2021年07月23日

【映画VS原作】『君の膵臓をたべたい』それぞれ異なる感動ポイントとは?

【映画VS原作】『君の膵臓をたべたい』それぞれ異なる感動ポイントとは?



最大の違いとなった、映画独自の後日談(未来)



映画と原作で決定的に違うのは、映画には「僕」や桜良の親友・恭子が大人になったその後があること。大人になった「僕」を小栗旬、恭子を北川景子が演じている。

映画では12年後、母校の教師になった「僕」が、桜良と図書委員をやった図書館に再び足を踏み入れるところから物語が始まる。

原作では「共病文庫」の最後にあった桜良の遺書の下書きが、映画では12年後に図書館から見つかった遺書になっていた。原作がお好きな方はこの改変が嫌だと感じた方もいるようだが、個人的にはそれぞれどちらもいいなと感じた。

個人的に映画版のこの追加設定について、よかったと思うところが数点ある。

ひとつめは、12年後も「僕」にとっても恭子にとっても桜良の存在が変わらず大切なものだったとわかったこと。

ふたつめは個人的な話だが、筆者も若いときに大事な友達を病気で亡くしたので、12年越しに遺書が見つかるのは思いがけずまた会えたみたいで嬉しいだろうなと思った。

もうひとつは、原作の最後の最後に少し感じた違和感が解消されたこと。
原作で桜良の死から1年後「僕」と恭子は友人になっている。これは読み取り方の問題で、誰もがそう思ったわけではないし、むしろ少数派かもしれない。
個人的にその仲の良い会話が二人がこれからくっつくような、少々いちゃついているような空気を感じてしまった。実際続編小説の内容などを知るとそうではないようなのだが、二人とも桜良のことをあんなに大事に思ってたのに? みたいな白けた気持ちに少しなったのだ。

またこの未来が加わったことで、ガム君がより魅力的ないい役になっているところも良かった。高校時代の矢本悠馬も大人になった上地雄輔もいい味出しているので、これから観る方はぜひ注目してほしい。

浜辺美波の桜良がとにかく素晴らしかった



映画のもっともよかったところは、何といっても浜辺美波が桜良役を演じたことだと思う。

原作がある映画を観る場合、もともと原作を読んでいて映画を観るパターンと、映画を観てから原作を読むパターンがあると思う。だが『君の膵臓をたべたい』において、筆者の場合はこのどちらにも当てはまらなかった。

原作が話題になっているのは知っていたが、当時はそんなに読む気が起こらなかった。映画館で予告映像を観て映画化されることを知り、何度か予告を観るうちにどうにもその中の浜辺美波、特にこちらを振り向いたときの笑顔が気になってしまって、映画まで待ちきれず原作を買って読んでしまった。



当時は彼女の名前は知っていたものの特別ファンだったわけでもないし、完全にその動画だけの魅力に惹かれた。イレギュラーだが、この順番で観た(読んだ)からこそ実写映画も原作も楽しんで受け入れられた気がする。どちらか片方だったら、ここまで好きにならなかったかもしれない。

高校生でありながら、病気と闘い余命いくばくもない。内心葛藤がありながらも、「僕」やクラスメイトの前では笑顔だった桜良。自分が死ぬことをあっけらかんと話し、少々エキセントリックな行動に出て「僕」を振り回す女の子。やもするとわざとらしく、イタい感じになってしまいそうな桜良をこんなにも自然に、かつ魅力的に演じられたのは浜辺美波しかいなかったのではないかと思う。

また桜良の死後に「僕」が読む「共病文庫」のシーンでは、必然的に声のみの出演となるのだが、その声が本当に素晴らしかった。普段の弾けるような笑っているような桜良、一人で泣いたと書いてあるところは声が震えて泣き声になり、病気が悪化して元気がないときのか声のかすれ方……。そして、一時退して「僕」に会えるとなった時に楽しそうな声に戻るところ。

声優さんじゃないのに、声だけでこんなにも心情が伝わってくるのがすごいし、もういない桜良が愛おしくてたまらなくなる。愛おしいし悲しいし、大好きだ。

そして繰り返しになるが、あの笑顔。桜良の、楽しさとかいたずらっぽさとか愛おしさとか、いろんな感情ひっくるめてくしゃっと笑ってるようなあの笑顔には、この作品でしか出会えない気がする。

みなさんそれぞれ、いろんな俳優さんに対して「この人のこの役が忘れられない」という思い出があると思うが、私にとって浜辺美波の山内桜良役は、間違いなくそのひとつだ。

単なるお涙ちょうだいものだと思わず、一度観てほしい



私もはじめはお涙ちょうだい系だと思っていたけど、小説と映画のどちらも良かった。タイトルの奇抜さや取り上げられ方は一旦置いておいて、映画の予告だけでも観てみてほしい。

また小説か映画、どちらかしか知らないという方も、ぜひもう一方に触れてみてほしい。あらためて両方の魅力を感じられるのではないかと思う。

(文:ぐみ)

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(C)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会

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