映画コラム
『RANMARU 神の舌を持つ男(略)』を“逆に”観て欲しい5つの理由
『RANMARU 神の舌を持つ男(略)』を“逆に”観て欲しい5つの理由
(C)2016 RANMARUとゆかいな仲間たち
映画『RANMARU 神の舌を持つ男 酒蔵若旦那怪死事件の影に潜むテキサス男とボヘミアン女将、そして美人村医者を追い詰める謎のかごめかごめ老婆軍団と三賢者の村の呪いに2サスマニアwithミヤケンとゴッドタン、ベロンチョアドベンチャー!略して…蘭丸は二度死ぬ。鬼灯デスロード編』のブルーレイ&DVDが4月26日に発売となります。そのタイトルだけの長さ(134文字)だけでもめまいがしてきそうですが、本編も負けず劣らず観る人を困惑の渦の中に追い込む、素晴らしい内容になっていました。
ここでは、本作を劇場で観ていた筆者が、その斬新すぎるポイントを挙げていきます。なお、以下からの文言はすべて褒め言葉です!
1:大爆死テレビドラマの映画化!オープニングではそのことに対しての自虐ネタも!
本作は、平均視聴率5.6%、最終回に至っては4.8%という大爆死を遂げたドラマの映画化作品です。これほど大失敗したドラマをなぜ映画化に踏み切ったのか、その理由はドラマが放送開始する前の6月からすでに映画の撮影に入っており、お蔵入りにできなかった、という事情があったからなのだとか。
素晴らしいのは、製作者側がこのドラマの低視聴率っぷりを省みて、映画の冒頭にとある“自虐ネタ”を入れていること!映画開始からわずか3分で「ドラマ版があまりにも観られていなかったんだよコンチクショウ!」という熱い想いが伝わるのです!
これは新しいですよね!普通なら監督や宣伝スタッフはネガティブな情報を観客に伝えないようにするはずなのに、むしろ「自虐ネタを用意したので笑ってくれよ!」と言っているのです。これほど斬新かつ挑戦的な映画のオープニングは今後ないかもしれませんよ!
※堤幸彦監督自身も低視聴率に対してのお詫びのコメントをしております↓
肯定派、否定派真っ二つ。ハマる人はどこまで深くハマる堤幸彦の世界
(C)2016 RANMARUとゆかいな仲間たち
2:本編と関係のないギャグがすごかった!
本作の見どころとして、なんと「ストーリーと無関係のギャグが面白い」という要素が推されていました。未だかつて、こんなアピールポイントを持つ映画も存在しなかったでしょう!
そのギャグとは、「うんとこどっこいしょ」という掛け声を「う◯こ?」と勘違いさせるとか、旅館の女将がいきなり「ボヘミア〜ン」と叫ぶとか、自然現象を新人の芸人に見立てて茶化すとか、筆者にはちょっと難しすぎて理解できないものばかりでした。確かにある意味では面白い!
そのギャグに花を添えるのは、カワイイとキテレツを合わせ持つ、現実に存在したらお近づきになりたくない感じのキャラを演じた木村文乃。彼女のファンであれば、その新たな一面を発見して感動できることでしょう。彼女のボケに対して、『斉木楠雄のΨ難』ばりの冷静なツッコミをする佐藤二朗も見逃せません!
そのほか、木村多江や市原隼人などの日本を代表する役者たちによる痛々しいキャラの振る舞いは唯一無二のグルーヴ感を生み出し、物語に否応なく侵食してきます。この不条理さ、荒唐無稽さも、映画の大きな魅力と言えるでしょう。
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3:さんざんやり尽くされた堤幸彦ワールドが滲み出てまくっているのがすごい!
本作は、なんと「堤幸彦シリーズ最高傑作」というキャッチコピーが打ち出されています。いやあ、そんなシリーズがあったとはまったく知らなかったですね!ずっとシリーズものであることを明かさず、シリーズ最新作の予告で初めて“そうだったのか!”と知らせるこのプロモーションもまた斬新です!
そして、本編はまさしく堤幸彦監督節に溢れまくっていました!何せ、“人里離れた村”、“謎の老婆”、“古い言い伝えにまつわる事件が起きる”という、テレビドラマ『TRICK』でさんざんやり尽くしていた要素を再び登場させているのですから。これも一周回って新しいではないですか!
『犬神家の一族』に代表される金田一耕助シリーズのパロディも含め、全編に「どこかで見たような」というデジャヴを感じることができるでしょう。『マトリックス』で2匹の猫を見たときのネオの気持ちを知りたい人にもおすすめできるのです!
ちなみに、物語そのものは「突如起こった地盤沈下と殺人事件の謎を解く」というものであり、事件の手がかりや謎を追う過程はまっとうに仕上がっています。しかし、ここに気が違えたような堤幸彦流のギャグや演出が覆いかぶさるため、ストーリー性がどうとかは特に気にならなくなり、ほかの映画では到底味わえない焦燥感と倦怠感にいっぱいになれるのです。その“脳細胞がガシガシ減っていく”感覚は、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に決してひけを取りません。
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4:難解すぎる演出は製作者からの挑戦状だ!
本作ではギャグのほかにもう1つ難解なポイントがあります。それは、時々「ズズズズズ」という効果音が鳴り響き、“誰かの頭が大きくなっている”こと。こう聞いても頭に「?」が出るでしょうが、安心してください、観たところでもっとわけがわからなくなります。これは、製作者から観客に向けた“挑戦状”であると受け取るべきでしょう。
まさか、これが“特に意味のない演出”なわけがないですよね。筆者はそこまで人を貶めたくはありません。きっと、1回観るだけでは気づけないメタファーがあり、本編と密接に絡んだ何かがあるはずなのです!そう考えれば、本作は邦画版『ユージュアル・サスペクツ』と呼んでも過言ではないでしょう(過言)。
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5:エンドロールも超斬新!
本作のエンドロールもまた斬新でした。理由は一切言えませんが、前述した“自虐ネタ”が展開するオープニングと密接に繋がっており、これまたこの映画でしかありえない演出があるのです。
堤幸彦監督のセンスや映画作りの姿勢が、このエンドロールに全て詰まっていると言っていいでしょう。ひょっとすると画面から目を背けてしまうかもしれませんが、それに耐えてこそ真の堤幸彦ファンです。製作陣の多大なチャレンジ精神を感じる作品ですが、まさか最後に観客にまで試練を与えるとは!やっぱり新しい!
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まとめ
ここまでで、いかに本作が邦画界に一石を投じる、斬新な映画であったかをご理解いただけたでしょうか。これは極めて実験的であり、新たな映画の可能性を切り開くべく作られた、ポストモダニズムに溢れた作品なのです。
きっと観終われば、憂戚、粗放、枉惑、 鬱憤、虚脱など、ほかの映画にはない感想を口にすることでしょう。いや、もはやここまでくると“無”、禅のような境地に達する可能性すらあります。
ちなみにブルーレイ&DVDが2017年4月26日にリリース。ぜひぜひ、新しい映画体験をしたい方にオススメします!
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(文:ヒナタカ)
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