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2022年11月09日

<エルピス—希望、あるいは災い—>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<エルピス—希望、あるいは災い—>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

長澤まさみ主演の“月10”ドラマ「エルピス—希望、あるいは災い—」が2022年10月24日放送スタート。

本作は長澤演じるスキャンダルで落ち目となったアナウンサーと若手ディレクターらが連続殺人事件の冤罪疑惑を追いながら、“自分の価値”を取り戻していく社会派エンターテイメント。共演は鈴木亮平、眞栄田郷敦ら。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・最終話ストーリー&レビュー

・「エルピス—希望、あるいは災い—」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー


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大洋テレビのアナウンサー・浅川恵那(長澤まさみ)は、かつてゴールデンタイムのニュース番組でサブキャスターを務め、人気、実力ともに兼ね備えた女子アナだったが、週刊誌に路上キスを撮られて番組を降板。現在は、社内で“制作者の墓場”とやゆされる深夜の情報番組『フライデーボンボン』でコーナーMCを担当している。そんなある日、番組で芸能ニュースを担当する新米ディレクターの岸本拓朗(眞栄田郷敦)に呼び止められた恵那は、ある連続殺人事件の犯人とされる死刑囚が、実は冤罪かもしれないと相談される。

両親が弁護士という裕福な家庭で育った拓朗は、持ち前のルックスも手伝って、仕事の実力とは裏腹に自己評価が高く、空気が読めない男。とある理由で報道、ましてや冤罪事件とはもう関わりたくないと思っている恵那の気持ちなどお構いなしに、事件の真相を追うために力を貸してほしいと頭を下げる。しかし、拓朗がそこまで躍起になるのには、ある事情があって…。

拓朗によれば、冤罪疑惑はある有力筋から得た情報だという。だが、かつて自分が報道したこともある事件だけに、にわかには信じられない恵那。そのうえ事件が起きたのは10年近くも前で、犯人とされた男の死刑もすでに確定している。恵那は、すでに風化した事件を掘り起こすことは得策ではないと一蹴するが、それでも拓朗は懲りずに、新入社員時代の指導担当で報道局のエース記者・斎藤正一(鈴木亮平)を頼る。そして、事件当時の話を一緒に聞きに行こうと無邪気に恵那を誘うが…。

第1話のレビュー

2016年から企画が進んでいた「エルピス—希望、あるいは災い—」。連続テレビ小説「カーネーション」や「今ここにある危機とぼくの好感度について」(以下、いまぼく)など、いわゆる“社会派ドラマ”と呼ばれる作品を多く世に送り出してきた脚本家・渡辺あやが、初めて民放ドラマに乗り出す。

あらゆる障壁と戦いながら、数年かけて企画をやりとりしてきた佐野亜裕美プロデューサーとは、当初ラブコメを作る想定で話が進んでいたそうだ。しかし、盛り上がるのは政治の話ばかり。「いっそ社会派をやったほうがお互い情熱をもって完走できるんじゃないか」(「CINEMAS+MAGAZINE」より)と思うに至り、書き上げられたのが本作である。

舞台はテレビ局。異様に自己肯定感が高く、自身をエリートだと信じて疑わないプライドだらけの若手ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)は、どこか「いまぼく」の真(松坂桃李)を彷彿とさせる。ちょっとやそっとじゃ拭えないコンプレックスを拗らせていそうなあたり、もっとも今後の変化が楽しみなキャラクターだ。

物語は、彼が落ち目の女子アナウンサー・浅川恵那(長澤まさみ)に“とある冤罪事件”を持ち込むところから、大きく始動する。

少女連続殺人事件の犯人として逮捕され、死刑が確定している松本良夫。彼は冤罪であり、真犯人は別にいるという。その真相究明を手伝ってほしい、というのが岸本の依頼だった。

実はこの岸本、自身が担当する深夜バラエティ番組「フライデー・ボンボン」に出演中の女性タレントを口説いてしまい、その音声データをヘアメイクの大山さくら(三浦透子)に買われてしまったのだ。音声をばら撒かない代わりに「ちょっと手伝ってほしい」と持ちかけられた案件が、件の冤罪疑惑だったのである。

ディレクターとしての未来を死守するため、報道番組の経験がある恵那を頼ったり、報道番組に掛け合ったり、通るはずのない企画書を練ったり……。自己保身のために、人はここまでできるのだろうか? と思えるほど、岸本の必死さは半ば滑稽に映った。

その様子と反するように、と言えば気の毒だが、面倒ごとを持ち込まれた側である恵那の心境は、少しずつ変化していく。

同じく報道畑出身である、政治部・官邸キャップの斎藤正一(鈴木亮平)との“路チュー”スキャンダルにより、ニュース番組から深夜バラエティ番組へ飛ばされた恵那。彼女のメンタルは少々深刻気味にやられていて、頻繁に嘔吐を繰りかえすシーンが出てくる。

嘔吐しては、水を飲む。その繰りかえし。しつこいようにも思えてくる描写は、何かの暗示と考えるほうが自然である。せっかく作った企画書を無下に突きかえされた岸本が、恵那に対し弱音を吐く終盤のシーンにて、その暗示を解き明かすヒントとなる台詞が出てくる。

「おかしいものは、おかしいじゃん」

「おかしいと思うものを、飲み込んじゃダメなんだよ」

「私はもう、飲み込めない、これ以上」

そのあと彼女は、この連続殺人事件の真相究明に、本格的に手を貸すことを宣言する。おかしいと思うものは、違和感を覚えるものは、もう飲み込まない。嘔吐したあとに水を飲むシーンには、彼女の悲痛な叫びが反映されていると感じる。

恵那が息も絶え絶えに声を荒げたように、きっと誰もがもう「分かりたくありません!」と叫びたい。覚えた違和感をそのままにしておきたくない。なかったことにして、流したくない。

テレビ局の裏側、報道現場の背景、政治の闇……。さまざまな「触れてはいけないもの」を真っ向からテーマとして据える制作陣の胆力と勇気に、受け手である私たちも心して臨まねばならないだろう。

岸本がこれからどんな変化を遂げるのか。もちろんその点にも興味は尽きないが、恵那の心境についても無視できない。

いくら岸本からの懸命な訴えを聞いたからといって、彼女がこのネタに本腰を入れる理由には足らないだろう。また、新たに山中で見つかった遺体は、かねてより行方不明と報道され続けていた少女のものだった。恵那は、だいぶ序盤からこの少女にまつわる報道を気にかけていたように見えるが……今後の展開において、重要な伏線となるだろうか?

組織が大きくなればなるほど、目上の人間に“忖度”をするのが自然となりつつある世の中。そんな世間に大きく堂々と「待った!」をかける社会派ドラマに、私たちは文字どおり、目が離せなくなるに違いない。


※この記事は「エルピス—希望、あるいは災い—」の各話を1つにまとめたものです。

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