実写映画版『シンデレラ』が玉の輿に乗らなくなった理由
2:王道的でありながら、現代の世相も反映した作品になった!
「信じていれば夢は叶う」であった1950年版のディズニーアニメ版に対し、この2015年版の実写映画でのシンデレラがどうなったかと言うと……「勇気と優しさを持つこと」を信条とする、より能動的に努力をするヒロインへと生まれ変わっていました。
たとえば、シンデレラは意地悪なまま母と義理の姉の仕打ちに耐え忍ぶことについて、「今まで幸せに暮らしていた家を守りたいから」と口にしていました。彼女はただ我慢しているだけ、お城の舞踏会を夢見るだけでなく、しっかりした目的意識を持っているのです。
シンデレラだけでなく、王子もまた将来のために頑張る魅力的なキャラクターに変わっています。
ディズニーアニメ版の王子はほとんど背景が見えないキャラだったのですが、2015年版の王子は“弱小国で利益を得るための政略結婚を迫られている”という設定が加えられており、彼はその“決まりごと”に抗がおうとしているのです。
さらに、意地悪なまま母は、完全な悪人として描かれていたディズニーアニメ版とは違い、“悪になってしまった理由”がほんの少しだけ示されていました。
まま母を演じたケイト・ブランシェットが「純粋に邪悪な人なんて誰ひとりいません、誰にでもそうなる動機や誘因があると思います」と語っているように、これも単純な善悪だけでキャラクターを表現しない、現代らしい改変と言えるでしょう。
こうした、“王子様を待っていればいい”という過去の受動的なプリンセス像に真っ向から立ち向かう作風は、昨今のディズニー映画の主流になっています。『プリンセスと魔法のキス』では王子様を待つのではなく“自分のお店を持つこと”が夢になっているヒロインが誕生し、『アナと雪の女王』では姉妹の愛情を主として描き、『マレフィセント』ではついに王子様があまりに役には立たなくなってしまうのですから。やはり、それは“夢見るばかりはいられない”、“女性が男性に頼らずに自立する”という現代の世相も影響しているのでしょう。
とはいえ、この2015年版の『シンデレラ』は、そこまで元のおとぎ話から“外れている”というほどでもありません。大筋はみんなが知っているお姫様の物語そのもの、テーマはとても道徳的で、勧善懲悪であり、夢のある魔法が登場し、ヒロインの心は美しく、王子様は中身も含めてイケメンです。極めて“王道的”に作られていると言っていいでしょう。
そんな王道的な物語でありつつも、昨今のディズニー映画と同様にプリンセスが能動的に努力をして、現代ならではの共感を呼ぶメッセージやキャラクターが新たに誕生する……これが2015年版の『シンデレラ』の最も大きな特徴であり、新たなディズニー映画の転換期となる作品である理由とも言えるのです。
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