「虎に翼」狭い法曹界。穂高や花岡に再会して気まずい寅子<第48回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第48回を紐解いていく。
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スンっとなってしまう
神保教授(木場勝己)に民法の改正案についてどう思うか、意見を求められ、ぎくりとなる寅子(伊藤沙莉)。鮮やかに意見を述べるかと思いきや、スンっとして、無難な回答でお茶を濁そうとしてしまいます。
寅子の口調の歯切れの悪さを良いことに、神保は自分の意見を肯定するように誘導していきます。神保が、日本の古き良き伝統を守りたいと思う根拠には、法に詳しい人たちばかりではないし、いきなりいろいろなルールが変わったら戸惑うだろうということがあります。
「まず未来ではなく いま目の前の苦しむ人を救いたいと思う」とか、日本らしい民主化もあるのではないか、とか、言ってることは正論なのです。それをライアン(沢村一樹)は「保守のお手本のような人」とやや嫌味混じり。
寅子は新しい憲法には感動したものの、民法改正によって戸惑う人もいることは、花江(森田望智)のことを思い浮かべるともっともと思えて、何も言えなくなってしまったようです。
自分とは違う考えや立場の人のことを思って素直な意見が言えなくなっている寅子のことを、小橋(名村辰)は以前は「はて?」「はて?」言っていたのに、大人になったと褒めます。寅子のモノマネが似ているから余計ににくらしい。
桂場(松山ケンイチ)はあからさまにむっすりして何も言いません。
寅子と神保の会話を目をぎらっとさせにやにや見ていたライアン(沢村一樹)は爽やかな笑顔で、意見交流会を行うとその場を取り繕います。
三者三様。それぞれの受け止め方があり、立場があり、考え方があるのです。
だから、法だっていろんな考え方を加味したうえで決めなくてはなりません。
その後も様々な意見を聞きながら改正案作成を進め、停電するまで働いて(これはなんだったのか、尾野真千子さんに解説してほしかった)……ある日、寅子はばったり穂高(小林薫)と出くわします。彼も民法改正案の委員でした。
穂高こそ寅子が弁護士を辞めたきっかけです。雨だれ石を穿つということわざを引き合いに出産と子育てを優先しろと言われたものの、寅子は未来の捨て石になりたくない(大意)と反論しました。それがいまや、寅子が、未来を見据えて徐々に、みたいなことを言うようになっています。
父と兄、夫が亡くなったと聞いた穂高の驚きと、「それは残念だ」という悼みの表情。小林薫さんのこの演技といい、食えない偉い人役の木場勝己さんの、穏やかそうでものすごく圧のある感じ。名優たちの芝居が見られる幸福に浸る朝でした。
法曹界は狭い。あっちこっちで喧嘩を売っているといづらくなってしまう。司法省につとめはじめたものの、寅子はどうも調子が出ない様子です。
民法改正についての婦人代議士たちの集まりに寅子は参加し、立花(伊勢志摩)をはじめとして、自分たちが先頭に立って社会を変えようとしているご婦人たちがたくさんいるのを目の当たりにしても、自分は一度逃げた立場だからと同等に感じることができません。
狭い世界で、息巻いていた寅子が、大海に出たら、大小様々な敵もいれば、自分よりも頑張っている優秀な人たちがいることや、気まずい関係になっていると仕事がやりづらいとか、ブランクがあると弱気になってしまうとか、いろいろなことで心が縛られてしまっているようです。これは、法の世界に限ったことではなく、社会に出ると誰もが少なからず経験することでしょう。
なぜ女性たちが「スン」となっていたか、いまの寅子は痛いほど実感しています。
アメリカ人から、お子さんにとチョコをもらっても、花江の言葉が気になってしまう。
英語も流暢には話せないのも、もどかしいことでしょう。
社会の変化に、自分がついていけていないというか、居場所がみつけられない落ち着かないときってほんとうにつらい。
肩を落とし、優三(仲野太賀)の幻を見てしまう寅子。そのとき、法曹界の狭さをさらに実感することが――。
職場恋愛的なことをして別れたあと、また顔を合わせて気まずくなってしまうこともあるのです。
なんと、花岡(岩田剛典)まで現れて――。
花岡、どこか覇気がないようで、気になります。
さて。立花役の伊勢志摩さん、「あまちゃん」ではサブカル好きの花巻さん役でした。身体を駆使したビジュアルインパクトの強いキャラを作り出しつつ知性的なところを残しどこか上品さのあるすてきな俳優さんなので、女性の地位向上のために先頭に立っているらしき立花役もお似合いです。
(文:木俣冬)
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