『ビバリウム』レビュー:謎の住宅街から出られなくなったカップルが織り成す迷宮スリラー!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
新居を探す若い夫婦(ジェシー・アイゼンバーグ&イモージェン・ブーツ)が、不動産から紹介された住宅地からまるで迷宮のように出られなくなるという、悪夢に満ちたダーク・ファンタジックな設定で繰り広げられる不条理ホラー・スリラー映画。
まずは、その住宅地がいかにも3DCGで描出されたような無機質感極まりないのが秀逸で、まるで箱庭の中に閉じ込められているかのような閉塞感が見る側にまで伝わってきます。
何をどうやっても住宅街の敷地から外に出られないカップルが、ついに家そのものに火をつけて燃やしても、翌朝になると元に戻っているという不可思議。
彼らを誘った不動産屋のマーティン(ジョナサン・アリス)がまるでロボットみたいなので最初は怪訝に思っていると、やがてそれらの理由が感覚的に理解できるようになっていきます。
マーティンの正体は? その目的は? といった理屈はさておき、毎朝家の前に届けられる食料などを詰めた段ボール箱の中に、ある日とんでもないものが入っていて……という、もうここから既にネタバレになりそうな危惧もあるので記述は避けておきますが、それでもこの時点からカップルがどんどん狂気の沙汰へとエスカレートしていく事実だけは伝えておいてもよいでしょう。
いわゆる1アイデアで攻めで攻めて攻めまくるタイプの不条理ファンタ映画ではありますが、それを真摯に実践しながら迷宮の奥深くへと入り込まされていく『ソーシャル・ネットワーク』主演のジェシー・アイゼンバーグと、『グリーンルーム』のイモージェン・ブーツ、(そして更なる人物……)の演技合戦も大きな見どころ。
特にイモージェン・ブーツは本作で第52回シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀女優賞を受賞したのも大いに納得の熱演でした。
あたかも『トワイライト・ゾーン』の拡大版を見るかのような気分で、このラビリンス・スリラーを理屈抜きで、そして恐々と堪能することを強くお勧めしておきましょう。
(文:増當竜也)
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