『塔の上のラプンツェル』“鏡に映った真実”とは?もっと魅力的になる3つの事実!

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本日3月10日(金)21時より地上波放送される『塔の上のラプンツェル』。
定番の“プリンセスもの”のように思えて、お姫様が王子様を待たずに冒険したり、お約束の“外し”があったり、はたまた王道のアドベンチャーとしての面白さも満載と、ディズニー映画の新たな傑作と呼ぶべき作品でした。

本作はスピーディーでハラハラドキドキが続くエンターテインメントでありながら、『アナと雪の女王』と同じくキャラクターの魅力に満ち溢れていることも特徴の1つ。ここでは、キャラクターと物語がもっと魅力的になる、細かい描写について解説してみます!

※以下からは『塔の上のラプンツェル』の本編のネタバレが多分に含まれていますので、これからご覧になる方はご注意ください!

1:マザー・ゴーテルはエゴイズムの塊だ!

赤ちゃんのラプンツェルをさらい、自分の若さを保つために18年間も塔に幽閉していたマザー・ゴーテルはもちろん悪人です。彼女の言葉の端々では、そのエゴイズムがはっきりと表れていました。

たとえば、ゴーテルはラプンツェルのことを「花のようにか弱いんだから(as fragile as a flower)」と歌っていたりします。これは“たとえ”のようでいて、ゴーテルはラプンツェルを本当に魔法の“花”(若返りの道具)としてしかみていないのではないか、という疑いを持たせます。

ゴーテルはたびたび「私は悪役(bad guy)ってわけね」とも言っていました。これは自分が悪いと言っておきながら、問題をラプンツェルに帰結させようとする、本質的に「私は悪くないわよ」と訴えているズルい言葉です。

日本語吹き替え版では表現されていませんでしたが、ゴーテルがラプンツェルに「I wuv you」と歌っているところもありました。Wuv youとはLove Youの舌ったらずな言い方であり、「好きでちゅ」のような“赤ちゃん語”っぽい表現。ゴーテルがラプンツェルを“言われるがままの存在にしようとしている”あさましさが見えるのです。

さらに、ゴーテルはたびたび「母は何でも知っている(mother knows best)」と歌っています。この“知っていること”とは、ラプンツェルにとっては“外が危ないこと”や“塔が一番安全”などに聞こえますが、実は「お前が知らないこと(実はラプンツェルがお姫様であること)も私は知っている」という、ゴーテルの心の中も示していたのかもしれません。

また、ゴーテルはラプンツェルと夜の森の中で再会するシーンで「あなたが世間知らずな証拠よ」とたしなめたりもしていました。言うまでもなく、ラプンツェルが世間知らずになったのはゴーテルのせい。ゴーテルは“子に教えてあげる”という、親として当然の役割がまったくできていないのです。

ゴーテルはラプンツェルを抱きしめたときには笑顔になったり、プレゼントの絵の具のために3日もかかる場所へ行こうとしていたりと、“優しさ”を見せるようなところもありました。しかし、それも結局は自分の若さを維持するためであり、ラプンツェルを若返りの道具として見ていないことが、以上に挙げたような言葉の数々から感じるのです。

余談ですが、ユージーンと一緒に盗みを働いていたスタビントン兄弟はゴーテルのことを「年老いた女(old lady)」と呼んでいました。魔法の力で若返っていた彼女は“年老いた”までとはいかないような気がするのですが……。ゴーテルが手に入れたはずの見た目の若さも、結局は無駄なものだったかもしれません。

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2:ラプンツェルとユージーンは似た者同士!

ラプンツェルは18年間も塔に幽閉されていた女の子、ユージーンはナルシストで自由きままな盗賊と、一見すると生い立ちも性格も正反対のようです。しかし、2人は本質的にはとてもよく似ていました。

ラプンツェルは塔の中で絵を描いて、毎年(ラプンツェルの誕生日に)空にたくさん飛んでいく灯篭の光に憧れていました。彼女は18年間外に出ていなかったのに(だからでこそ)、とても好奇心が旺盛でした。

ユージーンは、子供の頃に読んだ物語の主人公の名前をもじったフリン・ライダーという偽名で盗賊になっていました。だけど、その物語の主人公は、実際は盗賊ではなく大金持ちで、“やりたいことがなんでもできた”という人物でした。ユージーンがナルシストで、“キメ顔”でラプンツェルをオトそうとしていたことも、“女の扱いが上手い”物語の主人公にならった結果なのでしょう。

こうしてみてみると、ラプンツェルもユージーンも、“夢があること”と“今はしょうがないから現状のままでいる”ことが共通しています。

しかも、ユージーンは自分の話をしようとするとき、「親の顔も知らない、かわいそうなユージーンの話は聞かないでいいよ。気が滅入っちゃうから」とも言っていました。2人は本当の親の顔を覚えていないことまでもが、同じだったのです。

また、日本語吹き替え版では表現されていませんでしたが、ラプンツェルが初めに披露する楽曲「When Will My Life Begin」にて、彼女は「朝7時、いつもと同じ朝〜(7 AM, the usual morning line-up)」と歌っていました。

この後、ユージーンも初登場時に「まだ朝の8時だ、最高の1日になるぞ!」と言っているんですよね。
時間を確認してから、これからの1日にポジティブな気持ちでいようとする、という点においても2人はそっくりなのです。

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3:“鏡”に注目!

『白雪姫』などに登場する、ディズニー映画や童話ではおなじみの“鏡”も、本作では重要な存在になっています。

ラプンツェルはフライパンでユージーンを殴って気絶させた後、鏡を見ながら「私やるじゃん!」と、自身の戦闘能力の高さを認識しました(笑)。この時にくるっと回したフライパンが自分の頭に当たっちゃうのも可愛いですよね。

この後すぐに、ラプンツェルはユージーンが盗んでいた王冠を身につけ、その鏡に映った姿に“何か”に気づこうとしていました。言うまでもなく、これはラプンツェルが本当のお姫様であることを示していましたね(この時に、カメレオンのパスカルが「ないない」というジェスチャーをしているのが可愛い)。

一方で、ゴーテルはラプンツェルと一緒に鏡の前に立って、「自信に満ち溢れている若い女性がいるわね。あら、あなたも映っていたわ」と言っていました。ゴーテルにとっては、鏡は“自分の(偽りの)若い姿を見て自信を取り戻すための道具”なのでしょう。これは、ラプンツェルが鏡を見て“自分の本質に気付く”のとは対照的なのです。

最後にゴーテルは、割れた鏡の破片からも自分の姿を見ようとしていて、魔法の力がなくなりシワだらけになった自分の顔を見て半狂乱になってしまう……そこに彼女にとっての理想の姿なんて、あるわけがないのに。

ゴーテルがそのように“鏡に映った偽りの姿”に固執していたのに対して……前述したように“似た者同士”であるラプンツェルとユージーンは、湖の上にたくさん輝く灯篭の下で、このように繰り返し歌っていました。

「Now that I see you(今私があなたを見ている)」

これは人生で最高の日、美しい光景の中で、ラプンツェルとユージーンが“運命の人”をお互いに見ているというシーン。似た者同士の2人は鏡に映ったような存在でもあるけれど、2人はそこに実在していて、最高の瞬間を分かち合っています。これはゴーテルが固執していた“鏡に映った偽りの姿”とは対照的でもある……なんと美しいシーンなのでしょうか!

余談ですが、『アナと雪の女王』のハンス王子は、監督に“鏡のように周囲の人物の心象を写し出した存在”であると解説されています。この前提で観てみると、『アナと雪の女王』にも新しい発見があるかもしれませんよ。

おまけ:ユージーンの初めのナレーションは“ハッタリ”?

ユージーンは初めに「これは僕が死ぬまでの物語だ」と言っていました。ところが、物語はお城の中でみんながお姫様の生還を喜び、ラプンツェルとユージーンが婚約をするハッピーエンドを迎えました。誰もが「お前死んでないじゃん!ハッタリかますなよ!」とツッコんだのではないでしょうか。

だけど、このユージーンの初めの言葉はある意味では本当だとも思うんです。なぜなら、ラプンツェルの髪(陽のひとしずくから生まれた魔法の花)は、彼女自身が歌っていたように“時間を戻す”力を持っていたから。マザー・ゴーテルが若返ったのも、傷を治せたのも時間を戻したおかげなんですよね。つまり、ユージーンはゴーテルにナイフで刺された時、“本当に死んでいた(だけどラプンツェルの涙で時間を戻すことで生き返った)”のではないでしょうか。

この理屈なら、“僕が死ぬまでの物語”ということもギリギリ嘘ではないというわけ。屁理屈みたいなものですが、ユージーンのナルシストなキャラのおかげで、なんとなく許せてしまうのがズルいですよね。

まあ、ユージーンは最後に「ラプンツェルから何年も求婚されたけどやっと折れてあげた」と思い切り嘘を言っていた(実際はユージーンからプロポーズした)ので、「初めのナレーションも嘘でした!」っていうことかもしれないですけどね。それでも、ハッピーエンドだから許せてしまうのが……やっぱりズルい!

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(文:ヒナタカ)

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