「虎に翼」滝藤賢一が多岐川役で滝行のたきづくし<第52回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第52回を紐解いていく。
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「湿っぽい話も挫折話もつまらん」
昭和23年10月、最高裁判所が発足してから1年半、またもGHQのお達しで家庭裁判所が作られることになり、寅子(伊藤沙莉)は家庭裁判所設立準備室に異動を命じられます。昭和24年から新たな少年法が施行されることになっていて、少年は家庭裁判所の審判に付するとされているため、わずか2ヶ月で家庭裁判所を作らないとならないのです。
いずこもプロジェクトというのはバッタバタで進行するのですね。
寅子「いま私の力が必要だと」
桂場「どこまで自信過剰なんだ」
こんなやりとりのあと、寅子は、人事課長に昇格した桂場(松山ケンイチ)に、うまくいったら裁判官にしてほしいと駆け引きします。寅子、ちゃっかりしている。ドラマのなかでは民法改正も寅子の活躍が多分にあったからというように描かれているので、寅子はこの1年、優秀な働きをしていたのでありましょう。
家庭裁判所設立準備室は、戦後の混乱期、各省庁が間借りしていた法曹会館の屋上に急づくりした掘っ建て小屋。そこでは、準備室の室長・多岐川幸四郎(滝藤賢一)がスルメを焼いていました。
この感じ、民放の刑事もの連ドラの初回のようであります。主人公は、警察のはみ出し部署に配属になり、そこは地下とか屋上とか別館とか不便な場所で、クセの強い人物たちがいて戸惑うというもの。新たな部署設立に奮闘するリーガルものの新番組はじまった、というような気持ちで見られそうです。
多岐川のことを「あの人ならやり遂げてくれるでしょう」と秘書課長に昇進した久藤(沢村一樹)が初代最高裁判所長官・星朋彦(平田満)に言っていたので、こう見えてたぶん敏腕なのでしょう。冒頭、滝行もしていて、強靭な心身の持ち主とお見受けします。
準備室にはいつもの小橋(名村辰)と、なつかしの稲垣(松川尚瑠輝)がいました。
朝ドラでは新章ごとに登場人物が入れ替わってしまいがちですが、狭い法曹界が舞台のため、法学部の同級生がいつまでも一緒なのが「虎に翼」の良さでもあります。はやく、轟(戸塚純貴)やよね(土居志央梨)たちとも再会してほしい。
だが、多岐川はなかなかクセの強い人物でした。「湿っぽい話も挫折話もつまらん」と切り捨て、相手を知るには酒だと昼間っから仕事場で飲もうとし、亡くなった花岡(岩田剛典)の死に方を「バカだ」と言い、口論になると「君も正しい 俺も正しい」「分かり合えないことはあきらめる」とこれまたばっさり。でも、正論だし、口は悪いけれど、さっぱりしていて気持ちのいい人なんじゃないかと思います。
家庭裁判所を作るには、少年審判所と家事審判所を合併させないとなりませんが、そんなに簡単にはいきません。家事審判所所長・浦野(野添義弘)と少年裁判所所長の壇(ドンペイ)がいがみ合っています。野添さんとドンペイさんもクセの強い人物を演じていて、おもしろそう、いや、前途多難そうであります。
「湿っぽい話も挫折話もつまらん」という多岐川のセリフは、そう思って今回の朝ドラを作っているような気もします。湿っぽい話や挫折話はかなりの速度で進行してしまうようになっているので。花岡の話も寅子やあの小橋すら心に傷を受けたようではありますが、その点に集中しないで、あっという間に死後、1年が経過しています。戦争も3分で終わっていましたし。
ただ、桂場が読んでいた新聞に、花岡の妻が絵の個展を開いているとありました。これからも少しずつ花岡のことが描かれていくのではないでしょうか。
記事には「花岡の親友・植田孝太郎氏」とありました。そこには知らない花岡の顔があります。でもきっとほんとうの親友は轟のはず。
(文:木俣冬)
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