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2021年08月28日

<IP~サイバー捜査班>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<IP~サイバー捜査班>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】


第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー



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京都府警サイバー総合事犯係に、失踪人捜索の依頼が入る。多和田昭平(間宮祥太朗)の親友で建設会社の御曹司・松永大輔(木村了)の新妻・知里(徳永えり)がこつ然と姿を消したのだ。結婚してわずか1週間後のことだった…。本来、人探しはサイバー総合事犯係の仕事ではないにもかかわらず、主任・安洛一誠(佐々木蔵之介)はなぜか、古宮山絆(福原遥)と多和田に捜査を命じる。

松永によると、知里はコンビニエンスストアに行くといって新居を出た直後、行方知れずになったという。だが、付近の防犯カメラに知里の姿は映っていないことが判明。携帯電話は電源が入っていないらしく、つながらないままだった。

また松永の話によると、2人は珍しい植物を紹介するコミュニティーサイトを通じて知り合ったことがわかる。1年前、知里から松永にメッセージが届いたのを機に、2人はSNS上でやりとりをスタート。半年前、初めて直接対面したところ、知里は髪型やファッションなどの外見から、好きな食べ物や趣味まですべてが理想どおりの女性だったため、松永は運命を感じ、結婚を申し込んだという。

安洛は、偶然や運命ではなく、知里が作為的に松永の理想を体現したのではないかと直感。結婚する前の知里にはもうひとつ別の顔があったのではないかと考え、ネット上で捜索を開始するが…!? やがて、2人が知り合ったコミュニティーサイトに“ある人物”が登録していることが発覚し…!? SNS等を通じて簡単に“他人になりすます”ことができてしまう恐怖に、サイバー総合事犯係が挑む!

第3話のレビュー



第3話のキーワードは、ネットを利用した“なりすまし”。結婚したばかりの松永夫妻の妻が突然姿を消してしまった事件に総事係が挑む。

この夫婦はSNSで親しくなり、実際会ったら妻の知里が何から何まで夫・大介の理想どおりだったという。いや、そんなわけないだろう…と、この時点で安洛の言葉通り「疑わしいところだらけ」な感じしかしない。大介は結婚詐欺などをとにかく一度疑うべきだったのでは…と思わずにいられなかった。案の定、総事係が知里のネット投稿などを調べてみると、1年前から彼女の人格に変化が見られ、大介と結婚したのは知里になりすました別人だとわかる。

なお、一連の捜査でなかなか興味深かったのが、係長の平塚が行った文書鑑定。SNSやメールに打ち込んだ文章を解析して句読点の頻度や漢字変換のクセからプロファイリングする、パソコンが普及した21世紀ならではの捜査である。筆者はライターとして毎日パソコンで文字を打ち込んでいて、自身の句読点の付け方をなんとなく把握できているだけに、「確かにこれで書いた人間を特定するのはありだよなあ…」とおおいに納得してしまった。

その後捜査を進めると、本物の知里は1年前に事故に遭って今も昏睡状態にあると判明。知里の状況を知る者が彼女の名を利用したのでは…と安洛がにらんで、絆と多和田が退職した病院関係者をチェック。知里になりすましたのは看護師の佐野千広だとわかる。千広は、夫のDV被害から逃れるため別人に生まれ変わろうとしたのだった。

千広をさらったのはDVをしていたその夫では…と心配する絆たち。しかし、そこで安洛の頭脳が動き出す。これまで掴んだ情報を整理しながら、彼は千広の居場所と連れ去った犯人をようやく確定させた。

千広が監禁されていた場所で絆と多和田が対面した事件の犯人。それは知里の恋人の弁護士・荻野だった。

愛する女性の戸籍を使って別の男と結婚した千広が許せず、彼女に婚姻無効の手続きをとらせようとした荻野。千広が手続きを拒んだため殺そうとするが、そんな彼を意外にも安洛が説得にかかった。

「想像しろ。君のしていることは君と同じ人間を増やすにすぎない」
「効率を考えよう。彼女を殺せば殺人罪で長期間社会から隔離される。この先いつか知里さんの意識が戻ったとき君が彼女の目の前にいるためにも、今すぐこんな愚かな行為はやめるべきだ」

安洛の言葉が響いたのか、結局荻野は殺人を犯す直前で踏みとどまった。

この3話では、安洛と絆の母の過去が少しだけ紐解かれた。やはりこの二人は付き合っていたようで、ただ絆の母は突然安洛の元から姿を消してしまったらしい。つまり、安洛もまた大事な人が突然いなくなる悲しみを過去に味わっていた。だからこそ、今回彼は妻の行方を案じる大介の気持ちを理解して捜査を行い、さらに、意識が戻らない恋人を待ち続ける荻野の悲しみをも察して踏み込んだのだろう。

安洛という男の中身をようやく少し理解できた気がした。彼は決して情がわからない人間ではない。ただ、何らかのきっかけで人の心に触れるのを避けるようになってしまったのだと思う。(おそらくそこに絆の母が絡んでいるに違いないが)

安洛のキャラクターとともにドラマの作風も少しずつわかってきた。確かにネット絡みの犯罪にパソコンを駆使して立ち向かう刑事たちの物語だが、印象としてサイバー捜査はあくまでも手段。毎回犯罪の奥に潜む人の思いにも焦点があてられていて、人間ドラマとしての魅力もしっかり兼ね備えた作品だと感じている。

サイバー捜査の面白さと事件解決に奔走する刑事たちのドラマ、この両方を今後も引き続き楽しんでいきたい。

※この記事は「IP~サイバー捜査班」の各話を1つにまとめたものです。

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