる芸人にみつ豆を食べさせてくれるようなあたたかみもある人なのだと言っていました。てんだったら、みつ豆差し出してくれそう。トミもきつそうですが、村山という会社を第一で、会社を守るために厳しいだけだと思います。
ここで「みつ豆」をチョイスした脚本がいい。みつ豆、なんだかほっこりします。あんみつではないところもいい。いかつい坂口の口から「みつ豆」とワードがぽそっと出るのがまた微笑ましい。
(文:木俣冬)
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