『もののけ姫』を奥深く読み解く「5つ」のポイント!子供が登場しない理由とは?<徹底解説・考察>
5:「生きろ。」のメッセージについて
前述したように『もののけ姫』は小さな子供が登場しない作品なのですが、むしろメッセージそのものはティーンエイジャーを含めた子供に向けたものとも言えます。何しろ、宮崎駿自身は「この映画を作りたかった一番の理由は、日本の子供たちが“どうして生きなきゃいけないんだ”という疑問を持っているからだ」と明言しているのですから。
その“生きる”ことに悩んでいる子供に向けての、宮崎駿監督からのメッセージは、最後のサンとアシタカの会話に集約されていると言っていいでしょう。
「アシタカは好きだ。でも人間を許すことはできない」
「それでもいい。サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。共に生きよう。会いに行くよ、ヤックルに乗って」
サンは、人間に捨てられる(生贄として差し出される)壮絶な生い立ちで、結果として母と慕っていたモロの君も失ってしまい、(元々は同族であるはずの)人間を結局は許すことができませんでした。
アシタカは、以前はモロの君に「あの子を解き放て!あの子は人間だぞ!」と声を荒げていたこともありましたが、そのサンの意思を聞き、「共に生きよう」と言うのです。
この“共に”とは、同じ場所に住む、同じ価値観を持つことだけにとどまりません。心を開いた少女と、彼女の意思を知った少年が、世界のどこかで“共に”生き続けるということ……この記事の冒頭に挙げた「憎悪と殺戮の最中にあっても、生きるに値することはある。素晴らしい出会いや美しいものは存在し得る」という宮崎駿監督の想いが、ここに表れているのです。
その宮崎駿監督の次回作であり、事実上の最終作となる映画のタイトルは『君たちはどう生きるか』。こちらも、きっと子供または若者に“生きる理由”を説いた作品になるのでしょう。
参考図書
(文:ヒナタカ)
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