©2024「ハイキュー!!」製作委員会 ©古舘春一/集英社
©2024「ハイキュー!!」製作委員会 ©古舘春一/集英社

映画コラム

REGULAR

2024年02月20日

映画『ハイキュー!! 』原作・アニメを知らずとも最高に面白かった「5つ」の理由

映画『ハイキュー!! 』原作・アニメを知らずとも最高に面白かった「5つ」の理由

▶︎『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』画像を全て見る

『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』が公開からわずか3日間で興行収入22.3億円、 観客動員数152万人という超大ヒットスタートとなった。このオープニング成績は、『ONE PIECE FILM RED』の22.5億円(初日2日間)に次ぐ歴代5位の大記録となる。

原作漫画は全45巻の累計発行部数が6000万部を突破する大人気作。しかも、テレビアニメ(第4期第2クール)が放送終了したのは2020年末で、今回はその「続き」。さらに、原作漫画で屈指の人気エピソードのやっとの映画化だ。

熱心なファンの母数がとても大きく、かつテレビアニメの放送終了から3年と2ヶ月以上のスパンがあり、「ものすごく見たかったものを待ちに待ってやっと見られる」からこその、超ロケットスタートといえるだろう。

[※本記事は広告リンクを含みます。]

前置き:6歳児「すっごく待っていたから泣いた」



事実、一緒に見た(原作漫画を読んでおらず)テレビアニメを全て見ていたという6歳の甥っ子は、上映終了後に「すっごく待ってたから、最後のほう泣いちゃったよ〜!」と涙ぐみながら言っていた。

対して、筆者は『ハイキュー!!』の原作もテレビアニメもまったく見たことがなく、事前に入れていた情報は「バレーボールが題材のアニメ」「今回のサブタイトルの“ゴミ捨て場”の由来は、対決する高校の名前に“カラス”と“ネコ”が入っているから」だけだった。


しかし……それでも、まったく問題なかった。ものすごく面白かった!こうした人気アニメの劇場版は「一見さんお断り」の場合もあるが、今作は明らかに『ハイキュー!!』を知らない人でも楽しめる作りになっていたのだ。

しかも、筆者のように「スポーツにあまり思い入れのない(苦手な)インドア系」こそが感情移入できる理由もあった。しかも、『THE FIRST SLAM DUNK』との共通項も多く、そちらが好きな人にもおすすめできる。決定的なネタバレにならない範囲で、それらの理由を記していこう。

なお、エンドロール後にも重要なシーンがあるので、最後まで席に座っておいてほしい。

1:試合のみを「回想を交えて描く構成」


この『劇場版ハイキュー!』の「ひとつの試合の最初から最後までを描く」「試合の合間に回想を挟む」物語構成は『THE FIRST SLAM DUNK』にとても近い。そして、試合の重要な瞬間での回想で、そのキャラクターの「想い」や「これまで」は、今回の映画だけでも存分に伝わってきたのだ。

加えて、本作の上映時間は85分とタイト。これはバレー試合時間の1試合3セットに合わせていることが「粋」だと評価される一方で、一部の原作ファンからは(原作からの省略が多数あるため)「短すぎる」「テレビアニメで時間をかけて描いて欲しかった」と否定的な意見もあがっている。


しかし、筆者個人は英断だったと思う。なぜなら、後述もする「劇場のスクリーンで作画も音響も大迫力の試合を」「ロジックのある攻防戦」を短い時間で集中して楽しめたからだ。「回想がごく短い」ことも、テンポを削ぎすぎない、劇場で見る映画としてのバランスとして的確だったのではないか。

加えて、そうした映画としての構成や物語は別にして「選手のことを知らなくてもスポーツの試合は楽しめる」という、当たり前といえば当たり前のことも改めてわかった。


考えてみれば、普段テレビで観ているスポーツの試合も、選手の詳細な情報を知らないまま楽しんでいる人が大多数ではないか。だからこそ、『劇場版ハイキュー!』も『THE FIRST SLAM DUNK』も、「何も知らずに見ても楽しめる(しかも映画だけでも選手のだいたいのことはわかる)」映画だと断言できる。

2:2Dのアニメでのスポーツの表現の頂点


選手たちの「筋肉の動き」や「重力」を感じさせる作画は圧巻だ。現実でも「きっとこうなのだろう」と思えるリアリティーを担保しつつ、実写では実現不可能なケレン味のある演出も加わり、制作会社Production I.Gの力と、アニメーターの執念を思い知ったのだ。

『THE FIRST SLAM DUNK』の3DCGだからこその「空間」を利用したアニメ表現も圧巻だったが、この『劇場版ハイキュー!』は2Dのアニメ。


もちろん、どちらかが良くてどちらかが悪いというわけでなく、「アニメでスポーツの試合を描く」表現として、それぞれで「これ以上のない」頂点を見届けたような感動があった。

さらに感動したのは「とある視点」で「コートを3次元的」に見せる様だった。2Dのアニメのはずなのに、「コートにいる」感覚を擬似体験できることにも驚かされた。

3:ロジックのある攻防戦


今回の映画だけを見ただけでも、この『ハイキュー!!』が「ロジックのある攻防戦」を描く作品であることがよくわかった。

現実離れした「必殺技」ではなく、反射神経だけに頼るのでもなく、相手の選手の動きを分析し、予測し、戦略の上でボールを叩き込む。その面白さが伝わってきたのだ。

それは、後述する「孤爪研磨」のキャラクター性にも、強くリンクしていた。

4:「スポーツに情熱を持てない」キャラが実質的な主人公


筆者は前述した通り、『ハイキュー!!』という作品をまったく知らない。だけど、すぐに感情移入してしまったキャラクターがいる。今回の主人公といってもいいであろう「孤爪研磨」だ。

彼はバレーというスポーツ、いやそれ以外のこと、例えばゲームでさえも「暇つぶし」と答えていたりする、「情熱を持てない」タイプのキャラクターだ。加えて、相手チームにいる「日向翔陽」に対して、容赦のない、あるいは陰湿と言ってもいい作戦を実行したりもする。


だがこの作品では、その研磨を単なるイヤなやつで終わらせはしなかった。彼がこの試合で、この物語で得たもの、それがどれほどのものなのか、この映画だけを見た筆者でも大いに伝わったのだ。

個人的なことを書いて恐縮だが、筆者も研磨と同じくインドア派で、かつスポーツ自体があまり好きではない。現実のスポーツの話題の盛り上がりにも冷めたところがあるし、スポーツを描く作品そのものに少し抵抗があるくらいだ。


だが、その個人的なスタンスが研磨と部分的に一致していたからこその、他のスポーツを描いた作品では得たことがなかった、とてつもない感動が待ち受けていたのだ。それは、スポーツが苦手な自分でも「このこと」をどこかで感じたことがあるからだった。

5:「無音」で観客が一体になる


本作は、試合中に床を蹴る、ボールを打つ、それぞれの「音」も大迫力であり、それだけで音響の優れた映画館で見る価値が大いにある。

そして、『THE FIRST SLAM DUNK』でもそうだったが、映画館で映画を見る意義は「静寂」を体験することにもあるとも、改めて思い知った。「無音」になるその瞬間、観客の心が一体になるような感覚を、劇場で確かに得ていたのだから。


もうこれ以上言うことはない。『ハイキュー!!』をまったく知らなくても、スポーツが苦手なインドア派でも、これだけ楽しめる理由があるのだから、迷わずに見に行ってほしい。

もちろん、原作やアニメを通ってから映画を見れば、さらなる感動があるだろう。そのさらなる感動を得たファンの方たちが、うらやましくて仕方がない。

(文:ヒナタカ)

▶︎「ハイキュー!!」ゴミ捨て場の決戦を原作漫画でチェックする

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

©2024「ハイキュー!!」製作委員会 ©古舘春一/集英社

RANKING

SPONSORD

PICK UP!