映画コラム

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2021年02月20日

『海辺のエトランゼ』ネタバレレビュー|純愛を豊かな自然と色と光で魅せる

『海辺のエトランゼ』ネタバレレビュー|純愛を豊かな自然と色と光で魅せる



モノクロに浮かぶ真っ赤な恋心

全編通して、生命力みなぎる鮮やかな色彩と背景が印象的な作品だった『海辺のエトランゼ』。しかしある場所を描くときだけは、その色鮮やかな景色とは正反対の風景が広がっていました。それは、駿の生まれ故郷である北海道のシーンです。

駿にとって北海道は、生きづらさを感じていた苦しい思い出がある場所。そのため幼なじみであり婚約者でもあった桜子との結婚式当日や高校時代のシーンは、限りなくモノクロに近い、彩度を落としたセピアな風景でした。

そんな世界の中で異様なほどに浮かんでいたのが、桜子の赤ふきの白無垢とバレンタインチョコです。

桜子には、駿から結婚式当日に破談されたという過去があります。桜子は駿が女の人を好きになれないこと、家族を安心させるためだけに結婚すると決めたことを知りつつも、好きだからという理由で婚約するくらい彼のことを愛していました。そんな桜子の駿への想いの強さが、彩度を落とした景色の中に異様に浮く赤色だったのだろうと思います。

きっとこの“赤色”に秘められた想いを想像した人はきっと、沖縄にやってきた桜子に対して駿が言い放った「お前関係ないだろ」というセリフに腹立たしさを覚えるでしょう。

沖縄の離島の日常と、ふたりの純愛


豊かな自然や光、色の描写を通して見る駿と実央の純愛は、「ふたりなら、きっと大丈夫。」「特別じゃない、ただ恋をしている。」という映画のキャッチコピーの伏線をしっかりと回収したと思っています。

ふたりにとって「恋をする」「大好きな人と一緒にいる」は、食べる、働く、遊ぶ、寝るという生きる要素のあくまで1つ。

『海辺のエトランゼ』で「ふたりが沖縄の離島で、ともに生きている」という実感が味わえるのはきっと、表情やセリフだけでなく風景などの日常描写からも駿と実央の心情や関係性の変化を感じ取れたからこそだと思うのです。また自然や光、色だけでここまで人の心理が描けているところに、この作品が映像化された意味を強く感じました。


とここまで長々と書いてきましたが、お伝えしたいことはただ1つ。『海辺のエトランゼ』のBlu-ray/DVDが2021年2月24日に発売されるので、ちょっと旅行気分が味わいたい人、荒んだ心を癒したい人は観てほしい、ということです。沖縄の離島の日常の中でゆったりと淡々と育まれていく駿と実央のあたたかな恋はきっと、疲れた心に染み渡り、癒してくれるでしょう。



(文:クリス)

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(C)紀伊カンナ/祥伝社・海辺のエトランゼ製作委員会

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