撮影秘話から理想の女性像まで激白!?『愛を積むひと』朝原監督ロングインタビュー・前編



愛を積むひと


覚悟した女性ほど強いものはない


― 佐藤浩市さん演じる篤史は、家のことはもちろん、経営する工場の実務も奥さんの良子(樋口可南子さん)に任せっきりです。そして、良子は居てくれて当然、やってくれて当然と、甘えているようにも見えました。つい、そのようなスタンスになってしまう男性が多いのではないかと個人的に思うのですが、朝原監督としては、そういった現象をどのように思われますか?

朝原監督「実際、奥さんが亡くなって元気がなくなる男性は多いでしょうね。逆に女の人は、パートナーを失うと元気になるらしいですが(笑)。基本的に、日本人の男性は奥さんに対し『母親』を求めているんじゃないかな。そして、甘えこそしますが、自立はできていなかったりします。」

― そういう話は良く聞きますね。

朝原監督「主人公の篤史は、仕事に失敗したり、大好きな娘と揉めたり、現実が上手く行かずに内向的になってしまう役どころです。しかし唯一、妻である良子には心を開いているんですね。で、その奥さんが亡くなった時に、非常に閉じてしまうわけです。僕だって、もし仕事を失ったとして、じゃあ家族以外に自分をオープンに晒せる場所があるかと言うと、非常に心もとないんですよ。でも、そんな時に内向きになってしまったら、本人のためにも良くないし、大人の世代というのは次世代に対しての責任があると、最近は思うようになったんです。」

― そう言えば、劇中にも「友達をたくさん作ってください。若い人と交わってください」という台詞がありました。

朝原監督「そうそう。自分の周りに対して心を開いてみたほうがいいんじゃないかという、メッセージを込めたつもりです。まぁ、実際には難しいんですけどね(笑)」

― 男性はつい、母親像をパートナーに求める傾向があるというお話でしたが、朝原監督の作品には、芯の強い女性が多く出てきますよね。『釣りバカ日誌』の主人公・ハマちゃんの奥様である“みち子”や、『武士の献立』で上戸彩さんが演じる“春”などは、その典型だと思われますが、いかがでしょうか?

朝原監督「みち子と伝助は、原作があるので僕が作ったキャラではありませんが、映画の世界観を重ねていくうちに自然とそうなっていきました。そういえば『武士の献立』で、高良健吾くんが演じた主役・安信は落ち着きのない男でしたが、上戸さん演じる年上女房・春は、すごく覚悟を決めた女性でしたね。今回の作品『愛を積むひと』でも、良子が自らの死期を悟った時にどれだけ強くなれるか…そういう“女の覚悟”みたいなものを描きたかったんです。」

― 良子もそうですが、杉咲花さん演じる紗英も、肝の据わった女性でしたよね。一方、紗英の彼氏である徹は、突然の大きな出来事を前に揺れ動いてしまうあたり、男女のあり方を象徴しているように思えました。

朝原監督「僕の話になりますが、子供が出来たと妻から報告された時に、びっくりするぐらい挙動不審だったらしいんですよ。男ってそういうトコあるんです。例えばバブル時代、学生が海外旅行に行くのがブームだったんですが、女子は突然、留学しちゃったりするんです。英語も話せないし、勉強も好きじゃないのに。」

― 分かります。一方、男の人は迂闊に(海外に)飛ばないイメージがありますね。

朝原監督「昔から『女は三界に家なし』と言いますけど、女の人には、他人の家に嫁いで暮らせるDNAみたいなものがあって、男と比べてどこか腹が据わっているのだと思います。基本、男のほうがオドオドしてますから、潜在的に優しい奥さんを求めているのかもしれません。その実感と願望が、良子のように“優しくて芯の強い”奥さん像に反映されているんでしょうね。」

― それは、どなたの実感と願望ですか?

朝原監督「もちろん僕のですが(笑)、日本人男性の集合意識的なところもあるでしょう。」

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