『海辺のエトランゼ』ネタバレレビュー|純愛を豊かな自然と色と光で魅せる
ふたりの心を結ぶ沖縄の花々
『海辺のエトランゼ』には、生命力にあふれた色鮮やかな花もたくさん登場します。中でも、駿と実央の関係が一気に近づくシーンの背景にあった3つの花に、目を奪われた人も多いのではないでしょうか。パンフレットによると、ふたりの背景にあった花は赤紫と白のブーゲンビリアと赤色のニトベカズラ。これらの花々の花言葉とその配置を紐解くと、背景にも深い意味が見えてくるのです。
駿の背景に描かれていたのは、「情熱」「あなたしか見えない」という花言葉を持つ赤紫のブーゲンビリア。同性愛者の駿は過去に世間の冷たい目にさらされてきた経験から、好きになった相手に好意を向けることに恐怖を抱いていました。そんな彼が実央にだけは、その恐怖を忘れて「単純に気になって話してみたかった」と純粋な好意で声をかけるのです。赤紫のブーゲンビリアは、実央への“ただの下心”を抑えられなかった駿のための花と言えるでしょう。
そして駿と対面する実央のバックにあるのは、白のブーゲンビリア。「熱心な気持ち」「あなたは素敵」という花言葉を持つ花です。高校生の頃の実央は、周囲から周囲に「独りでかわいそうな子」だとレッテルを貼られることに嫌気がさしていました。ただ駿だけは、純粋な好意で自分に興味を持ってくれたわけです。その事実は実央にとって、大きな救いだったに違いありません。自分にまっすぐな好意を向けてくれた駿に対する、「君だから好きなんだ」という実央の想いを具現化した花が、白のブーゲンビリアだったのではないでしょうか。
そしてふたりの間に咲き誇るのは、「愛の鎖」を花言葉に持つ赤色のニトベカズラ。「実央しか見えていない駿」と「駿が素敵だと思う実央」が、「愛の鎖」で繋がれる……。このシーンでふたりの距離が一気縮まったと感じるのは、必然なのかもしれません。
また公式Twitterによると、実央が3年経って島に戻ってきたシーンで海辺のベンチに咲き誇っていたのは、オオバナアリアケカズラという花なのだそう。しかもその花言葉は「恋に落ちる前」「永遠の幸せ」「楽しい追憶」。3年離れている間に駿の“ただの下心”を真剣に受け止め考えた実央は、改めて駿に好きだと、一緒にいたいから戻ってきたと伝えます。まさにこれから恋を始め、寄り添って生きていくふたりのための花ではないでしょうか。
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(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会