「虎に翼」ついに崔香淑(ハ・ヨンス)を取り戻す。小橋と稲垣びっくり<第120回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となるヒロイン・寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第120回を紐解いていく。
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多岐川、死す。
大人気の「虎に翼」もあと2週間。いろいろまとめに入っている感じです。第120回は、香淑(ハ・ヨンス)が朝鮮人としての自分を取り戻し、家裁のために生きた多岐川(滝藤賢一)が亡くなります。
戦後から長く朝鮮人であることを隠し日本人のふりをして暮らしていた香子でしたが、娘・薫(池田朱那)が真実を知ったことで、出自を明かすことを決心します。
薫が、母の出自を知ってショックを受けたのは、第116回。
学生運動に没頭する薫は、その正義感から母に反発しました。
「朝鮮人である自分は捨てたって……。自分の生まれた国が、自分の血が恥ずかしいって思ってたってこと?」「それって、だって安全な場所に加害者側に立って、今までずっと見て見ぬふりしてきたってことじゃない。最低だよ!」と娘になじられ、香子もいろいろ考えたのでしょう。
そして、薫は恋人に、朝鮮人の血が入っていることで結婚を拒まれきれいさっぱり別れます。新潟編でも、異国の人だからと結婚をゆるさない風潮があることが描かれていました。その点、汐見(平埜生成)は香淑が朝鮮人でも愛し続けました。
病で臥せっている多岐川の枕元で薫が別れ話をしていると、そこへ、小橋(名村辰)と稲垣(松川尚瑠輝)が見舞いに来て……。いつものように、汐見は香子を隠そうとしますが、彼女はついに同級生の前に身をさらします。
「薫の前で崔香淑を取り戻してみたい」
ついに、姿を現した同級生を前に「(汐見の妻が)実在してよかった」と喜ぶ小橋。「実在しないんじゃないかって話していた」というのです。そりゃあ20年近く顔を見ることがなかったら、そんなことを思ってもおかしくはありません。法曹界の集まりにも一回も出てこないってことですよね。絶対にどこかからバレるだろうと思いますが、そこはドラマです。
香淑の決意を「愛だな」と微笑む多岐川は、岡山と鹿児島という赴任先からわざわざ来た小橋と稲垣を抱きしめ労います。
長年、ともに家裁で仕事をしてきた情を感じる場面です。
「愛」をずっと強調してきた多岐川は、やっぱり「愛」が人を救うことを実感しているように見えます。
寅子がもってきた法務省の少年法の改正要項に一瞬、顔を曇らせた多岐川ですが、どうすべきか意見を述べるのときには、顔に光があたり、最後まで少年たちに大いなる希望をもっていることがわかります。力強く清らかです。
多岐川は抗議案を作成したから家に取りに来いと電話を桂場(松山ケンイチ)にかけます。が、桂場は来ず、代わりに(?)香淑の兄の潤哲(ユン・ソンモ)が来て、兄妹の再会。
「みんな悪くて悪くない」と和解し、日本人も朝鮮人もわだかまりなく、多岐川、汐見、香淑、薫と楽しくご飯を食べます。
その後、多岐川が亡くなったと久藤(沢村一樹)が桂場に報告、少年法の抗議案を託します。
「頼んだからな桂場」とイマジナリー多岐川が現れて……。
正直、いろんなことが箇条書きで進んでいくので(自分が朝鮮人と日本人のハーフだったと知った薫の感情などもこれほど容易に済まないのではないかと思ってしまうのですが)、俳優たちもただただそれをなぞることで手一杯のように見えるなか、滝藤賢一さんだけは書かれたもの以上のものを見せているように感じます。たくさん調べて台本にものすごく書き込みをして臨んでいるだけある気迫。彼の場面では照明もカメラマンも気合が入って感じ、まるで別のドラマのようです。
残った、最後の演技派は、松山ケンイチさんのみーー。まさに「頼んだからな桂場」です。
(文:木俣冬)
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