映画コラム

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2021年03月02日

『レンブラントは誰の手に』レビュー:芸術を巡る人間の欲望とケタ外れの金銭感覚を笑え!

『レンブラントは誰の手に』レビュー:芸術を巡る人間の欲望とケタ外れの金銭感覚を笑え!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

ネーデルランド連邦共和国(現オランダ)の出身で、バロック絵画を代表する画家のひとりレンブラント・ファン・レイン(1606~1669年)。

俗に「光と影の画家」とも「光の魔術師」とも謳われる巨匠でもある彼の絵画は、長き時を経た現在も、とてつもない高値で取引されています。

本作はそんなレンブラントの絵画を巡る、芸術という名の欲望に取りつかれた人々の、ある騒動を描いたドキュメンタリーです。



まずは2018年、レンブラントが描いた肖像画が44年ぶりに発見されたことで、それが本物か否かを含む、野心家の若き画商ヤン・シックス11世が引き起こしていく騒動。

そしてフランスの大富豪がレンブラントの絵を手放すことになり、巨匠の絵をフランスに留めておきたいルーヴル博物館と、絵緒を本国オランダに戻したいアムステルダム国立美術館との間で、法外な値段での争奪戦が始まり、さらにはそこに絵のことなど何もわからない政治家たちの介入もあったりして、これまたとんでもない騒動になっていきます。



このふたつのエピソードを中心に映画は紡がれていきますが、まるで劇映画のようにドラマティックな展開の数々に、一般庶民たるこちらはただただ呆然とするのみ。

芸術に魅せられた者たちのオタク気質そのものは理解できるものの(こちらも映画オタクとして廃盤ソフトを入手すべく血眼になるときがある!)、そこで取引されていく金額がもう予測の範囲をはるかに越えていて、思考停止してしまこと必至の世界なのでした!

芸術とはかくも人々に欲望を掻き立たせつつ、金銭感覚をも狂わせていくものか(もちろん、ここに関わる皆さん、とてつもないお金持ちばかりではありますが、それにしてもケタが違いすぎる!)。



もっとも、こうした矛盾を終始孕ませつつも、本作はいつしかこうした人間の滑稽なまでの行動を決して否定することはなく喜劇のように捉えていきます。

ふと、天国のレンブラントはこうした下界の人間の騒動をどのように見つめているのか、ちょっと聞いてみたい気持ちにも駆られてしまう作品なのでした。

(文:増當竜也)


『レンブラントは誰の手に』作品情報

ストーリー
若き画商ヤン・シックスは、レンブラントが描いた『ヤン・シックスの肖像』を所有する貴族の家系に生まれ、モデルとなった当主から代々その絵を大事にしてきた 11 代目ヤン・シックスである。ある日、ロンドンの競売クリスティーズに出されていた『若い紳士の肖像』に目を奪われた彼は、これはレンブラントが描いたものだと本能的に感じ、安値で落札する。本物であれば、44年ぶりに巨匠レンブラント知られざる新たな作品が発見されることとなり、専門家や美術史家らもアートを愛するがゆえにヒートアップしていく。だが、思いもよらぬ横やりが入る。一方、フランスの富豪ロスチャイルド家が何世代にも渡って所有してきたレンブラントの2点の絵画『マールテンとオープイェ』が、1億6000万ユーロ(約200億円)で売りに出される。滅多に市場に出回らない見事な作品を獲得するために、世界で最も入場者数の多いルーヴル美術館と、レンブラントの作品を多数収蔵するアムステルダム国立美術館が動き出す。そのうち、絵の価値も分からない国の要人まで乗り出す事態となり……。 

予告編
 


基本情報
出演:ヤン・シックス/エリック・ド・ロスチャイルド男爵/ターコ・ディビッツ
 
監督:ウケ・ホーヘンダイク
 
製作国:オランダ

公開日:2021年2月26日

上映時間:101分
 
配給:アンプラグド

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