「おむすび」結、栄養士になりたいと決意する 【35回】


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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第35回を紐解いていく。

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そして神戸へーー

結(橋本環奈)はこの2年、四ツ木(佐野勇斗)のために料理を研究してきたことから、栄養士になりたいと思いつきます。

困ってる人を助けないといられないのは米田家の呪いではなく、誰かを支えることが自分に向いていると気づいたのです。

さっそく、聖人(北村有起哉)と愛子(麻生久美子)に相談すると、ふたりとも賛成してくれます。
常になにかと気に入らない聖人もこればっかりは文句を言いませんでした。

ちょうど聖人にもやりたいことができたところです、
神戸に戻って床屋を再びやりたい。
心はほとんど神戸なのですが、糸島でも仕事を任せられているし、永吉(松平健)佳代(宮崎美子)のことも気になって、まだぐちゃぐちゃ言っていますが、「いまいかんと一生後悔する」と佳代が背中を押します。

父母が高齢になって地元に戻るケースはよくありますが、これから父母が高齢になっていくときに地元を出ていく子どもというのもなかなか珍しいケースなのではないでしょうか。

あとは、永吉にいつどう言うか……。
言えないまま、半年が過ぎて、はや3月。
結は、4月から神戸で栄養士の専門学校に入らないとなりません。
結も愛子も神戸に行く準備は整えているのに、ひとり聖人はタイミングがあるのだと及び腰。
自分が最も神戸に行きたいのに、妻や子に支度を任せて、物事を先送りする聖人。ほんとに困った人であります。

ようやく永吉に話をする流れは、深刻ではなく、コミカルなものでした。
鯛を釣って機嫌のいい永吉に、いまがチャンスと心の声で焚きつける愛子たち。それでも言い出せないでいると、四ツ木が来て、引っ越しの話しをしてしまいます。

聞いてないと怒り出す永吉。
でも、真剣に聖人が自分の気持ちを語り、これは理解してくれる展開?と思ったら、
「いかん!」
「いま完全にいいっていう雰囲気だったよね」という愛子。いや、ほんとに。

こうして永吉の許可を得ないまま、糸島を去ることに……。
出発の日、永吉はひとり畑作業をしていて。
結と永吉が、広い畑のなかで語らいます。
遠くに山が見える広大な畑。すてきな風景でありました。

永吉は、家族が離れるのがさみしいのだと言いますが、結局は結に説得されて、諦めます。

考えてみたら、永吉が「いかん!」と言って聖人を怒らせなければ、まだ聖人はくよくよしていたかもしれません。もしかして、聖人の背中を押すために、わざと「いかん」と言ったのかも?と思ったりもしますが、たまたまなのでしょうか。

永吉の言動は不可解であります。
それを脚本の不味さと片付けるのはもったいない。
やさしいところと、頑固なところが、グラデーションになっているのでしょう。
この手の頑固だけどやさしいおじいちゃん像も、一昔のドラマだと心情の切り分けがはっきりしていましたが、偽悪的に頑固オヤジを演じているわけではなく、ほんとうに頑固で、でも優しさもあって。
その優しさも意識的に優しいわけではなく、岩から滲み出てる水のように滲み出てしまうという、無意識のレベルで言動している人間の不思議な魅力を松平健さんが、すてきに演じています。

来週は神戸編!  糸島の雄大できれいな自然が見られなくなるのが惜しい。

(文:木俣冬)

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