2021年08月13日

【映画VS原作】『キネマの神様』映画評論と映画制作、2つの異なる物語

【映画VS原作】『キネマの神様』映画評論と映画制作、2つの異なる物語

3:時代を反映させた内容



2008年に出版された小説版では、インターネット社会における映画レビューの影響力という点で、当時の現代的な視点を盛り込んでいたと思われる。

一方、映画版では、コロナ禍に製作されたという事実が大きな影響を与えている。

2020年の春に撮影を開始した本作では、約1か月後にコロナ禍によって撮影が中断。
さらに、当初、主演を予定されていた俳優・志村けんさんが急逝されるという前代未聞の危機が製作陣を襲った。

これに際し、山田洋次監督は後半の現代パートの脚本を大幅に変更。
本編を観ると分かる通り、本作は大作日本映画としては珍しく「コロナ禍」の世界を反映した物語になっているのだ。

経営危機に見舞われたミニシアターの存在、一座席空けの劇場、マスク姿で入院せざるを得なくなったゴウ。

これらの要素は製作時期に起きた実際の出来事と深く重なっており、現代の社会を記録した貴重な作品となっているのだ。

終わりに



現在公開中の映画『キネマの神様』では映画愛や家族愛が呼び起こす奇跡の逆転劇に高評価が集まる一方で、古き良き時代を感じさせる恋愛要素や主人公・ゴウの描写などに批判的な意見も存在している。

しかし、ハマった方もハマらなかった方にも、小説版「キネマの神様」はオススメしたい作品だ。

全く異なる物語として完成された本作を読んでみると、映画の見えかたも大きく変わり、『キネマの神様』を、より深く楽しめるはず。

原作を読んだ後の山田洋次監督が原田マハに「自分なら、こんなエンディングを作りたい」と(まるで映画版のゴウが監督作の構想を語るように)熱烈なアプローチを送ったことからも、その面白さはお墨付きだろう。

ちなみに、映画版の公開に合わせ、原作者・原田マハは「キネマの神様 ディレクターズカット」も発売している

映画版の物語はそのままに、心情表現や古典映画へのリスペクト、コロナ禍の様子などが追加されたノベライズ版は、映画の鑑賞後、ぜひ、読み比べていただきたい一冊である。

(文:大矢哲紀)

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(C)2021「キネマの神様」製作委員会

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