俳優・橋本淳が劇場で見なかったことを後悔した映画とその理由
どうも、橋本淳です。
38回目の更新、今回もどうぞよろしくお願い致します。
音とか音楽というものは、とても大事だなと最近、とくに思います。というのも現在、舞台(『キネマと恋人』という作品)の地方公演が続いておりまして、ホテル生活なものなので。
自分の部屋ではない空間を、どう自分の居心地のよい空間にするか。そういった時には音楽が最適です。
癒しの音楽、アップテンポな音楽、普段聞かないけれどいつもと違う場所でなら選択してしまう音楽。その時々の自分の状態から、その時々の音楽を選ぶ、それもまたリラックス出来て心地よくなります。
そして何より、東京とは大きく違う環境音。それが一番の楽しみかもしれません。
喧騒を離れ、川のせせらぐ音、葉が擦れ合う風の音、祭囃子が遠くから聞こえてきたり、などなど。そういった音に耳を傾けると、すっと心が解放させられる、といいますか軽くなる感覚があります。
目からがもちろん一番の情報量ですが、耳から入ってくる情報も、とても大きく心を揺さぶられる気がします。
いい気分になることも、そのまた逆も然り。
そんなところで今回は、視覚的にはもちろん、聴覚的にも刺激されたコチラの映画をご紹介。
『ファースト・マン』
空軍でテストパイロットを務めるニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)の幼い娘カレンは、重い病と闘っていた。妻のジャネット(クレア・フォイ)と懸命に看病するが、ニールの願いもかなわずカレンは亡くなる。
いつも感情を表に出さないニールは妻の前でも涙一つ見せなかったが、一人になるとこらえ切れず泣いてしまう。その悲しみから逃れるように、ニールはNASAのジェミニ計画の宇宙飛行士に応募する。そして見事NASAに選ばれ、家族でヒューストンに越すことに。有人宇宙センターでの訓練と講義を受けることになる。
その頃の世界での宇宙計画は、ソ連が圧勝していたが、そのソ連も到達していない"月"を目指すと指揮官のディーク・スレイトン(カイル・チャンドラー)は宣言する。"ジェミニ計画"、そしてそれが成功すれば"アポロ計画"へ移行することが決定された。宇宙空間での活動の為にニールは様々な過酷な訓練を受けていく。その訓練を越え、いざ計画の実行へと移っていき、、、
やはり注目ポイントしては、ここになるのでしょうか。アカデミー賞受賞作『ラ・ラ・ランド』での最強タッグ、デイミアン・チャゼル監督×ライアン・ゴズリング。この組み合わせで外れないとの予想は、、見事にその通りになっていました。
無口で感情が表に出ない男 ニール・アームストロングをライアン・ゴズリングが魅力的に演じ、チャゼル監督の人間の深層を掘り下げての表現が見事にマッチ。
観る前は、
「はいはい、アームストロングの有名なあのセリフ、"この一歩は人間とっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩だ"を観るための映画ね」
と。思っていたものの、、
すいませんでしたっっっ!と、鑑賞後は秒で製作国のほうへ向けて土下座をしたくなるほどでした。
史実を題材にした映画、特に宇宙ものでアポロ計画ものは過去にも多くモデルにされていますし、単なる伝記ものになりがちになるところを見事にひっくり返されました。
エンタメ系の宇宙飛行士物語、にはせずにきちんと"1人の男の物語"になっている。ニールの、自分への、家族への、葛藤を逃さずにラストまで追い求め掘り下げていました。
客観的な宇宙船のカット(外からの宇宙船全体が見える引きのカット)はほとんどなく、主観多めの閉塞感のあるカット割で、主人公と観客を追い詰めてる。それが月面でのシーンでは、一気に解放され「やられたっ」となるのです。
さらに、特筆すべきところは視覚的な部分と聴覚的な部分。
聴覚では、BGMで盛り上げるシーンや、宇宙船打ち上げやアラーム音の爆音、船内での繊細な音、宇宙空間での無音状態。その組み合わせで観客としては飽きることなく揺さぶられる。
視覚では、月面着陸のシーンでは、IMAXフォーマットで撮影されているのに対し、着陸船イーグルや司令船コロンビアでは人の息遣いをかんじさせるように16㎜フィルムで撮影。これは、閉塞空間から宇宙空間へ出たときに一気に鮮明な映像への切り替えが、まさに無限の空間に出たというドラマチックな演出になっている。
この視覚と聴覚のバランスこそ、デイミアン・チャゼル監督の持ち味だと思います。『セッション』『ラ・ラ・ランド』にも通じる、音と視覚の演出、さらには主人公を追い込み、1人(2人)の人間のドラマとしてしっかりと奥行きのある作品となっている。
なぜ映画館で観ることが出来なかったのかと、数ヶ月前の自分を呪っている今の私です。これだから後悔はしたくないと、毎回思います。
"映画は映画館で!"
もちろん自宅でリラックスして鑑賞するのも、それはそれでよしなのですが、どの映画も大スクリーンと整った音響設備のある場所用に作られているものですから、そういった場で観るべきですね。
本当に、、これは悔しい。
「ファースト・マン」どこかでリピート上映していないかしらとネットを泳ぐ。
無念。。
それでは今回も、おこがましくも紹介させていただきました。
(文:橋本淳)
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