「虎に翼」花岡死去は残念だけど轟とよねは生きていた。<第51回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第51回を紐解いていく。
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轟の本心
餓死、という言葉が重い。花岡(岩田剛典)がいっさいの闇物資を拒否して栄養失調で餓死したという報を、法曹界のみならず世間は重く受け止めます。当時の人の気持ちはわかりようもありませんが、令和のいまだとますますショックです。日本で餓死はあまり一般的ではないうえ、法律を守ったため、というのがまた稀有ではありませんか。戦争の影響で餓死もありえるし、法を守って人が死ぬこともあると思うと複雑な思いがうずまきます。
寅子(伊藤沙莉)のショックも大きい。
第11週「女子と小人は養い難し?」(演出:梛川善郎)
重たいはじまりでしたが、花岡の報道が掲載された新聞を闇市で読んでいたのが、轟(戸塚純貴)で、轟は生きていたのだと少し元気な気持ちになり、さらに、よね(土居志央梨)と再会する流れで、花岡ショックが薄れました。考え抜かれた構成です。でもカフェーのマスターは空襲で亡くなっていました(涙)。
しかも、よねと轟が手を組んで弁護士事務所を立ち上げるとなると胸が熱くなります。
このふたりはなんだか純粋で透明感があって、見ていて気持ちがいいです。
驚いたのは、轟が花岡に惚れていたとよねが気づいていて、指摘することです。
「惚れる」という言葉にもいろいろなニュアンスがありますが、カフェーで惚れた腫れたを見てきたからというので、そのニュアンスの方向性はなんとなくわかります。
よねに言われて、轟はこれまでの感情を吐露するのですが、当人も明確な自覚はなかったのかもしれません。ここでは、強がらず、素直に花岡の死を悲しむことが大事ということが描かれているようにも思います。強がりたい気持ちと悲しい本音と、感情の糸を1本にしないで複数を絡み合わせようと試みる作家のガッツを感じます。
個人的には、轟は「摩利と新吾」の新吾みたいだなあと思って見ていたので、納得なのです。ここに至るまでにもう少し描写を積み重ねてほしかったようにも思いますが、戸塚純貴さんのエネルギーをためにためてからの瞬発力ある演技が、がっつりフォローしていました。戸塚さん、ほんとすばらしい。そろそろ大河ドラマ出演もありなのではとひそかに期待しています。
「摩利と新吾」は明治末期から大正にかけて、旧制高校の同級生たちの青春を描いた、木原敏江さんの名作少女漫画です。
よねと轟が弁護士事務所を立ち上げようと再起を誓うのは、いつもみんなでランチしていたベンチのある広場。向かいにはまだ、花岡が独身時代お昼に食べていたパンを売ってる露店も残っていて(商売できてるんでしょうか)、なんとも郷愁を感じます。
今週のサムネイル写真がこのベンチ。広報さんのセンスに感謝です。
よねと轟が去ったあとに、寅子が現れます。傷痍軍人に小銭をカンパし、ベンチに座り、
泣きながらお弁当を食べます。やっぱり闇米なのでしょうか。それでも食べて生き延びないといけないという意思でしょうか。残された者たちががんばらないといけない。
寅子が傷痍軍人にカンパしたのは花岡の代わりと思ったのかもしれません。
ハーモニカ奏者さんが扮している白衣がまぶしい傷痍軍人、第10週から連続のご出演で、ハーモニカ演奏を聞かせてくれています。
(文:木俣冬)
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