「虎に翼」寅子は知る「結婚って罠だよ」<第8回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第8回を紐解いていく。

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妻の財産は夫のもの

寅子(伊藤沙莉)よね(土居志央梨)を追いかけて裁判所にやって来ました。よねは裁判の傍聴に来たようです。

裁判傍聴が趣味の、心優しいお節介おじさん・笹山(田中要次)いわく、今日はつまらなそうな民事裁判しか残っていないとのことでした。

寅子も傍聴してみます。はじめての裁判所。はじめての裁判傍聴。それはもうわくわくでしょう。

そこで行われていたのは離婚裁判。

東田甚太(遠藤雄弥)と妻・峰子(安川まり)が争っています。東田の暴力が原因で離婚を申し立てているのです。いや、離婚裁判は勝訴して離婚は成立しているはずでしたが、東田が控訴して、もめているようです。

峰子はほかに、嫁入りの際に持参した物品の数々を取り戻したいと訴えています。むしろこっちが重要らしい。

田中裁判長栗原英雄さん、東田側の弁護士は長谷川忍さん(シソンヌ)、峰子の弁護士はシソンヌじろうさんが演じています。

遠藤雄弥さんは、現在再放送中の「ちゅらさん」で和也という、出番は少ないけれど重要な役を演じているのですが、ここではあからさまに嫌な感じの役です。

寅子は東田の態度で「あの男ならやりかねない」と思い込みます。

峰子は母の形見を返してほしいだけなのに、それが認められないなんて、令和の観点だと理不尽だしありえないですが、この時代は揉めてしまうのです。

裁判のあと、よねは「女は常に虐げられて馬鹿にされている。その怒りを忘れないために私はここに来ている」と寅子に語ります。

ものすごい時代だったのだなあ。

とても興味深い裁判でしたが、笹山がつまんなそうな民事裁判しか残っていないと言っていたのは女性の権利を主張するものが彼にとってはつまらないことなのかもしれません。それはそれでまた残念。

家に帰った寅子が優三(仲野太賀)に聞くと、民法第801条1項に夫は妻の財産を管理するとあると教わります。第2話で寅子が優三の授業をのぞいて聞いた「結婚した女性が無能力者」ということの最たる例がこの裁判でした。

「筋が通らない」と寅子は憤慨します。

「いまの日本で結婚することはそういうこと」「結婚って罠だよ」

結婚って罠。パワーワードです。確かに、財産が夫のものになってしまうというのは結婚によって女性の権利が益々奪われるということですね。

早く憲法改正されてほしいと思うのも無理はありません。

翌日、女子部で、改正が遠のいたことに、生徒たちががっかりしていると「法廷に正解はない」と穂高(小林薫)が言い出します。

寅子とよねが傍聴したケースについて「君たちでどんな正解があるか考えてみないか」と提案され、寅子たちはやる気になります。

男爵令嬢の桜川涼子(桜井ユキ)と弁護士夫人の大庭梅子(平岩紙)、朝鮮からの留学生・崔香淑(ハ・ヨンス)もキリッとなります。よねも。やる気が刺激されたのでしょう。

実際の裁判の事例をもとに、学校でシミュレーションしてみるというなんだか面白そうな展開です。ドラマ仕立ての情報バラエティー的な印象もあります。弁護士がじろうさんだからちょっとコントのようにも思え、親しみがわきました。

法律の話なので堅苦しくなりがちかなと心配もありますが、こういう形式だと誰もが見やすいかもしれません。

それでもなお理屈が語られ堅苦しさもぬぐえないなか、息抜きは直道(上川周作)の存在。1人マイペースで、いつも独自の解釈で「わかってんだよー」「違う」と自己満足に浸っています。伊藤沙莉さんが会見で、上川さんの芝居を賞賛していましたが、確かにそう。

(文:木俣冬)

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