「虎に翼」寅子、刃物で斬りかかられる<第73回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第73回を紐解いていく。
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優未は点数偽装だった
これまで黙っていた感情を爆発させた花江(森田望智)に、呆然となる寅子(伊藤沙莉)。その晩、庭にひとりで佇んでいると、直明(三山凌輝)が現れます。
「私の何が悪かったのかしら」と問うと、
「些細な『ん?』みたいなズレ」があって、「気付いたときにはとんでもないおかしなことになっていた」と明かします。「些細な『ん?』みたいなズレ」は寅子における「はて?」でしょう。
そして語ったのは、優未(竹澤咲子)のこと。
あのテストの84点は31点を偽装していたという衝撃の事実が明かされます。
34点を84点に修正していた説がSNSであがって賑わっていましたが、31点だったとは。
寅子はもしかして、ずるに気づいていて、わざと素っ気なく100点を目指せと言ったのかもと筆者は想像していたのですが、寅子はまったく気づいていなかったのです。褒めないし、偽装にも気づかない。つまり優未に関心がないということです。
その晩、優未は花江親子といっしょに寝ています。これもなあ……。
翌朝、寅子は気まずいからか早く起きて出勤しようとすると、花江も起きていました。なんとなくお互い気まずいまま、家裁へ――。
その日は、例の、妻が不倫した福田夫婦の調停でしたが、妻・瞳(美山加恋)が来なかったため、地方裁判所案件になってしまいました。
別日、竹もとでお茶をして、家にお団子のお土産を買って帰ろうとします。なにか買って帰らずにはいられないところはよかったけれど、いままで買って帰ったことはなかったのだろうか。優未を竹もとに連れてきたことはなかったのだろうか。
そこに、この間、取材で話をした司法修習生の吉永(川久保晴)と玉木(平体まひろ)がおしるこを食べに来て、本音をしゃべっているのを寅子は聞いてしまいます。
取材のときはあんなに寅子を持ち上げていたけれど、内心は、家裁に行ったら出世できないと思っていました。がーん。
聞かれているとは知らず、「短絡的」「ただほえればいいものじゃない」とばっさり。がーん。
竹もとが寅子の行きつけ、かつ、友人の梅子(平岩紙)がいる店だと知らなかったようで、迂闊な吉永さんと玉木さん。
梅子がそっと引き戸を締め、寅子に忠告。梅子は取材のとき、吉永たちが内心、寅子のことをよく思っていないことに気づいていました。でも梅子はこれしか術はなかったのか…。寅子が先に出たらバレちゃうから先に出られなくなってしまった感じです。
とぼとぼと家裁に戻ると、瞳が訪ねてきていて、調停の日は体調が悪く、いま住んでいるところには電話もないから連絡できなかったと、そして、裁判しなくてはいけなくなったと愚痴ります(瞳さん、月経で体調が悪かったのかもと想像)。こういうのって、当日、誰かが連絡しないものなのでしょうか。
寅子はあくまでも冷静に、「私は女性の味方ではありません」「困っている人に手を差し伸べたい」と言うと、瞳は逆上し「私は困ってる。困ってるの!」「そうやって恵まれた場所からえらそうに」と隠し持っていた刃物で斬りつけてきて……。
主人公が襲われるのは「あさが来た」(15年度後期)以来でしょうか。事業がうまくいっているあさ(波留)を恨んだ人物(ラサール石井)が刺すのです(第119回)。あさはほんとうに刺されて入院しますが、寅子は未遂で済みました。「あさが来た」もちょうど、娘との関係が悪くなっているときで、寅子と状況が重なります。弱り目に祟り目というやつです。
ショックで帰宅すると、みんなが楽しそうにカルタをしていて(道男〈和田庵〉までいる)、寅子は優未が生まれたばかりのころ、優三(仲野太賀)と三人で過ごした時間を思い出して泣いてしまいます(このときの劇伴が、優三がいたときよくかかっていた英語の歌のインストゥルメンタル)。
カルタの「塵も積もれば山となる」が、ひとつひとつの不満が山となったように思わせます。
それにしても刃物を突き出されたらこわい。「純情きらり」のヒロインの子供時代を演じていた美山加恋さんは迫力の演技です。舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」で嘆きのマートルを演じていたときも全身全霊の熱演で目が離せなかったです。
(文:木俣冬)
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