映画コラム

REGULAR

2015年09月15日

『天空の蜂』へと連なる 日本映画の核との対峙

『天空の蜂』へと連なる 日本映画の核との対峙


フィクションを通して描かれる核戦争の危機や
行き過ぎた科学への警鐘


50年代から60年代にかけての東西冷戦に伴う核戦争の危機を題材にしたハリウッド映画は多数ありますが、日本でも日高繁明監督の『第三次世界大戦 四十一時間の恐怖』(60)や松林宗惠監督の『世界大戦争』(61)といった空想特撮ポリティカル・サスペンス映画が製作されました。特に僧侶でもある松林監督が手掛けた後者は、一般市民の目線で核戦争の惨禍を見据えた名作として誉れ高い作品です。
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舛田利雄監督の力作『ノストラダムスの大予言』(74)は核戦争後の崩壊した未来予想図を含む諸所のシーンが問題となり、現在は封印映画となっています。同じ舛田監督と勝間田具治監督の共同で完成させたアニメ映画『FUTURE WAR 198X年』(82)は公開前から「戦争賛美映画ではないか?」と上映反対運動も起きましたが、実質は世界中の民衆が反戦デモに立ち上がるといった光景をクライマックスに、衛星核ミサイル発射を回避しようとする主人公らの労苦が描かれていました。

これは映画ではありませんが、そもそも行き過ぎた科学に対する警鐘の意味を込めて手塚治虫が描いたマンガ『鉄腕アトム』は、63年に始まったTVアニメの明るい“科学の子”としてのイメージと、同時期から促進されていった原発建設などがリンクしてしまった結果、原子力エネルギーの明るい申し子的な存在になってしまった感もあり、手塚はそれをずっと忸怩たる想いで捉えていました。
さらには77年、アトムが原作者に無断で原発PRに使われたことで手塚は激怒。以後、二度とアトムがそういったことに利用されないよう気を配り続けていたそうです。
なお、福島原発事故の後、アトムが原発のイメージアップに貢献していたと批判する声が相次ぎましたが、それを受けて13年の東京新聞には『アトムの涙 手塚治虫が込めた想い』と題された手塚の真意などを伝える記事が発表されています。
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横山光輝によるマンガ『ジャイアントロボ』を原作とする今川泰宏監督の傑作SF・OVAシリーズ『ジャイアントロボ THE ANIMATION―地球が静止する日』(92~98/全7話)では、完全無公害でリサイクル可能のエネルギー“シズマドライブ”によって繁栄を迎えた未来社会の中、そのシズマドライブに大きな欠陥があったことから始まる善悪の闘いの中で、ロボの動力源が“時代の遺物”たる原子力であることが発覚し、これを封印するかどうかがクライマックスの大きな見せ場となっていました。

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