役を愛すことで、役になりきる。仲野太賀が魅せる真骨頂


「あのコの夢を見たんです。」で見せた仲野太賀の憑依力

民放ドラマ初主演となった「あのコの夢を見たんです。」は、南海キャンディーズ・山里亮太の小説を原作とした作品。仲野太賀は山里亮太役として、各話ごとに違うヒロインと共演し、奇抜な妄想ストーリーを繰り広げていく。1話は中条あやみ、2話は芳根京子、そして最終話は橋本愛と豪華ヒロインが揃っている。


「あのコの夢を見たんです。」より ©「あのコの夢を見たんです。」製作委員会

どの回においても、仲野太賀の山ちゃんなりきりっぷりがすごい。赤ブチめがねを掛けただけで山ちゃんっぽさが出ている。イライラすることが起きてダークサイドに陥りかける自身を、妄想を繰り広げることで平静を保とうとするお決まりの流れ。ノートに思うがままに妄想を書きつける鬼気迫った様子が、もう山ちゃんにしか見えない。

中条あやみがヒロインを務める1話では、モテすぎるがゆえに”振られたい願望”をもつ女子高生が主人公。理想のシチュエーションで失恋できる不思議なアプリを手に入れ、次々とフラレまくる。その過程で出会うのが仲野太賀演じる山ちゃんだ。

物語終盤、とあることが判明し山ちゃんは中条あやみを裏切る形になるのだが、そのときの仲野太賀の表情がもう、山ちゃんでしかない。絶妙なゲス加減、なんとも言えない人間くささ。山ちゃん本人以外に山ちゃんを演じられるのは、間違いなく仲野太賀しかいないと思えるほどの憑依力なのだ。

仲野太賀はたびたび各インタビューでも「まずは役を見つめ、好きになることから始める」と語ることが多い。役として山里亮太を演じると決まったときも、山ちゃん本人になりきるよりは、モチーフと捉えて”演じる”ことに徹したという。モノマネになってしまうと、ただのコントになってしまう思いが強かったのだとか。

10代で役者の道へ入った仲野太賀。同じく俳優である父を意識しながら、二世俳優として見られがちな現状に歯がゆい思いをしたこともあったかもしれない。

それでも、もはや今の彼の活躍には二世俳優の影はない。ひとりの俳優である「仲野太賀」として、実績をしっかり積み上げてきた。彼のパーソナリティは今後も厚みを増し、役へと還元されていくことだろう。

(文:北村有)

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