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2021年07月19日

<ひきこもり先生>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

<ひきこもり先生>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

第4話ストーリー&レビュー

第4話ストーリー


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「戦場」

同級生にいじめられて登校するのが辛くなった生徒に陽平(佐藤二朗)が言った「無理して学校に来なくていい」という言葉が波紋を呼び、学校を休む生徒が続出。いじめゼロ、不登校ゼロを方針に掲げる榊校長(高橋克典)は、教育委員会の聞き取り調査を受ける陽平に「この学校にはいじめがない」と証言するように迫る。生徒の将来のためと説得された陽平は、教育委員会にうそをついてしまい、それを苦に再び家にひきこもってしまう。

第4話レビュー



すさまじかった。再びひきこもりになってしまった佐藤二朗の芝居。物を投げ、戸棚を倒し、紙くずを口の中に入れ、何度も何度も咆哮する。自分への怒り、嫌悪、悲しみ、絶望が全身から伝わってくる。まるで『ゴジラVSコング』のゴジラのよう。

「ひきこもり先生」第4話のタイトルは「戦場」。11年のひきこもりを経て非常勤の教師になった上嶋陽平(佐藤)にとって学校は、ありったけの覚悟を決めて赴く「戦場」だった。同時に、子どもたちにとっても学校は「戦場」である。やらなければやられる陰惨ないじめ、暴力、不安定な人間関係、大人たちの無関心、横暴、忖度と圧力。

繊細な感受性と優しい心の持つ人にとって、学校は戦場だ。こんな場所を平気で生き抜いていけるのは、心のどこかを意図的に殺している人なのかもしれない。 第4話では、校長の榊(高橋克典)のモンスターぶりが際立っていた。「いじめゼロ、不登校ゼロ」という目標は、すべて「教育長になる」という己の野心のため。子どもの気持ちを無視し、周囲の大人にはあからさまな忖度を要求する。

「苦しいときは学校なんか来なくていい!」と叫んだ陽平の言葉の救われた生徒たちが何人もいたが、榊はそれを問題視する。彼にとって大事なのは表向きの数字のみ。榊は陽平を呼び出して説得し、教育委員会の指導室長(室井滋)の前で「いじめはありません」と嘘を言わせることに成功する。

陽平が嘘をついたのは、学校や榊の都合のためでなく、それが子どもたちのためだと思ったからだった。だが、榊は徹頭徹尾、自分の保身と出世のために嘘をつかせようとしていた。かつて榊は「学校は社会の縮図」と言っていたが、こんな人間がトップにいる社会なら腐るのも当然だし、「気持ち悪い」と思われるのも当たり前である。

嘘をついてしまった陽平は自己嫌悪に陥り、一人娘のゆい(喜多川ゆい)との再会もうまくいかず、体調に異変を来たして部屋にひきこもってしまう。

佐藤二朗と同様に、すさまじい芝居を見せていたのが、ひきこもり仲間の依田浩二を演じる玉置玲央だった。コンビニ店員(フォンチー)に恋心を抱いた依田は、社会に出ることを決意するが、その場で倒れてしまう。依田はすい臓を蝕まれていた。余命は半年。彼はひきこもってしまった陽平の部屋を訪れて自分の病状を告げ、これまで認めてこなかった陽平のことを讃える。

「上嶋氏、すごいよ。本当に。……ひきこもりが先生なんてさぁ! 上嶋氏、時間があるじゃない」

真っ黒だった依田が透きとおって見えたし、それを受ける陽平の慟哭はまるで親を亡くしたゴリラのようだった。どっちもすごい演技だった。

これまで無力感に苛まれてばかりいた新人教師の深野祥子(佐久間由衣)が一念発起してSTEPルームの子どもたちに大人たちの欺瞞と陽平の真意を伝え、それが子どもたちによる陽平の励ましを生むクライマックスは、少々現実離れしているようにも見えたが、やっぱり胸が熱くなったよ。

依田と子どもたちの励ましを受け、再び陽平は戦場へと向かう。大仰に迎える榊に対する言葉は、彼なりに覚悟を決めた宣戦布告のようでもあった。

「無理をします。しなくちゃいけないんです。僕はもう、逃げません。僕は子どもたちのために戻ってきます。学校を、子どもたちが安心していられる場所にしたいんです」

次回のタイトルは「できる、できる、できる」。陽平は学校をどう変えていくのだろうか。

※この記事は「ひきこもり先生」の各話を1つにまとめたものです。

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(C)NHK

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