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2021年11月06日

〈新作紹介〉『信虎』:金子修介監督の時代劇大作!『影武者』や平成ガメラなど多くの映画的記憶を主演・寺田農が奮い起させる!

〈新作紹介〉『信虎』:金子修介監督の時代劇大作!『影武者』や平成ガメラなど多くの映画的記憶を主演・寺田農が奮い起させる!


昭和・平成・令和と駆け抜ける
名優・寺田農ならではの貫禄!

ちょっと遠回りしてしまいましたが、いよいよ本作の主演男優についてお話ししましょう。

今回、武田信虎を演じるのは寺田農!



『肉弾』(68)などの岡本喜八や『帝都物語』(88)などの実相寺昭雄、『セーラー服と機関銃』(81)などの相米慎二といったツワモノ監督作品の常連俳優であるとともに、規模の大小を問わず現在まで旺盛に映画やドラマ出演を続けている名優です。

今話題のドラマ「日本沈没-希望の-ひと」の小松左京・原作を筒井康隆がパロディにした同名ナンセンス小説の映画化『日本以外全部沈没』(06)では田所博士を演じていました!

そう、彼もまた特撮ものに欠かせない存在であり、最近では「仮面ライダーW」(09~10)の悪役も印象的でしたね。

そんな寺田農ですが、実は映画に主演するのは相米慎二監督が唯一手掛けた日活(当時はにっかつ)ロマンポルノ作品『ラブホテル』(85)以来のことで、とかく若い美男美女を主役に据えた企画しか通らない今の日本映画界の中で、これは画期的であるとともに、昭和から平成、令和と演じ続けてきた彼ならではの誇りと貫禄、そして老境に入って久しい主人公の狡猾ないかがわしさまで忍ばせる名演なのでした。

この作品、実は会議のシーンが結構多く、また今回はプロデューサーのこだわりで当時の固有名詞などを意図的に用いた脚本が構築されていて、時代劇に慣れてない人は何を言ってるのかわからなくなるのではないかと懸念してしまうほど(そのため劇中はテロップで原語解説がかなり挿入されますが、正直これは逆に煩わしいかな)。

しかし、これでは映画の体を成せないのでは?といったこちらの不安は、寺田農の見事な貫禄と明晰な口跡によってことごとくクリアされていきます。

もともと彼はドキュメント番組のナレーターとしても大ベテランで、また『天空の城ラピュタ』(86)の悪役ムスカといえば、相当数の方々が「おおっ」と思われることでしょう。



本作はそんな寺田農ならではの威厳と説得力に満ちた台詞回しの数々で、並の俳優だとだれてしまいがちなシーンを見事に引き締めるとともに、権力抗争ドラマとしての資質を大きく際立たせていきます。

金子修介監督も、ここではいわば『仁義なき戦い』(73)会議版とでもいったエネルギッシュな演出を施すことで、一種異様なまでの迫力がみなぎる名場面となりました。

またこの信虎さま、何と超能力を使います!?

というか、実際は催眠術みたいなものなのでしょう。

彼はこの秘術を駆使して周囲の者らを従わせていくのですが、そのいかがわしい雰囲気が実に素晴らしい!

そう、本当にこの主人公、いかがわしくて狡猾で、「そりゃあ、息子から追放もされるわな」と納得できてしまうほどのクセモノなのですが(まあ、親子の骨肉の争いのドラマってよくありますけど、ここでは何と爺と孫が紛糾しまくる!?)、寺田農はそんな信虎を活き活きと演じきることで、どこかしら不可思議な人間的魅力を醸し出しているのでした。

だからこそ、信虎の周りには出来た家来がたくさんいるのですが、やはりどこか信虎のツメが甘いのでしょうか、割かしどんどん死んでいったりします。

(そもそも今回のお話は、信虎自身が武田家に再び必要とされていると勘違いしてしまったことから始まる悲劇でもあるのでした……)

しかしそのとき、信虎が彼らに投げかけるのは「大義!」の一言!?

まさにこれこそが戦国時代ならではの過酷さであり、非情さであり、それを見事に体現しているのが寺田農なのでした。

しかし一方では、そんな戦国時代の機運に唯一逆らい続ける存在がいます。

谷村美月扮する信虎の末娘・お直です。



彼女は当時の風潮をいわば現代的な目線で批判し続ける存在としても屹立しており、まさに金子監督の意思を体現するキャラクターともいえるでしょう。

何よりも、女優を美しく捉えることにかけて右に出る者のない金子監督なので、ここでのわがまま言い放題(!?)のお直も次第に可愛らしく映えまくっていくとともに、権力のために殺し合う世界に対するアンチテーゼとして見事な存在感を発揮しています。

ちなみにスタッフの撮影・上野彰吾と照明・赤津淳一は日活撮影所時代からの金子監督の同胞であり、また両者は『天と地と』の現場にも就いていたという、やはりいろいろな意味でこの作品、武田信玄とどこかしら関わりのある人材で構成されているのでした。

実は金子監督も、川中島の合戦で暗躍したくノ一を主人公にした池波正太郎の時代小説「蝶の戦記」映画化を目論むも、果せなかったという痛恨のキャリアがあったのでした。

今からでもこの企画、再始動できないものか!

そのためにも、従来の日本映画の常識を打ち破る『信虎』の大ヒットを今は祈ってやみません。

(文:増當竜也)

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