「おむすび」真紀ちゃん似の少女は歩(仲里依紗)のグッズを持っていた【118回】

続・朝ドライフ

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2024年9月30日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「おむすび」。

平成“ど真ん中”の、2004年(平成16年)。ヒロイン・米田結(よねだ・ゆい)は、福岡・糸島で両親や祖父母と共に暮らしていた。「何事もない平和な日々こそ一番」と思って生きてきた結。しかし、地元で伝説と化した姉の存在や、謎のギャル軍団、甲子園を目指す野球青年など、個性的な面々にほん弄されていく。そんな仲間との濃密な時間の中、次第に結は気づいていく。「人生を思いきり楽しんでいいんだ」ということを――。
青春時代を謳歌した自然豊かな糸島、そして阪神・淡路大震災で被災するまでの幼少期を過ごした神戸。ふたつの土地での経験を通じて、食と栄養に関心を持った結は、あることをきっかけに“人のために役立つ喜び”に目覚める。そして目指したのは“栄養士”だった。
「人は食で作られる。食で未来を変えてゆく。」 はじめは、愛する家族や仲間という身近な存在のために。そして、仕事で巡りあった人たちのために。さらには、全国に住む私たちの幸せへと、その活動の範囲を広げていく。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。
今回は、第118回を紐解いていく。

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愛子、糸島へーー

サッカーの練習でケガして結(橋本環奈)の病院に担ぎ込まれた花(新津ちさ)は、不審な動きをしている詩(大島美優)が気になって、あとをつけ、成り行き上、備品室に隠れることになりました。

花はやたらと人懐っこく詩に話しかけます。これが米田家らしさかも。

歌が好きだからって将来歌手って短絡的過ぎるーー。でもまあ会話ってそんなものです。気の利いた、配慮のある会話なんてふだん、なかなかできません。日常会話なんてだいたい、内容のないものです。「おむすび」はそのあたりにリアリティを感じますが、格段、意識してやっているわけではなく、流すところと、決めセリフ的に気合入れるところと配分しながら書き進めているのだと思います。この場面では、歌が好きなら将来歌手やねえと花が振ることで、詩が何をやってもうまくいかないし、未来に希望を持てていないことがわかる寸法です。

備品室のなかで詩は体調が悪くなり、花は結にケータイで助けを求めます。詩が外に出て倒れてしまうよりも、病院のなかに引き止めた花のお手柄といえばお手柄。でも花は大反省。それをやさしく慰めるのは愛子(麻生久美子)です。抱きしめたり、頭をなでたり、愛子がお母さんみたい。おばあちゃんって感じにはまったく見えない。117回のレビューで50も過ぎたら黒髪ロングは無理!と書きましたが、いました、ロールモデル。黒木瞳さんです。

愛子は、いつまでも若く、髪も黒く長い黒木瞳さんのよう。でも黒木さんは女優だから一般人の愛子とはケアの仕方が違うだろうしなあ(ここは俳優ではなくあえて女優と書きます)。いやいや、そんな話はともかくーーここでは、お母さんぽいって何なん?という問いがわいてきます。男っぽいとか女っぽいとか枠組みにはめ込まないように気をつける時代、お母さんっぽいとかおばあちゃんっぽいとかいう決めつけからも解き放たれる必要があるでしょう。結のように、スキンシップがあまりなく、どこか距離があるお母さんがいてもいいでしょう。

この場面では、米田家が愛情いっぱいで花は愛に育まれているけれど、詩は家庭に恵まれていないという対比になっています。たぶん、花はそれを薄々感じたことでしょう。

再び、病室に戻った詩。結は彼女が歩(仲里依紗)のブランドの鏡を持っていることに気づきます。表面加工が壊れていて、結はそれを歩に直してもらうと引き取ります。なかにはプリクラが貼ってあって、詩にも友人に囲まれて楽しかった時代もあるようです。鏡を受け取った歩は、そのプリクラに真紀の面影を見るのです。もしや、生まれ変わり?と思ってしまいそうですね。

さて、お母さんみたいな愛子は、糸島から送られてきた芥蕪という野菜を美佐江(キムラ緑子)にお裾分けしています。また唐突に珍しい野菜出してきたー と思いますよね。思わない人はとてもとてもやさしい人です。その昔、美佐江がまだ惣菜店を経営していた頃、お惣菜を愛子にお裾分けしていましたが、いまでは野菜を美佐江がいただいているとは感慨深いです。そこで話すのは、佳代(宮崎美子)はなぜ糸島にこだわるのか、ということ。生まれ育った場所がいいのかな、などと美佐江は思いをいたします。

美佐江もまた父ががんとして同居を拒んだそうなのです。これ、介護問題あるあるですね。そして、ここでもまた日常会話のリアルが再現されています。何か言ってるようで何も言っていない、そんなことみんなわかっているようなことをわざわざ口に出して、時間をつぶす。それが日常会話です。

その話、もう何回も聞いたというようなことを繰り返す。そういう日常会話を客観的に見ておもしろおかしくするのがバカリズムであり、日常会話の再現ではなく、気の利いたよそ行きの会話に作り変えるのが坂元裕二です。日常会話のようにだらだらとはじまって、最終的にはいいセリフで締めるのが岡田惠和。そして、根本ノンジは、愚直なまでに、日常を再現します。まるで、ホームビデオ(いまだとケータイで日常を録画している感じ)を再生するように。根本ノンジは話を盛らない。そこが個性かと思います。

佳代の気持ちを知ることが大事。そして、聖人(北村有起哉)は、愛子の気持ちを聞かずに、移住の話を断ち切ったと、翔也(佐野勇斗)や美佐江や菜摘(田畑志真)から白い目で見られてしまいます。

佳代の気持ちを知りたくてか、愛子は書き置きを残して、糸島に行ってしまいます。頻繁に行き来しているみたいなので、そんなにショックなことではないのではという気もしますが。話を盛らないし、わかりやすくしないので、わかりにくい(なんとか構文みたいになった)。それがもどかしく感じる視聴者を増やしてしまったような気がしています。これが日常だと思うか、物語とは表現が秀逸でなければいけないと思うか、で受け取り方が変わるでしょう。

さて、「おむすび」も残り、7回です。わたくしごとではありますが、あと7回で、筆者が朝ドラレビューを毎日書いて丸10年になります。あと7回です! 中途半端ににわかにカウントダウン気分になってきました。

そこで、朝ドラについても少し考えてみたいと思います。最近の「あさイチ」では朝ドラ受けが減っています。今朝は、少し言及されましたが、ゲストに気を使って、他局のドラマに話が流れるように考えられていました。もちろん、ゲストに配慮するのは当然でしょう。今日のテーマが「やさしさ」だったというもあるかもしれません。でも、朝ドラ受けが減っているのはそれだけの理由ではない気がします。

朝ドラはNHK の「飯の種」といった制作統括のかたがかつていました。人気コンテンツということです。朝ドラ受けするのは、「あさイチ」にチャンネルをそのままにしてもらうためでもあると考えられます。でも、いまは、朝ドラ受けしてもその効果が感じられないのでしょう。井ノ原快彦さんや有働由美子さんの時代は、心底、朝ドラを楽しんでいるふうに朝ドラ受けをしているように感じました。だんだん、それが、チャンネルを変えないでもらうために目的が変わっていったように思うのが、この10年です。朝ドラがどんなに期待と違っても、それすらも楽しめる、そんな牧歌的な日常が戻ってきたらいいなあと思います。

たまに朝ドラ送りをやっている「おはよう日本」では、今朝、三條雅幸アナウンサーが「列島ニュース」に異動になるのでおわりに挨拶、と思いきや、報道番組だからと、関東の雪について触れて終わりました。みんなそれぞれ、自分の仕事を丁寧にやっているのです。

(文:木俣冬)

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–{「おむすび」第24週あらすじ}–

「おむすび」第24週あらすじ

第24週「家族って何なん?」3 /17-3 /21


結が勤める病院に田原詩(うた)という名の栄養失調の少女が入院するが、一切食事を取ろうとせず結たちは困る。
詩は幼い頃両親を事故で亡くし児童養護施設で育ったらしく、歩の亡くなった親友・真紀にどことなく顔が似ていた。
そんな折、愛子から結と歩に相談があると言って3人で会ったところ、愛子は糸島に移住を希望していて、聖人に言いづらいと言う。結たちは聖人の機嫌がいい時に言えばいいと助言するが、聖人は聞き入れず、愛子は結局無断でお試し移住を始める。

–{「おむすび」作品情報}–

「おむすび」作品情報

放送予定
2024年9月30日(月)より放送開始

出演
米田結(よねだ・ゆい)/ 橋本環奈
『おむすび』の主人公。平成元年生まれ。 自然豊かな福岡県・糸島で、農業を営む家族と暮らしている。 あることがきっかけで、人々の健康を支える栄養士を志すようになる。

【結の家族・米田家の人々】

米田歩(よねだ・あゆみ)/ 仲里依紗
主人公・結の8つ年上の姉。
福岡で“伝説のギャル”として知られる。 奔放な振る舞いで米田家に波乱を巻き起こすが、ギャルになった裏にはある秘密が…。
主人公・結の父。 娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田聖人(よねだ・まさと)/ 北村有起哉
主人公・結の父。
娘のことが心配でしょうがない、真面目な性格。 奔放な父の永吉とは言い争うこともしばしば。 元理容師。今は糸島で農業にいそしんでいる。

米田愛子(よねだ・あいこ)/ 麻生久美子
主人公・結の母。
結の祖母・佳代と家事をしながら、聖人の営む農業を支えている。 絵を描くのが得意。

米田永吉(よねだ・えいきち)/ 松平健
主人公・結の祖父。
野球のホークスファンで、自由奔放な“のぼせもん”。 困っている人がいたら放っておけない、情に厚い性格。

米田佳代(よねだ・かよ)/ 宮崎美子
主人公・結の祖母。
古くから伝わる先人たちの知恵に明るく、結が困った時の良きアドバイザーでもある。

【福岡・糸島の人々】

四ツ木翔也(よつぎ・しょうや)/ 佐野勇斗
福岡西高校に野球留学中の高校球児。
四ツ木という姓と眼鏡姿から「福西のヨン様」と呼ばれている。 糸島に練習場があり、結と時々出くわす。栃木県出身。

古賀陽太(こが・ようた)/ 菅生新樹
結の幼なじみで高校のクラスメイト。野球部員。
父は糸島の漁師だが家業を継ぐ気はなく、IT業界を目指している。 ある約束により、結のことを何かと気にかけている。

風見亮介(かざみ・りょうすけ)/ 松本怜生
書道部の先輩。
結にとって憧れの存在。 書道のイメージを一新するような書家を志している。

宮崎恵美(みやざき・えみ)/ 中村守里
結のクラスメイトであり、高校での最初の友達。
結を熱心に書道部へと誘う。 派手なギャルが苦手。

真島瑠梨(ましま・るり)<ルーリー>/ みりちゃむ
結の姉・歩が結成した「博多ギャル連合」(略してハギャレン)の、現在の総代表。
ハギャレンの復興を目指している。

佐藤珠子(さとう・たまこ)<タマッチ>/ 谷藤海咲
ハギャレンのメンバー。
子どものころからダンス好きで、ハギャレンではパラパラの振付を担当。 筋が通らないことを良しとしない、一本気タイプ。

田中鈴音(たなか・すずね)<スズリン>/ 岡本夏美
ハギャレンのメンバー。
結と同い年で、いつもスナック菓子を食べている。 手先が器用で、ネイルチップ作りが趣味。

柚木理沙(ゆずき・りさ)<リサポン>/ 田村芽実
結のクラスメイト。
学校では校則を守るおとなしい女子高生だが、実は隠れギャル&ハギャレンメンバーでもある。ギャルの歴史を本にすることが夢。

ひみこ / 池畑慎之介
糸島の「スナックひみこ」の店主。
年齢、性別、経歴、すべてが不詳の謎の人物。 糸島の住人一人一人の事情をなぜか把握している。

草野誠也(くさの・せいや)/ 原口あきまさ
糸島の商店街で陶器店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

古賀武志(こが・たけし)/ ゴリけん
結の幼なじみ・陽太(ようた)の父親。
糸島で漁師をしている。

大村伸介(おおむら・しんすけ)/ 斉藤優(パラシュート部隊)
糸島の商店街で薬店を営んでいる。
ホークスの大ファン。

井出康平(いで・こうへい)/ 須田邦裕
結の父・聖人(まさと)の幼なじみ。
糸島の農業を何とかしたいと日々奮闘している。

佐々木佑馬(ささき・ゆうま)/ 一ノ瀬ワタル
結の姉・歩と行動を共にする“自称・米田歩のマネージャー”。

大河内明日香(おおこうち・あすか)/ 寺本莉緒
結の姉・歩と対立していた、元天神乙女会のギャル。

飯塚恭介(いいづか・きょうすけ)/ BUTCH
福岡県博多のカフェバー「HeavenGod」の店長。


根本ノンジ

音楽
堤博明

主題歌
B’z「イルミネーション」

ロゴデザイン
大島慶一郎

語り
リリー・フランキー

制作統括

宇佐川隆史、真鍋 斎

プロデューサー
管原 浩

公式サイト

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