眞栄田郷敦&WurtSインタビュー 「音楽は作品のイメージを左右する」
あることをきっかけに絵を描く楽しさに目覚めた主人公・矢口八虎。そんな八虎を中心に、美術大学受験予備校や入学試験での苦悩と葛藤、そして美術を学んでいく苦しみと楽しさを描いた青春群像劇だ。
今回、主人公の八虎を演じる眞栄田郷敦、主題歌を担当するWurtSに話を聞いた。
初対面のふたり。印象は……。
▶︎本記事の画像を全て見る――今日、初めてお会いされたとのこと。お互いの印象はいかがですか?
眞栄田郷敦(以下、眞栄田):曲調がすごくオシャレだし、プロフィールからも、オシャレでイケイケな感じなのかな、と思っていたんですけど(笑)。すごく柔らかい人で安心しています。
WurtS:よく言われます(笑)
――お会いされる前は、少し緊張されたりするんですか?
眞栄田:緊張はなかったですけど、どんな人なのか全く想像がつかなかったんですよね。どんな人なのかな、今日のやりやすさが変わってくるなあ、と。やりやすくてよかったです(笑)。
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――WurtSさんはいかがですか?
WurtS:僕は一方的に作品を観ていたので、本物に会えたな、というファンとしての言葉しか……(笑)。お会いできてよかったです。
――完成した作品を観られての感想はいかがですか?
眞栄田:どうでしたか?
WurtS:そうですね。僕自身、『ブルーピリオド』という作品の原作を知っていてすごく楽しみにしていたんですけど、実写映画化して、より原作の世界観が広がったな、と思います。それがすごく心にぐっときました。1人のファンとして嬉しかったですね。
眞栄田:映画の全体のテンポもかなり主人公に寄り添って調整されていて、攻めているな、と。それも後半はやっぱり効いてきますし。エネルギーやパワーがもらえる作品になってるんじゃないかなと思います。
――客観的に観られて刺さったな、だとか、印象的な部分はありますか?
眞栄田:「自分の一番好きなことに人生の一番のウェイトを置く。当たり前のことじゃないですか」。この言葉が八虎自身も刺さると思うんですけど、原作でも芝居していても、この言葉ってわかっているようで実際に考えてみると難しいことでもあるんですよね。でもすごく魅力的なことだなって、考えさせられるセリフだったので印象的ですね。
WurtS:僕は音楽を作る人なので、音についてですね。僕自身も高校生のときに美術部だったので、絵を描く空間の音を劇場で聞いていると、自分も1人のキャラクターとしてその空間に入ってるような感覚になれたのが印象的でした。
音作りでこだわった部分は?
▶︎本記事の画像を全て見る――WurtSさんは今回の『NOISE』は作品のどういうところからインスピレーションを受けて、どういった楽曲にしようと思われて製作されたんですか?
WurtS:個人的に作品から葛藤を感じていて。『NOISE』という楽曲のアイディアは、寝ているときに、夢の中で1人で走りながら「まだか、まだか」と思っていたんです。きっと、何かを成し遂げたいという自分の中の葛藤や成長の表れなんじゃないかな、と感じていて。その夢と自分の気持ちの部分を作品と照らし合わせたときにリンクする部分があったので、葛藤と成長をテーマに曲を書きました。
――音作りで特にこだわった部分、意識したことはありますか。
WurtS:僕の楽曲はあまり間奏がないんですけれど、今回の作品に関してはいつもより入れています。葛藤や成長がひとつのテーマだったので、間奏から最後のサビに向かって進んでいく感じが葛藤の中から成長に向かう瞬間じゃないかな、と。
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――眞栄田さんはこの曲に関してはどういう印象を抱かれましたか。
眞栄田:さっきおっしゃっていたように葛藤と、好きなことだったり、決めたことに向かっていくエネルギーを感じる曲でしたね。曲調もエネルギーをもらえるものなので観終わったときの全体の映画の印象もすごく出てる曲になってるな、と予告を観ていても感じていました。
あとは言葉のチョイスがすごくおもしろいな、と思っていて。何を思われて書かれたのか、頭の中のイメージをもう少し聞いてみたいですね。
WurtS:サビの「まだか」という部分は、楽曲の一番メインになる部分ですね。
「まだか」は自分の中で葛藤でもあるし、希望というか。僕は音楽を作る身なので、音楽が降ってくる瞬間も「まだか」と思いますし、ゴールに向かって進んでいるけど、まだ到達できなくてそのゴールに向かって「まだか」って言ってる。ふたつの意味があったりするのかな、と思って書いていました。
壁にぶつかったら「やるしかない」
▶︎本記事の画像を全て見る――『ブルーピリオド』は表現者たちの物語だとも思うんですが、おふたりが表現する上で大切にされていることをお伺いしたいです。
眞栄田:僕が今やっているお芝居の世界は、やっぱり1人でできるものではありません。いろんなプロたちが関わってできるものなので、そういう意味ではまずはその人たちと同じ目線に立てるような準備をしてくることを大事にしつつ、あとは柔軟性ですかね。現場の空気や、相手、その場のすべてを感じながら柔軟に対応できることを今の段階では大切にしています。
WurtS:日常を大切にしようということが、テーマとしてあります。音楽を作ることを仕事にするとなると、当たり前の部分が実は違ったりとか、わりと音楽関係の世界に偏ったりするんですよね。日常の中に溶け込んで、日常のちょっとした発見だとか、いろんな人が生きている中で感じる、共感する部分を大切にしようというのはあります。
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――表現をしていく中で壁にぶつかったりしたときはどうされているんでしょう?
眞栄田:やるしかない、じゃないですかね。
それしかない気もしますし、あとはそれこそ日常というか、視野を広げてみるようにしています。
WurtS:煮詰まってきたら、散歩に行ったりだとか。多分散歩に行くということも、日常の発見をすることに繋がると思うので、もっと自然体になって考えるみたいなところを大切にしていますね。
映画と音楽は「ニコイチ」
▶︎本記事の画像を全て見る――音楽が入ると、全く作品の雰囲気というのが変わってくると思います。おふたりは、映画における音楽の力をどのように考えていらっしゃいますか?
眞栄田:絶対にニコイチだと思いますね。父の口癖が「映画と音楽は切っても切り離せない」だったんですけど、本当にニコイチだと思うし、印象が全く変わってくると思うんですよね。
さっき、YouTubeを見ていたら「殺人のシーンで『Love so Sweet』を流したら恋愛ものに見える」という話があったんですけど、確かに、と思って。本当にその作品のイメージを左右するものになってくると思います。
主題歌はそれこそ予告で使われるし、エンディングの締めとして使われることが多いと思うんですけど、映画全体の雰囲気やテイストを決めるのかなと思います。
WurtS:映像もそうなんですけど音楽も絶対一緒になきゃダメなものなんじゃないかな、と僕も思っています。
映画が好きなのでいろんな作品を観るんですけど、眞栄田さんがおっしゃっていたように音楽だけでイメージがまったく違ったり、伝わってくる印象も変わってくると思います。
やっぱり視覚と聴覚って人間にとっても情報として捉える中で、一番大きなところだと思うんです。人と会ったときに、最初に顔を見て、そのあと声を聞いて、やっとその人の性格を知るので、音も大事ですね。
(撮影=Marco Perboni/取材・文=ふくだりょうこ)
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©山口つばさ/講談社 ©2024 映画「ブルーピリオド」製作委員会