「ナイト・ドクター」第1話レビュー:「医者の世界にも働き方改革を!」(※ストーリーネタバレあり)
波瑠主演のフジテレビの連続ドラマ「ナイト・ドクター」が、2021年6月21日(月)より放送開始した。
“昼夜完全交代制”を試験的に導入した病院を舞台に、夜間救急専門の医師チーム「ナイト・ドクター」の奮闘を描く本作。“月9”ドラマ初出演となる波瑠が強い信念を持つ主人公・朝倉美月を演じる。
本記事では、その第1話をcinemas PLUSのライターが紐解いていく。
第1話のレビュー
「医者の世界にも働き方改革を!」といった考えから、夜間専門の救急医師を育成するために新設されたナイトドクター。自ら志願(?)した5人の医師が集まった。波瑠演じる美月、田中圭演じる成瀬、北村匠海演じる桜庭、岸優太演じる深澤、岡崎紗絵演じる幸保。年齢は違うも同期の医師たちは、仕事に対する考え方の違いからお互いにぶつかり合うも、患者のために精一杯働く。
1話でフィーチャーされるのは、プライベートも仕事も関係なく急病人がいたら身体が動いてしまう美月と、研修医上がりで内科志望の深澤。仕事に対する向き合い方も、病人に対する姿勢も、根本的に考え方の違うふたりだ。
朝も夜も関係なく働く救急医を横目に「内科で良かった……」と胸を撫で下ろす深澤。血液系の持病を持つ妹がおり、医師という仕事にある程度の誇りはあるものの、そこまで熱量は感じられない。そんな深澤が、なぜナイトドクターに志願したのか? それは、小野武彦演じる八雲院長の圧力だった。妹が世話になっている以上、無下に断れなかったのである。
いざ急病人が運び込まれても、咄嗟のことに身体が動かない深澤。美月たちに”使えないヤツ認定”されてしまい、どんどん自信を失ってしまう。
彼は彼なりに患者を助けたいと思っているし、彼女へのプロポーズを控えた重傷患者のことを思い憤慨する気持ちもある。それでも、自信がないがゆえに身体が動かないのだ。「一般人でももう少し動けるのでは……?」と思ってしまうシーンの連発。あえてそういった演出にしているとしても、倒れてしまった妹の緊急搬送を拒否してしまったのにはさすがに驚いた。たとえ、自分の妹だと知らなかったとしてもだ。
いち早く深澤を戦力外認定する美月。彼女はたとえ休みの日でも、恋人とデート中だとしても、事故や急病人を見かけたら黙っていられない。必要とあらば自身の着ている服を切って包帯がわりにする。血を吐きかけられても顔色ひとつ変えない。救急医の鏡だ。
階段から落ちたホームレスの男性を助けた美月。「どうして助けたんだ、せっかく死ねるところだったのに」と吐き捨てられるも、一瞬思案する顔を見せただけで迅速に対処した。先述の、プロポーズを控えた重症患者を助けたときも、もう他の医師が諦めかけているのを物ともせず最後まで命が戻ってくることを信じていた。
美月がそこまで「人を助けること」にこだわるのは、自身の母にまつわる体験が関係している。リビングで倒れてしまった母を助けるため、すぐに救急車を呼ぶも受け入れ先が見つからない。たらい回しにされた挙句、母は手遅れで亡くなってしまった……。「受け入れ先が早く見つかれば」助かった命だったのだ。
「私の母も、たらい回しにされた」と深澤に打ち明ける美月。受け入れ先がなければ助からない命がある中で、たとえ受け入れられても腕の良い医者がいなければ同じく助けられない。「だから、深澤だけが悪いんじゃない」と美月なりに励ます。まるで必殺仕事人のように仕事に誇りを持つ美月だけれど、深澤にも彼なりの背景があるのだと想像できる思慮深さがあるのは、さすがだ。
そんな美月だけれど、仕事に集中するがあまりに恋人との時間が取れず、結果浮気されてしまう……と言った展開は想像できなかったのだろう。「人と違う時間に働く」ことが人生にどんな影響を及ぼすのか。仕事とプライベートの両立を主軸に進む5人の物語を、これから楽しみに追っていきたい。
第1話ストーリー
病院スタッフの働き方改革を目指す柏桜会グループが『あさひ海浜病院』に夜間勤務専門の救命医チーム“ナイト・ドクター”を立ち上げることになった。医師の朝倉美月(波瑠)は新たな就職先にナイト・ドクターを選ぶ。ナイト・ドクターのスタート初日、スタッフステーションには美月のほかに、深澤新(岸優太)、成瀬暁人(田中圭)、桜庭瞬(北村匠海)、高岡幸保(岡崎紗絵)という5人の医師が集まる。美月を見た深澤は驚く。数日前、街で倒れたホームレスの診療に手間取った深澤に代わって、鮮やかに処置したのが美月だった。しかも、美月は深澤に「処置出来ないなら医者を名乗るな」と、言い放っていたのだ。
5人の指導医は本郷亭(沢村一樹)。本郷は自分の指導について来られる者だけついてこいと厳しい。そこに、ホットラインが鳴る。工事現場の崩落事故で3名の重症者が出たのだ。全員の受け入れを許可する本郷に美月はほっとする。
運び込まれた重症患者に、救命の現場を知らない深澤と桜庭は戸惑うばかり。本郷に応じるのは救命経験のある成瀬。美月と幸保は食らいついて行く。重傷者たちの処置を始めた矢先、崩落現場で新たな重症者が発見されたと連絡が。
すでに7件の病院に搬送を拒否されているという。使えない医師ばかりでは無理だと断ろうとする成瀬を本郷が制して受け入れを命令。本郷は先に運ばれた3名を早く安定させれば済む話だと無愛想に言い切る。しかし、新たに搬送された患者の足は重度の損傷を受けてクラッシュ症候群を起こしていた。本郷は美月に切断を指示するが…。
(文:北村有)
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